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故奥大使にまつわる謎 「米軍誤射説」の可能性はほとんどない 在米ジャーナリスト 堀田佳男
http://www.asyura2.com/0403/war49/msg/1297.html
投稿者 TORA 日時 2004 年 3 月 26 日 17:55:32:CP1Vgnax47n1s
 

故奥大使にまつわる謎

 それはなかなか見事な「ショー」だった。

 19日午前11時にはじまる舞台の主役はジョージ・ブッシュ。「ショー」開催の連絡が入ったのは3日前である。11時開演にあわせて10時にはホワイトハウス北西門に来るよう指示された。

「ショー」はホワイトハウスのイーストルームという大きなシャンデリアが3つ下がったレセプションルームで行われた。その部屋は日本の首相が訪米したときに、大統領と共同記者会見をする場でもある。顔見知りの某テレビ局ワシントン支局長と共に部屋に入ったときは、すでに満員御礼状態だった。

 先に入室していたのは連邦議員、ペンタゴンの制服組、国防長官ラムズフェルドや補佐官コンドリーザ・ライスといった政権の役職者、そして83カ国の大使館関係者であった。駐米大使の加藤の顔も見える。記者たちはそのうしろの隙間にできた立ち見席でクビを伸ばすだけである。それでも、この部屋にくるといつもアルコールが入ったときのような昂揚を覚える。

 私の腕時計が10時59分をさしたとき「あと2分ではじまります」というアナウンスが流れた。全員、話をやめて主役が花道に現れるのを待つ。ブッシュはいくぶんか険しい表情でローラ夫人とともにスッと現れて、低いステージにあがった。背後には各国の国旗が並べられている。「ショー」の始まりだった。

「いま私ども84カ国(実際は83カ国)は共通の危機に直面しています。そしてテロという脅威を十分に理解して団結し、それを打ち負かそうとしています」

 大統領はイラク戦争開始1周年を迎え、あらためてテロにはひるまない決意をしめした。実際にイラクへ制服組を派遣しているのは84カ国よりもはるかに少ないが、ブッシュは多くの国から一国主義という名で批判されている外交政策を払拭する意味で、2倍以上の国に声をかけた。そして「We are the nations…(わたしたち国家)」という多国籍でテロ対策を進めているという点に力をいれた。民主党ケリーの批判をかわす意味もある。

 それは見事に計算されたスピーチであった。段取りも申し分ない。テレビカメラを意識して一方的に話をして再び花道にスッと消えるスタイルは、まさに「ショー」である。終わっても、その場では来賓とまったく話をせず、まして記者の質問を受けることもない。ブッシュだけでなく歴代大統領のイーストルームの「ショー」で記者が立ち見席に押し込められた時は、質問はできない。首相官邸もこのスタイルを真似るといい。映像の効果をトコトン利用した会見である。

 CNNを始めとしたニュース専門ケーブル局はこうした政権の意図がわかっていながら、ここぞとばかりに嬉々としてライブ「ショー」を流す。この点で彼らはホワイトハウスのおかかえニュースステーションになり下がっている。残念だったのは翌日のワシントンポストである。一面トップでこのスピーチを記事にした。この「ショー」にニュース性はほとんどない。新しい内容を口にしたわけではないからだ。ただ、ニューヨークタイムズが7面で、「ブッシュ大統領はイラク攻撃の理由については以前から使っている自己正当化の論理を展開しただけ」とまっとうなことを書いた。

 スピーチの後半、ブッシュはある日本人の名前を口にした。11月下旬、イラクで逝去した参事官の奥である。もちろんホワイトハウスは奥と井ノ上が殺害された事件を知る。だが、アメリカ人だけでなく諸外国からも犠牲者がでているなかで、なぜ奥の名前だけをだしたのか疑問だった。

 その疑問は2週間ほど前、ある週刊誌の記者2人がワシントンにやってきたことにも関係していた。彼らは2人の外交官の殺害についての新しい情報を、アメリカで追うために渡米していた。日本の民主党内で囁かれた「米軍誤射説」もそのひとつだった。わたしは最初からその可能性はほとんどないと言った。彼らも取材すればするほど「まずありえない」方向で収束したが、ペンタゴンは外交官殺害事件についての調査報告書を作成し、極秘扱いで保持しているという。

 そんな時、NHKスペシャルが奥にカメラを向けた。番組ビデオを入手して観ると、奥は「イラクに着いてすぐ、この戦争が石油のためであることがわかった」と発言していた。同時に、亡くなる前に奥が何者かに狙われていた可能性があるとも伝えている。今、それ以上のことはわからないが、何かありそうな気がしてならない。

 ブッシュの「ショー」の同日午後、ホワイトハウスの広報官に電話で訊いた。

「スピーチの後半で奥参事官について触れているが、あえて彼の名前を出した理由はなんですか」

「ミスター・オク?覚えていないなあ。特別な理由はないと思う」

 解せなかった。後日、ワシントンの日本大使館に問い合わせると、「こちらが調整したわけではない」という返事である。

 奥はテロリストの無差別の凶弾で倒れたのか、それとも目的を持った何者かに狙われたのか、またホワイトハウスはその殺害について何かを知っているのか、いまの段階では何もわからず、ただ憤懣に似たものが心中を駆け巡るだけである。
(文中敬称略)

http://www.yoshiohotta.com/

◆(私のコメント)
「ペンタゴンは外交官殺害事件についての調査報告書を作成し、極秘扱いで保持しているという。」と言う指摘があるということは、やはり奥、井上両大使の殺害事件に米軍が絡んでいる事の証明である。ワシントンの高官を取材してみたところで正直に答えるわけがない。

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