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特報:国民年金の未加入 小泉流“逃げ方”研究
http://www.tokyo-np.co.jp/00/tokuho/20040518/mng_____tokuho__000.shtml
「(政治的責任?)まったくないね」。自らの国民年金未加入が発覚した時の小泉首相の一言だ。国民への説明責任を問われても、国のトップは、首をかしげながら、まるで人ごとのようだ。こうした中、十七日には、民主党の新代表に決まっていた小沢氏の未加入問題も発覚した。国民のうんざり感を見透かしたような、上手な発表時期も含め、今回のやり口から小泉流を学んでみると−。
■すり替え
首相の年金保険料支払い発言をたどると、お得意の「すり替え」は健在だ。「過去はちゃんと払っております」(四月九日の衆院厚生労働委員会)、「うん、ちゃんと払っていましたよ」(同二十八日、記者団に)と繰り返し、五月七日の同委員会では、厚相時代の支払いについてだが、「調べましたところ、きちんと払っています」「調べないでみだりにお答えすることはありません」ときっぱり。さらに十日、国会議員以前についても「ありません」と明確に答えている。
ところが、十四日発覚した未加入問題で、これまでの発言を記者団に突かれると、「まったくそんなこと調べていませんしね。学生時代のことまで覚えていませんよねえ。四十年前ですよ。問題にするほうがおかしいんじゃないですか」。
こうした説明で国民が納得するかと聞かれると、「国民はやっぱり複雑な制度だと思っているでしょうね。これを改善していくのが大事ですよね。納得はできるとは思わないですけどね」と、淡々と“自身”の問題を“制度”の問題に巧みにすり替えてみせた。
タイミングも重要だ。年金未加入発表と、民主党党首就任を受諾した小沢氏の会見、北朝鮮再訪問が重なったが、ジャーナリスト大谷昭宏氏はこう推測する。
■タイミング
「実は、首相の年金問題は十一日あたりから『週刊誌が書くらしい』とささやかれていた。十四日朝には実際に記事の早刷りが国会周辺に出回った。警察でも不祥事の発表と、大きな事件の強制捜査をぶつけるなど、マスコミの目をそらす手法を取る。権力が目くらましによく使う手だ」
しかし、大谷氏は「今回は策士、策におぼれると言ってもいい状況」と分析する。「結果的に、再訪朝は早めにリークされ、夕刊一面は再訪朝記事で埋められたが、翌朝刊は、年金問題が大きく取り上げられた。ストライクを狙ったがコーナーを外したってとこでしょう」と見る。その上で、「二十二日の再訪朝で、しばらくニュースは拉致問題一色になり、年金問題は尻すぼみになるだろうが、メディアや国民は、この政権の姑息(こそく)さ、狡猾(こうかつ)さを忘れてはならない」と警鐘を鳴らす。
■人任せ
発表も丸投げ首相らしく「人任せ」だった。小泉首相の年金問題を官邸で発表したのは、懐刀の飯島秘書官。記者団から「首相が会見するのが筋では」と聞かれ「会見に至る話ではない」と答えたが、「これは前代未聞の話」と政治評論家の森田実氏は指摘する。
「かつて竹下登元首相がリクルート事件での国会答弁と会見内容の齟齬(そご)を問われて退陣したこともあった。首相の国会答弁に関する会見は本人がすべきで、内閣記者会は飯島氏を『お呼びじゃない』と突っぱねるべきだった」と強調する。
「古来、政治家はピンチになると戦争を起こしたり、責任逃れのためもっと大きな火事を起こしてきた。英国の十九世紀の政治家が『誠実に勝れる知恵なし』と語っているように、トップリーダーには高い道徳性が求められる。ロンドンに留学したとする首相もこの言葉をかみしめてほしい」
表情などからウソを見抜く研究をしている明星大の工藤力教授(社会心理学)は、今回の問題をこう分析する。
「通常、ウソのごまかし方には、隠ぺいと偽装の二種類がある。『偽装』とは、例えば本音を突かれたときに『言い方が悪い』などと趣旨をずらして怒って見せることなどだ。年金未加入問題について、小泉首相はその事実を説明しなかった『隠ぺい』とともに、ウソをはぐらかす『偽装』も行っている印象を受ける」
■八つ当たり
実際、政府は年金未納・未加入問題の矛先を「情報漏えい」に向けている。
飯島秘書官は十四日の会見で、未加入問題を報じる週刊誌をやり玉に挙げ、「しかるべき措置を講じたい」と憤ってみせた。会見では、「未加入」と「未納」の違いを解説するペーパーをわざわざ配り、「法的に問題ない」と強調。坂口厚労相も「(漏えいがあるなら)厳然と処分して、責任を明確にしないといけない」と社保庁を批判した。
工藤教授は「問題をすり替えようとしているだけではなく、未納・未加入の議員を小出しに順番に出していることも極めて計画的な印象を与える。ウソのごまかし方としては罪が重い」と指摘する。
一方で世論は、首相の年金未加入問題を「不問に付す」流れとなっている。
共同通信社が十五、十六日に行った世論調査では、年金未加入問題で小泉首相が「退陣すべきだ」との回答はわずか13・2%で、「政治責任はあるが退陣の必要はない」が57・8%だ。
同じ調査で、菅民主党代表の辞任を59・1%が「当然」、神崎公明党代表で53・1%が「辞めるべきだ」との回答だったのに比べると、歴然とした差がある。
明治学院大の川上和久教授(メディア論)は「テレビに出まくって“公開処刑”され、傷口を広げた菅代表と、大量の『未納・未加入議員』が判明して、国民が飽きたころに発表した首相では、メディア戦略においては横綱と幕下ほどの力量差がある」と説明する。
さらに川上教授は、訪朝と同じタイミングで発表したことは、世論に別の効果も与えていると指摘する。
「拉致問題を解決してほしいという国民感情は強い。訪朝を控えた今は、小泉首相を厳しく問いつめるタイミングではないと判断したのだと思う。首相が退陣して、拉致問題の解決が遠のいては大変だという心理が働いたはずだ」
前出の工藤教授は「日本人の特徴として、『あきらめ』がある。最初はウソに驚き、重なると嫌悪感が生まれる。さらに続くとうんざりする。小泉首相は言いたくないことを、国民があきらめたタイミングで発表している。上手に演出した後出しジャンケンのようなものだ」と説明する。
森田氏も「あまりにも未納、未加入が出てくるので『この問題は国民年金が原則強制加入になった八六年以降に絞ろう』との議論が出だしており、その範囲で判断すれば、責を負わないで済むだろうとの計算があったのでは」と推測する。
こうした状況に工藤教授は警告する。「世論調査などで表面化してはいなくても、根底には強い不信感を残した。うんざりし、臭いものにフタをしたということを当の国民は知っている。ウソをごまかすリスクは大きい」