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問われる「自己責任」、退避勧告に法的拘束力なく
イラクで武装グループに拘束されていた日本人3人が15日、無事解放された。しかし、新たに日本人2人が拉致されたとの情報もあって、政府や与野党には、危険地域への入国について、国民に「自己責任」を求めるべきだとの意見は少なくない。外務省がイラク全土を対象に退避勧告・渡航自粛を再三呼びかけても、これを無視して邦人がイラクに入れば、法的には阻止できないのが現状だ。今回の事件は、自己責任の原則を改めて確認する契機となった。
川口外相は15日夜の人質解放に関する緊急記者会見で、「イラクの治安情勢は予断を許さない。退避勧告を発してきた中で事件が発生したことは誠に遺憾だ」と述べ、退避勧告を無視してイラクに入った3人の行動にあえて遺憾の意を示した。
そのうえで、「イラクへの渡航はどのような目的であれ絶対に控えることを強く勧告する。『自らの安全は自ら責任を持つ』との自覚をもって行動を律してほしい」と強い口調でクギを刺した。
イラクに関して、外務省は昨年2月14日に、4段階ある「危険情報」のうち最も危険度の高い退避勧告をイラク全土に出した。その後もイラク戦争の前後に計3回、引き続き退避勧告する危険情報を出し、バグダッドの国連本部爆破や日本外交官殺害事件などイラク情勢が緊迫化するたびに、退避を呼びかける「スポット情報」を出してきた。
特に、今年に入ってからは、イラク各地で自爆テロなどが相次いでいることを踏まえ、3月19日に改めて危険情報を出した。イラク滞在中のすべての邦人に退避勧告し、「イラクへの渡航は、いかなる目的であれ、情勢が安定するまでの間延期して下さい」と呼びかける内容だ。
スポット情報も、今年に入って人質事件発生までの間に計12回、人質事件発生後も合わせれば計14回も出して、イラク国内が危険であることを指摘し、退避を促している。
今回解放された3人と、新たに拉致されたとされる2人はこの退避勧告を無視してイラク入りした。そして、その行動を止められなかった3人の家族は、人質救出を優先して自衛隊の撤退を政府に求めた。こうした行動や要求を疑問視する声が政府や与野党内に少なくない。
イラク入りに対して、自民党の島村宜伸・元農相は15日の亀井派総会で「遊泳禁止の立て札があるのに、そこで泳ぐようなものだ」と指摘した。公明党の神崎代表も14日の記者会見で、「安易な気持ちで民間人はイラクに入るべきではない」と強調していた。
民主党の菅代表は15日の記者会見で、「こういう時期にイラクに出かける、滞在することは、どういうリスクを負うのか、自覚して行動しなければならないというのはその通りだ」と述べた。
家族の要求については、平沼赳夫・前経済産業相は「自己完結型の自衛隊が行くのも危険だから行くなと言っている親が、未成年の自分の子供を止めることができないで、ああいう戦地に行かせてしまう。これはやっぱりおかしい」と批判している。「3人の自己責任を棚上げして、自衛隊派遣のせいで人質になったと、国に責任を押しつけるのは筋違いだ」(自民党幹部)という意見は少なくない。
今回問題となっている5人について、外務省はイラク入りを把握していなかった。危険情報を出しても、イラクの場合は、ヨルダンなど隣国から容易に入国でき、外務省が行動を把握することは困難で、邦人保護の対象にさえならない。
自民党内からは「渡航禁止といった法体系も検討しなければならないのではないか」(額賀政調会長)という声も上がっている。しかし、海外渡航の自由を禁じるのは憲法との関係で実現は難しいと見られている。自民党幹部は「政府には危険情報の周知徹底を、国民には自己責任の原則の徹底を求めることが必要だ」と指摘する。
(2004/4/16/00:37 読売新聞 無断転載禁止)
http://www.yomiuri.co.jp/main/news/20040415i215.htm