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4月13日付社説
イラク――人質とファルージャと
3人の日本人がイラクで人質にとらわれてから5日が過ぎた。「24時間以内に解放する」という声明は空手形だった。情報は錯綜(さくそう)し、不安が再び募ってくる。
3人を恐怖から一分一秒でも早く解き放たせ、その知らせを家族に伝えたい。犯人たちに届けたいのは、多くの日本人のそうした祈りだ。
この3人だけではない。この数日の間に、ボランティア活動や復興事業に携わる民間の外国人が誘拐される事件が相次いでいる。無事に解放された人もいるが、犯人から何の要求もなしに行方不明になったままの人々もいる。
人質事件は、イスラム教スンニ派やシーア派の過激勢力と米軍の衝突が激化した先週来、多発し始めた。
かつてフセイン大統領の支持者が多かったファルージャでは、米軍の包囲攻撃で子どもや老人を含む600人が死亡し、多数が負傷した。
米民間人4人を惨殺した犯人の拘束が目的とされるが、犠牲者の数があまりに多い。非人道的な報復だと民衆が憤るのも無理はない。
日本人3人も、ファルージャ周辺で拘束されている可能性が高い。一連の人質事件には、掃討戦の実態に国際的な目を向けさせようとした狙いが込められているという推測も不自然でない。
ファルージャでの流血は、これまで反目してきたスンニ、シーア両派が反米で連帯する動きを促してもいる。そうなれば、占領軍はパレスチナと似たような民衆蜂起に直面することになろう。
米国が占領統治の頼りとする統治評議会の反発も強まっている。6月末の主権移譲も宙に浮く恐れがある。
泥沼化したベトナムや、内戦でテロと無秩序が続いたレバノンの再現につながりかねない瀬戸際に、イラクはある。
この現実を考慮せざるを得なくなったのだろう。統治評議会の仲介もあって、米軍は武装勢力との間で一時停戦に踏み切った。いま重要なことは、まず、この停戦を持続させることである。
人質解放への手掛かりをつかみかねている日本政府としても、停戦の継続と米軍の行動の自制を米政府に強く迫るべきである。それが事件解決への環境づくりになるはずだと考えたい。
小泉首相と会談したチェイニー米副大統領は、人質事件の解決への協力を表明した。首相は「米国の大義と善意を確信しており、だから支持してきた」と述べたというが、イラク情勢の悪化を防ぐことが人質解放につながることをきちんと伝えたのだろうか。
自衛隊の派遣を高く評価したチェイニー氏は「イラクの暴力は少数者の行動に過ぎない」とも語った。現状とかけ離れた認識だけに、会談が人質解放にどれほど役立つか心もとない思いがする。
人質の解放交渉には、イラクの人々に占領がどう映っているかという視点を持つことが欠かせない。
http://www.asahi.com/paper/editorial20040413.html