現在地 HOME > 掲示板 > 戦争54 > 1054.html ★阿修羅♪ |
|
Tweet |
2004/05/09
日本の外交官2人が昨年11月イラクで殺害された事件についての真相解明が進まない。警察庁は先月、国会に捜査状況を中間報告し、マスコミは一斉に「米軍誤射説薄まる」と報じたが、政府のこれまでの捜査から「米軍誤射説」を否定する根拠は何も発見されてはいない。「米軍誤射説」の否定に躍起になる政府にマスコミが誘導されているに過ぎない。
襲撃された車の左側面(米軍から外務省に送られてきた写真のうちの1枚)
外交官殺害事件について小泉純一郎首相は「政府として全力を挙げて真相解明する」と約束し、小野清子国家公安委員長も今年1月を目途に捜査結果を発表する見通しを明らかにしてきたが、実際には政府の真相解明に取り組む姿勢は極めて消極的だった。現地捜査は米軍任せで、在イラク日本大使館の館員がはじめて現地を訪れたのが事件発生から3カ月後の2月29日。与野党の国会議員から責付かれて、米軍基地に放置しっ放しだった被弾車両をようやく日本に運び込んだのは3月4日だった。
襲撃された車の右側面(米軍から外務省に送られてきた写真のうちの1枚)
それから1カ月。警視庁公安部が中心になって、この被弾車両の検証作業にあたり、その結果を警察庁瀬川勝久警備局長が4月5日の参院「イラク人道復興支援活動等及び武力攻撃事態等への対処に関する特別委員会」に報告した。3日後の4月8日には日本人3人の人質事件が発生したこともあって、この報告の検証が忘れ去られた嫌いがあるが、参院での報告と同時にマスコミに配布された「イラクにおける外務省職員殺害事件の捜査状況について」(全文は次のページ)をよく読んでみると、かなり恣意的な報告であることは明らかだ。
襲撃された車の正面(米軍から外務省に送られてきた写真のうちの1枚)
この報告を要約すると、次の通りだ。
【弾痕】
・車両の前部と左側面に計36箇所(前部4、左側前部ドア部14、左側後部ドア部18)。
・このうち貫通して車内に到達したのは22箇所(左側前部ドア部9、左側後部ドア部13)。
・このうち車両の右側面にまで到達をしたのは7箇所。これらは車内の比較的高い位置(137.6〜179.3cm)にある。貫通して車外に射出したのはルーフパネル1箇所。
・車両後部、屋根部には弾痕はない。
【射入角】
・測定できたのは10箇所。
・最も低い(左側前ドア部ドアの高さ77.8cm)のは上から下へ4.8度。
・次に低い(左側前ドア部ドアの高さ100.9cm)のはほぼ水平(下から上へ0.1度)。
・これよりも高い位置にある8箇所は全て下から上へ向けて射入。
・以上から、被害車両はおおむね1mの高さから銃撃されたと推定される。
・ボンネットの弾痕を除く9箇所はほぼ真横〜左斜め前方から射入。
【銃弾片】
・車内から112点、2人の遺体から20点の金属片を発見。このうち49点は銃弾の一部と推定。そのうち10点は右回転4条の腔旋がある口径7.62cm程度の銃から発射されたと推定される。
・発射痕の分析からは、銃が異なるか、同一かは判然としない。
・金属片の成分は銅、亜鉛、鉛、アンチモン。成分にばらつきがみられた。
・これら鑑定結果から、銃器の種類、数、銃弾の種類は特定できていない。
【司法解剖】
・奥大使 死因は左側頭部射創による頭蓋内損傷。
・井ノ上書記官 死因は左上腕動脈銃創による失血死。
【遺留品】
外務省を通じて入手した遺留品の分析は継続捜査中。
この報告のポイントは入射角にある。つまり、「最も低いのは上から下へ4.8度。次に低いのはほぼ水平。これよりも高い位置にある8箇所は全て下から上へ向けて射入している」ことから「被害車両はおおむね1mの高さから銃撃された」と推定していることだ。
ここから捜査当局が言いたいことは、「米軍の標準的な軽装甲車では銃座を構えると高さ2mを超え、上から下に向けて打ち込むことになるから、米軍誤射の可能性は低い」ということなのだ。国会報告には、そのような文言はなかったが、マスコミには、そのことを説明している。
しかも、「右回転4条の腔旋がある口径7.62cmの銃」とは、現地ゲリラが使っている旧ソ連製自動小銃「カラシニコフ」と一致することを説明したから、マスコミは一斉に「米軍誤射説薄まる」と報じることになった。
だが、残念ながら、この捜査報告では「米軍誤射説」を否定する論拠にはならない。もはや説明を要しないほど簡単なことだが、捜査当局が入射角を測定したのは36箇所のうちの10箇所に過ぎない。残りはガラスに当たっているのがほとんどで、入射角の測定はできないという。そんなことはないはずだ。銃弾が防弾ガラスに当たった場合にできる痕跡とひび割れの拡散方向によって推定はできる。
もっとおかしなことは、銃弾の入射角から「おおむね1mの高さから銃撃された」とする推定だ。これはあくまでも被弾車両が垂直の姿勢で走行していたという仮定に基づいていえることだが、被弾車両は銃撃車両の右側を走り、右の車輪を路肩に掛けながら、ついには路肩から道路脇に落ちて止まったことを考えれば、当然、右側に傾きながら走っていた可能性がある。となれば、銃弾の入射角から「1mの高さから銃撃」という推定は成り立たない。
「右回転4条の腔旋がある口径7.62cmの銃」についても、「カラシニコフ」ばかりではないことはよく知られている。同口径の銃は米国製の機関銃にもある。
4月5日の参院・イラク人道復興支援活動特別委員会での警察庁瀬川勝久警備局長の報告は口頭で行われたが、その報告がはじまった午後1時過ぎには、警視庁記者クラブに「イラクにおける外務省職員殺害事件の捜査状況について」の文書が配布され、委員会で繰り広げられるであろう「米軍誤射説」に機先を制するように、「米軍誤射説薄まる」の記事が発信されていた。
政府当局から過剰な発表サービスを受け、発表の内容に疑問を抱きながらも(抱かない記者もいるが)、政府当局の意のままの記事を書く典型的な記者クラブの弊害を表す事例といえるだろう。
この問題を追及してきた民主党の首藤信彦(衆院議員)や平野貞夫、若林秀樹(参院議員)らの各氏は「外交官射殺事件真相究明有志の会」を設立して、引き続き真相究明に取り組んでいるが、その後の国会での質問に対しても川口順子外相は「米軍の情報の基本は、何者かによって襲撃された、つまりテロリストの攻撃であるということ。米国政府もいわゆる誤射説については完全に否定している」と米国頼り、第3者による調査委員会の設置についても取り合おうとはしない。
同僚を殺されていながら、なんとも冷たいことだ。人質に取られた国民にも「自己責任論」を振り回した。これでは外務省無用論が起こる。
関連記事
参考サイト
国会会議録検索システム
若林ひできの緊急レポート「11.29イラクに消えゆく真実」
(高田士郎)
http://www.janjan.jp/government/0405/0405084122/1.php
イラクにおける外務省職員殺害事件の捜査状況について
イラクにおける外交官殺害事件について、被害者が乗車していた車両の検証、日本人外交官二人の司法解剖、採取された金属片、その他入手した証拠資料に関する捜査を行った結果概要は、次の通りである。
【車両検証結果】
第一に、被害車両である黒色トヨタ製ランドクルーザーの検証結果についてである。
まず、被弾状況についてである。
検証において、車両の前部及び左側面に、36箇所の弾痕が確認された。内訳は、前部に4箇所、左側前部ドア部に14箇所、左側後部ドア部に18箇所である。
このうち、貫通して車内に到達したものは、22箇所である。内訳は、左側前部ドア部に9箇所、左側後部ドア部に13箇所である。さらに、このうち車両の右側面にまで到達をしたものとして、7箇所の痕跡が確認されるが、これらは車内の比較的高い位置(137.6〜179.3cm)にあり、このうち貫通して車外に射出しているのは、ルーフパネルの1箇所である。
車両後部には弾痕等の損傷痕跡はなく、屋根部にも上方からの弾痕(射入口)はない。
【銃弾の射入状況】
第二に、銃弾の射入状況についてである。
36箇所の弾痕のうち、射入角の測定が可能であったものは10箇所であり、ガラスや補強材等の弾痕25箇所や貫通していないドアパネルの弾痕1箇所は測定不可能であった。
このうち、最も低い位置である弾痕射入口である左側前ドア部ドアパネル下部の高さ77.8cm(地上からの高さ)の弾痕については上方から下方に向けて4.8度で射入をしているが、次に低い位置である左側前ドア部ドアパネル前方の高さ100.9cmの弾痕はほぼ水平に(下方から上方に0.1度で)射入をしており、これよりも高い位置にある8箇所については、全て下方から上方へ向けて射入している。
以上のことから判断して、被害車両はおおむね1mの高さから銃撃されたと推定される。
また、左前方から射入しているボンネットの弾痕を除く9箇所については、ほぼ真横ないし左斜め前方から射入をしている。
【被害車両及びご遺体から採取された金属片の鑑定】
第三に、被害車両及びご遺体から採取された金属片の鑑定についてである。
車両の天井やドア等から発見された112点の金属片について、奥大使及び井ノ上書記官のご遺体から採取された金属片20とともに警視庁科学捜査研究所において鑑定した。その結果、明らかに銃弾の破片とは考えられないものが15点あるが、銃弾の一部と推定されるものは49点あり、うち10点については、右回転4条の腔旋を有する口径7.62cm程度の銃から発射されたものと推定される。
発射痕の特徴を分析しました結果、既に公表している同一の銃から発射されたと推定される3点(奥大使及び井ノ上書記官のご遺体からそれぞれ1点、大使館において車両内から発見をされた1点)と一致するものが新たに2点発見され(計5点)、また、奥大使のご遺体から採取されていた1点と同一の銃から発射されたと推定されるものが2点発見された。
なお、これらの結果は、それぞれの金属片に残された発射痕の一部を比較しているものであり、前者の5点と後者の3点が異なる銃から発射されたものか、同一の銃から発射されたものかは判然としない。
また、金属片の成分の分析からは、銅、亜鉛、鉛及びアンチモンが検出されている。一部について破壊して組成を鑑定したところ、銅と亜鉛で作られた被甲部分については若干の、鉛とアンチモンで作られた弾芯部分についてはかなりの、成分のばらつきがみられた。
具体的には、被甲部分については、奥大使から採取した試料は銅89.78%と亜鉛10.22%であったが、車両内から採取した試料は銅89.15%と亜鉛10.85%であった。また、弾芯部分につきましては、奥大使から採取した試料は鉛90.14%とアンチモン9.86%であったが、車両内から採取した試料は鉛98.30%とアンチモン1.70%であった。(編集部注:この段落にある4箇所の「試料」は原文は「資料」とあるが訂正した)
これら鑑定の結果から、犯行に使用された銃器の種類、数、また、銃弾の種類は特定に至っていない。
【司法解剖結果】
第四に、司法解剖結果についてである。
●奥大使
死因は、左側頭部射創による頭蓋内損傷と判断される。
奥大使には、左半身を中心に、銃撃によるものと思われる多数の銃創群が見られ、致命傷は、左側頭部から頭蓋内に入り脳実質内に達した2つの射創と判断される。
●井ノ上書記官
死因は、左上腕動脈銃創による失血死と判断される。
井ノ上書記官には、左上半身に約10個の主要な銃創等が認められ、致命傷は、左上腕外側上部後ろ寄りの銃創と判断をされる。
【遺留品等からの捜査】
第5に、遺留品等からの捜査についてである。
外務省を通じ、遺留品等を入手し、その分析を行ってきたが、現在も継続捜査中である。
これまでの捜査により判明した状況は以上のとおりである。
今後とも、外務省を通じて、現地当局の情報、資料の入手等、引き続き事件の真相解明に向けて努めてまいりたい。
(高田士郎)
http://www.janjan.jp/government/0405/0405084122/2.php?PHPSESSID=2814a20afa4a9024170e3ab3bb315591
私は、二年前、十二月にイラクへ行って、その当時、また戦争になるかもしれないということで、当時のナンバーツーと言われたラマダン副大統領にも会って、戦争を回避する道はないかということを話しました。
そのときヨルダンで私を出迎えてくれたのが、井ノ上さんという若い二等書記官でしたね。彼は何をやっていたかというと、彼が言うには、イージス艦をインド洋に送って以来の今のアラブ社会、中東社会における日本への疑惑の目と反発というのは物すごい勢いで広がっている、このヨルダンでももう危なくなってきていると。私は湾岸からずっと入っていったんですが、その湾岸でも、ドバイなんかで、地元紙の中には日本非難というのがたくさんあるので、驚いて、そういう話をしたんです。
井ノ上さんは、本当にそのことを気にかけておられて、イスラム圏、アラブ圏において日本に対してどれぐらい反発が高まっているかということを、ずっとデータや記事を集めておられました。そして、私にも送っていただいた。それが、その後も何度も会いましたけれども、井ノ上さんに対する私の思い出ですよ。その車の中で話した会話を思い出すと、私は本当に胸が熱くなる思いがするんです。
http://www.asyura2.com/0403/war54/msg/628.html