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「日本人の敵はテロリストだ」論が一気に日本を覆ってしまう事態を懸念します
ご存知の通りこの数ヶ月で、スペインでは、「これでもか、これでもか」と、「テロリスト」に対する恐怖感や怒りを盛り上げようとする奇妙な現象が続いています。
スペイン人は昔からＥＴＡのテロを経験し続けてきました。この数年間のバルセロナ付近だけでも、3つの大きな爆破事件、2つの発砲・射殺事件が起こっており4名が命を落としています。またマドリッドやバスクでは爆破、射殺事件のほかに人質が無残に殺される事件も起こっています。ある意味で「テロ慣れ」している面があり、自分たちの生命と生活を奪う「テロリズム」に対して恐れと怒りを感じながらも、どこかしら覚めた面を持っています。
特に去年の暮れから始まり３．１１を経て総選挙にかけて起こった一連の奇妙な事態は彼らの胸には深く刻み込まれたはずで、「テロ反対」を叫ぶ国民の意識と「反テロの戦い」を叫ぶ為政者の思惑には、これは直感的なものですが、なにか微妙なズレがあるように感じます。もちろん「テロを出汁にして誰かが俺たちを操ろうとしている」というようなはっきりした自覚までは無いでしょうが、「はい、はい」と従いながら主人にじっと疑い深い目を注ぐ下僕のような、そんな目を多くのスペイン人たちは持っています。
特にカタルーニャ、バスク、アンダルシア、カナリアといった少数民族や地方では、その傾向が強いように思われます。今回の選挙の前に散々に出汁に使われたカタルーニャは、たとえ政権が変わっても、中央の言うことには必ず眉につばをつけてしか聞かないでしょう。昔からそうなのですが。
今回のイラクでの日本人青年3名の拘束には、胸をかきむしられるような怒りと悲しみを感じます。非常に残念な事ながら、おそらく先日マドリッドでばらばらの遺体になって亡くなった大勢の人々と同様に、「テロ」への恐怖によって世界を操ろうとする者達の餌食になる可能性が高いと思われます。
彼らを拘束している集団が今まで聴いたことも無いような連中であり、その背後に、日本人を「一つの塊」として力ずくで「反テロ戦争」の真っ只中に引きずり込もうという意図を持った者たちがいることは容易に想像できます。それがスペインから始まって恐らく他のヨーロッパ諸国を巻き込んで強引に「反テロ戦争」に掻き立てようとしている動きと、何かのつながりを持っている可能性もあるでしょう。
「アメリカ人なら2千数百人、スペイン人なら200人、日本人をガタガタ動かしたければ、まあ3人も殺せば十分か」と、本物のテロリストが計算しているとすれば、3人の死（以前に殺された2名も含めれば5人ですが）は全くの生贄になってしまいます。
そしてそうなったときに、日本で「自衛隊がイラクに行ったからこうなったのだ」「即時撤退せよ」というような声が、果たして多数派になり政権を動かすでしょうか。逆に、ショックによる集団ヒステリー状態の中で、「これではっきり分かっただろう。日本人の敵はテロリストだ」「首相を責めるよりもテロリストを憎むべきだ」「テロに負けない力と意志を持つべきだ」というような声が、先ほどの声を掻き消してしまうほど大きくなる事態を、私は非常に恐れます。すでに各マスコミがその扇動を開始しているように見受けます。
日本人はこのような「テロ」には慣れていませんし、3名の志の高い青年たちが無残に殺される様を見せ付けられて、覚めた目を完全に失ってしまい、マスコミの激しい論調に煽り立てられて一気に「日本人の敵はテロリストだ」論が、前後の脈絡無く国中を覆ってしまいかねない、と危惧します。
そんなときに「自衛隊がイラクに行ったからテロに遭ったのだ。」というような論調では１００％勝ち目が無いでしょう。「日本の敵＝テロ」論から一気に憲法「改正」、イスラエル＝アメリカの別同部隊としての日本軍創出につながりかねません。誰が本物のテロリストなのか、誰がテロをあおって誰が得をしているのか、誰がそれを隠し国民をだましているのか、つまり「だましている奴は誰だ！」という声を大きくしていかないと、本当に取り返しのつかない事態に突っ込んでいってしまいそうな予感がします。
願わくはこれが私の思い過ごしでありますように。
だましている奴は誰だ！
題名には必ず「阿修羅さんへ」と記述してください。