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米国企業のための戦争
H16/05/07
邦人人質事件、スペイン軍の撤退と、イラクの治安悪化の影響が急速に広まってきた。アメリカではイラク戦争を一九六〇年代に泥沼化したベトナム戦争になぞらえる声も出ているが、日本にとっては、イラク戦争は自衛隊を派遣して武器やイラク人を殺害する米兵を日本が輸送しているなど米軍支援を行っているという、ベトナム戦争とは大きな違いがある。一九四五年、アメリカから二発の原爆を受けて終わった戦争の後で作った「日本国民は武力による威嚇または武力の行使は永久に放棄する」という平和憲法を完全に無視して、日本は侵略戦争に加担したのである。
「覇権主義」の手先
政府自民党にとってはこれはすべて計画通りの筋書きであったのかもしれない。私は一九九八年一月に上梓した『アメリカは日本を世界の孤児にする』(ごま書房)という本で一九九七年九月に調印された「日米防衛協力のための指針の見直し」(日米ガイドライン)を分析し、日本はアメリカの覇権主義の手先にされるだろうと書いた。そして今回、それが現実になったのである。
イラクで三人の邦人を誘拐したグループの目的は身代金ではなく自衛隊のイラク撤退だった。それに対して日本政府は“テロ”に屈してはならないと即座に要求を拒否した。「われわれに付くか、それともテロリストの側に付くのか」。これは九月十一日の後の議会演説でのブッシュ大統領の言葉である。
ブッシュと同じ言葉を小泉首相は多用する。自衛隊イラク派遣を決定した時にも、テロに屈してはならない、国際社会と協力してテロ撲滅に当たらなければならない、と言って武装した自衛隊をイラクへ送った。反対する日本国民には『人道復興支援』の部分のみを強調して、日本に一度も攻撃を加えたり脅威を呈したことのない、そして日本と良い関係を築いていたイラクに武装した軍隊を送ったのである。侵略を「防衛」と正当化することは、帝国主義の侵略者が使う常とう手段である。アメリカがグレナダに軍事侵攻したときも在留米人の生命、財産の保護が錦の御旗だった。
問われぬ国家責任
戦争はいつも国防を口実に始められ、そして誰もその責任を負わない。太平洋戦争を思い出してほしい。日本は多くの非戦闘員の死者を出した。原爆によって一瞬のうちに二十一万人という人が死に、東京大空襲でも一晩で八万人が死んだ。しかし日本の政府は責任の所在を明らかにすることはなかった。東京裁判で一部の指導者は死刑に処せられたが、あれは連合国による一方的な裁判で、日本が国家として責任を問うたわけではない。そして生き残った指導者は知らん顔で首相になった者さえいたのである。
日米ガイドライン導入後、アメリカがアフガニスタンを攻撃し、日本は人道支援を提供するという言い訳でインド洋に護衛艦を出した。そして今回は復興支援としてイラクに自衛隊を送った。報道はすべて大本営発表のごとくなり、米軍に抵抗するイラク人はすべて過激派かテロリストと呼ばれた。
敗戦から六十年たち、日本政府に再び軍国主義の傾向が見られるようになったことに気づいているのは私だけではない。むしろ、その芽に気づいて利用したのがアメリカだったのかもしれない。自衛隊派遣にあたって小泉首相は戦争という言葉は避けるも、イラクが危険なところであることは認めていた。そしてイラクの安定は日本にとっても大切だから、テロに屈してはならない、だからテロ撲滅のために自衛隊を派遣すると言ったのだ。しかし自分の国の侵略者(米軍)に抵抗することを「過激派」「テロリスト」呼ばわりされるイラク人の気持ちを、小泉首相や川口外務大臣、その他日本政府高官はなぜ分からないのか。
資本家が引き起こす
戦争は決して一部の軍人の闘争本能から起きるものではない。むしろ、金銭欲や物欲にとらわれた資本家が経済的な理由から引き起こすものである。ブッシュ大統領はイラクに米軍を増派する方針を示し、一方で、六月末にはイラク人への主権の移譲を延期せず予定通り実施する考えを強調した。その上で必要な限り、米軍はイラクでの駐留を続けるという。
ブッシュが主権移譲を重要だとする理由は、アメリカ企業の将来がかかっているからである。公共事業や石油生産などでアメリカ企業はイラクに数十億ドルを費やしている。そして国際契約法によって、六月三十日までにそれらの契約を「主権国家」と交わさなければ、これまでの投資は回収できなくなってしまうのである。だからそれまでになんとしてでもイラクに傀儡(かいらい)政権を立てなければならない。そしてその後もアメリカ企業のために、イラクに米軍を駐留させ続ける必要があるのだ。結局、イラク攻撃を始めた理由の一つは、大量破壊兵器でもサダム・フセインでもなく、ブッシュ政権を支援するアメリカ企業のためだったのであろう。(アシスト代表取締役)
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