http://www.yomiuri.co.jp/world/news/20040428id23.htm

　【ニューヨーク＝勝田誠】国連のブラヒミ事務総長特別顧問が２７日、イラク暫定政権樹立に向けた構想を示し、国連安全保障理事会の支持を取りつけた。

　治安悪化の一途をたどるイラク情勢の打開には「実現性、信頼性を兼ね備えた政治プロセスを探る以外に選択肢はない」とするブラヒミ氏の構想を、米英が受け入れた結果だ。ただ、治安情勢やイラク諸勢力の主導権争いなど難問が山積で、国連主導の暫定政権づくりは、綱渡りのような困難な仕事となりそうだ。

　ブラヒミ構想は、暫定政権を「短命」な実務型政府と性格づけ、その権限を極力制限。イラク多数派イスラム教シーア派の最高権威アリ・シスタニ師が、新政権の正当性を確立する唯一の方法と主張する「選挙」の実施を最大の眼目としている。

　ブラヒミ氏は、連合国暫定当局（ＣＰＡ）とイラク統治評議会が３月上旬、国連の反対を押し切って「基本法」制定に踏み切ったことが失敗だったと見ている。基本法は、連邦制採用をうたうなど、来年１月までの直接選挙後の政治形態に踏み込んで規定した。これが、シスタニ師などイスラム教シーア派指導者の反発を呼んだ。

　また、米国が、最近まで主権移譲の受け皿となる暫定政権について、米国寄りと見られる人物が多い統治評議会をあくまで軸とする意向を持ち続けたことも、不評をかった。

　国連外交筋によると、国連は米国に対して、基本法の廃止を許容するように働きかけた。これを受けて、ホワイトハウス（大統領府）関係者が国連に「基本法は無視して構わない」と連絡してきたが、その直後に、別の政権幹部が正反対の見解を示すなど、米政権内には足並みの乱れが見られた。

　ブラヒミ氏はすでに、暫定政権づくりにあたって、シーア派、スンニ派、クルドなど主要勢力を取り込むためには、統治評議会メンバーであるチャラビ氏など一部の親米派亡命イラク人の切り捨ては不可欠と判断している。

　外交筋によると、ブラヒミ氏は、暫定政権内のトップとなる首相に、統治評議会メンバーで行政能力に定評があるスンニ派のパチャチ氏をあてる腹案を持つ。

　治安情勢の改善策について、ブラヒミ氏は安保理報告で「実現可能な政治プロセスと言っても万能薬などではない。治安回復につながる強力な誘因にすぎない」と述べた。これは、政治プロセスは即、治安改善につながるものではないが、国家再建が前進することで、安定を求める求心力が生まれ、治安回復につながるとの見解を示したものだ。

(2004/4/29/01:13　読売新聞　無断転載禁止)

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