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天皇がチェイニーの前で自衛隊派遣の正当性を世界にアピールする図は屈辱的であり、人質にとっても危険
http://www.asyura2.com/0403/war52/msg/322.html
投稿者 ファントムランチ 日時 2004 年 4 月 14 日 00:55:44:oswAM6lqBSCW6
 

そもそも脅迫文の要求が「自衛隊撤退」であるにもかかわらず、川口外務大臣はビデオメッセージの中で、3人の人質は純粋な民間人でイラクのために救済活動に来たと説明したついでに、それと混同する表現で自衛隊派遣を正当化しようとした。そのことが人質を拘束しているグループを刺激し、解放に悪影響を及ぼしているという指摘もある(人質家族はメッセージの自衛隊に関する部分の削除を要請した)。

その後川口外相とほとんど同じ内容の発言をまさか天皇が、よりによって世界中から悪名高いイメージをもたれているチェイニーの面前で「のたまう」場面を見ることになるとは。これほど政治的色彩の濃い発言は現行憲法に抵触するものであるだけでなく、政治問題の中でも軍事行動に関して安全を願うていどのレベルを超え、その方針にまで踏み込んで擁護し、正当化している点で非常に際どいものだ。

天皇はチェイニーとの会見で人質事件について、米国の協力に謝意を伝えるとともに「大変心配しております。一刻も早く無事に解放されることを願っております」と語った。その一方で、「自衛隊は給水、学校の復旧、医療など地元の人々のための作業を通じて復興を支援するために派遣されたものであり、無事にイラクの人たちの幸せに貢献することを願っております」と述べたという。

天皇が自衛隊の活動方針に言及するのは極めて異例なことである。こうした問題から遠ざかっているからこそ、いざ事態が悪化した時に天皇は「責任」という問題から常に無垢の安全圏にいられるのである。そして今イラク情勢はますます悪化しつつある。今回の天皇とチェイニーの会見を演出するために「脚本」を描いたのは日本政府か、それともアメリカか。人質となった民間人を戦闘員と混同させ、さらにハリバートンの子会社社員である7人のアメリカ人も人質となっている中、チェイニーの面前でアメリカと日本の立場を同化させるような印象を与える主張を天皇は述べさせられている。

これは米国追従型軍拡のために天皇をも利用しようという動きであり、実質的に天皇が悪玉の帝王チェイニーの御前に引っぱり出され日本の忠誠を誓わされたというイメージを見るものに植え付ける屈辱的な図である。こうなると一連の各国人質事件の発生自体が、脅迫文とは別の目的をもったアメリカかまたは何者かによって仕組まれたような感じさえしてくる。単純にイスラム武装勢力の犯行だとしても、アメリカの横暴に「屈し」てそれにどこまでも付き従うことを約束させられた儀式として、チェイニーと天皇という組み合わせは、ブッシュと小泉のそれよりもよほど「象徴的」である。

アメリカの強大さは表面的なもので、中身は頽廃した「帝国末期」の様相を見せている。「国益」という言葉を連発し、イラク戦争で勝ち馬に乗ったつもりになっていた者たちは、いまこそアメリカの実情を冷静に見直し、その中で破滅に引きずり込もうとする勢力が、日本という国の政府や国民、経済界、軍隊、そして天皇にいたるまで、どの程度その魔の手を忍ばせてきているかについて警戒すべきである。イラク自衛隊派遣は初めから無謀な判断であった。チャンスさえあれば誤った情況判断で、無原則に軍事行動枠を拡げてゆこうするならば、それは似非の愛国者・保守主義者・抑止論者である。

イラクでの武装抵抗へのアメリカ軍の無差別殺戮を「テロとの戦い」と言い、人質交渉で「テロリストの要求に屈しない」などという無味乾燥な論に留まることなく、超大国から侵略を受け数十ヶ国の追従国に進駐された場合、侵略者を追い出すためにその国民が何を拠り所にし、どのような方法で闘うべきなのか、イラク側の立場からどのような戦略が立てられるのか、という観点から「国防」を考えてみることも逆に意義があるのではないか。その中から人質事件への対応を誤らないためのヒントも見えてくると思われる。

海外で邦人が人質となった場合の解決策は地元勢力との緊密な協力であり、外交力と平常時の交渉ルートの開拓に左右される。自衛隊の邦人救出部隊を現地に出動させることを憲法に明記してもあまり実効性がない。「テロリストとは交渉しない」と虚勢を張ることや、毅然たる表情でビデオメッセージを送ることもそれ自体では何も打開しない。アメリカ政府要人の発言をコピーしたようなセリフを繰り返すのはやめるべきであり、「自衛隊はイラク人のために復興支援をしているだけだ」という虚言も通用しないと悟るべきである。

また最近日本の戦後復興を「成功例」として今後のイラク復興のモデルになどという言説があるが、それは目先だけのアメリカのイラク懐柔策に詐欺的に寄与するだけであり、状況が全く違う日本の戦後経済発展を持ち出し、それを誇らしげにイラクに紹介して占領統治に希望をもたせようなどという欺瞞(そのようなテレビ番組の現地放映など)は慎むべきである。それよりも我々が自らを振り返るために、今のイラク情勢から学ぶことは多いはずだ。

 
参考

■天皇、皇后両陛下:チェイニー米副大統領夫妻と会見 [毎日]
http://www.mainichi-msn.co.jp/shakai/news/20040413k0000e040062000c.html

2004.04.13

 天皇、皇后両陛下は13日、皇居・宮殿でチェイニー米副大統領夫妻と会見した。宮内庁によると、天皇陛下はイラク日本人人質事件について、米国の協力に謝意を伝えるとともに「大変心配しております。一刻も早く無事に解放されることを願っております」と話した。

 会見は約30分間で、副大統領はイラク情勢について「なかなか難しい情勢になっていますが、日本側の果たされている役割を多としています」と発言した。天皇陛下は「自衛隊は給水、学校の復旧、医療など地元の人々のための作業を通じて復興を支援するために派遣されたものであり、無事にイラクの人たちの幸せに貢献することを願っております」と述べた。【竹中拓実】

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