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イラク占領は破綻した 思考停止状態のアメリカ 田原 牧さんに聞く【BUND_WebSite記事】
http://www.asyura2.com/0403/senkyo3/msg/231.html
投稿者 クエスチョン 日時 2004 年 4 月 25 日 18:01:48:WmYnAkBebEg4M
 

(回答先: ファルージャを救え#ス占領で共闘するシーア派とスンニ派【BUND_WebSite記事】 投稿者 クエスチョン 日時 2004 年 4 月 25 日 17:46:35)

イラク占領は破綻した 思考停止状態のアメリカ 田原 牧さんに聞く【BUND_WebSite記事】
http://www.bund.org/interview/20040425-1.htm

たはら・まき

1962年生まれ。95年から1年間、カイロ・アメリカン大学に留学。東京新聞カイロ特派員を経て、現在、東京新聞特別報道部勤務。同志社大学一神教学際研究センターの客員フェロー。著書に『ネオコンとは何か』『イスラーム最前線−記者が見た中東・革命のゆくえ』(田原拓治名)など。


 日本人3人がイラクで拘束されました。この事件の背景として押さえるべきは、アメリカが完全に思考停止に陥り、さらにチョンボを繰り返し重ね、その結果としてイラクでの戦争が激化しているという状況です。ブッシュの戦争終了宣言後も、今日まで戦争は続いていました。しかし、いまや北部を除くイラク全土が本格的な激戦状態に入っている。市民たちの犠牲も4月以降、1千人に届かんとしている。これは戦争当初からの米兵の犠牲者数を上回っている。ファルージャなどは文字通り虐殺が発生しました。

 日本人の拘束は、イラクの占領抵抗勢力からみて、自らの市民を守り、占領者連合の一番弱い環である日本を脅すことでアメリカを揺さぶることが狙いであり、それは責められない。自衛隊の撤退しか、答えはないと思います。

 アメリカはハナからイラク占領のシナリオがなかった。これはいままでも語ってきたことですが、そのつけが現在、どんどん拡大している。もはや、軌道修正できないくらいにアメリカが壊れている。サダム=フセインを打倒するという軍事行動のシナリオはあったけれども、その後のイラクをどうしていくのかということについてアメリカは具体的な絵を描いていなかった。

 強いて言えば、傀儡の統治評議会メンバーであるチャラビの甘言を土台に、ネオコンが反イスラエル勢力の一掃を狙った中東大改編シナリオを夢描いていた。まずは戦後のイラクにヨルダンの王族を持って来るというアレです。ところが現状把握もシナリオもずさんですから、当然、行き詰まった。こうしたずさんなシナリオが世界最強の帝国を動かしたという点は、別機会に検証しなくてはならない大きなテーマですが、このシナリオが頓挫した後に別のシナリオが準備されていなかった。そこが問題の根本です。

■米軍による虐殺がスンナ派の抵抗招いた

 こうしたシナリオのなさ、無理解といってもいいと思いますが、これをベースにチョンボが繰り返される。例えば現在、中部のファルージャで戦闘が激しくなっています。ファルージャは基本的にスンナ派地域ですが、ブッシュの言うような旧政権残党の拠点ではない。むしろ、旧政権下においては、サダムに対してひじょうに反抗的な地域でした。ファルージャ出身の軍人が部族的に異なるサダムにたてついたため、弾圧されてきたのです。元々、サダムに対するシンパシーはほとんどない地域なのに、そこの人々が今アメリカ軍と戦闘状態に入っている。反米感情の高まりの根はチョンボの繰り返しにあるといえます。

 具体的に経緯をみてみましょう。去年の4月、ファルージャに米軍が入ってきて駐屯地を設けました。その駐屯地というのは小学校でした。その4月末、一定戦闘が終結してきた時点で、ファルージャの住民たちは学校を再開させたいから明け渡してくれという要求を平和的に行いました。ところがその交渉の過程で、アメリカ軍が市民に発砲し、15人が死ぬという事件がおきました。これが第一のチョンボです。この事件をきっかけにファルージャの人々が武装闘争に走ったのです。

 さらに本来、政治的な意識が薄い人々の間に、戦後流入してきた反米意識と組織戦略を持っているイスラミストたちが入ってくるようになった。そうした事態に対して、ファルージャの地元穏健聖職者たちはことし3月上旬ぐらいに、反米勢力の軍事行動をある程度抑制しようとしました。聖職者が働きかけることで米軍と話し合いの方向に持っていこうとしたのです。

 ところが、2月に米軍のアビゼイド中央軍司令官一行のコンボイがここを通過中、襲われていた。これに恐慌をきたしていた米軍は、穏健派聖職者が鎮静化を図っていた3月の半ば、反米活動の拠点であるモスクを急襲して、また人を殺してしまう。これが第二のチョンボです。聖職者たちの収拾に向けたせっかくの活動が水泡に帰したわけです。さらに挑発的にモスクを空爆する。当然、イスラミストの唱える「米国こそイスラムの敵」という聖戦論に説得力を与えてしまう。言い換えれば、穏健派聖職者の立つ瀬をなくしてしまった。これが第三のチョンボ。そうしたミスの連鎖が、今日の事態に繋がっているのです。

 ファルージャというのはバグダッドにも近いですし、バグダッドの市民の中にはファルージャ出身者もたくさんいます。ファルージャでの話がバグダッド市民にも当然、口コミで伝わる。大変理不尽な話だということで、怒りが首都の市民にも蔓延していく。ただでも、人々が考えていた戦後の希望がすべからく逆の結果になっている状況下で、そのフラストレーションにファルージャの惨劇が引火し、首都の穏健派市民からも支援が集まる状況が生まれています。

■シーア派の抵抗が始まった

 アメリカのもうひとつの大きな失策はシーア派に対する処し方です。今、シーア派のムクタダ=サドル師のグループが米軍とぶつかっていますが、それはサドル派のみにとどまらずシーア派内の無党派層の人たちをまきこんだ広範な抵抗になっています。

 シーア派はこれまで過激な行動を控えていました。少なくとも3月8日のイラク基本法(暫定憲法)が署名されるまではひじょうに自制してきた。スンナ派の過激派らしき人たちが――これは証拠がはっきりせず、いつものようにモサドの陰謀論も現地では流れるのですが――何度か爆弾テロを起こしても、シーア派は反撃を手控えてきた。その根拠は、民主化による将来の主導権への希望です。

 ご存じのようにシーア派はイラク国内ではマジョリティですから、選挙さえ行われれば、新体制の中で大きな力を持つことになると信じてきた。だから、スンナ派過激派の宗教対立をあおるような動きに対しても隠忍自重してきたのです。ところが、アメリカ率いる占領当局はシーア派のそうした動きを全く評価しなかった。期待していたご褒美はお預けにされた。希望していた直接選挙を棚上げにされただけでもショックなのに、イラク基本法をみる限りではシーア派の意向はほとんど受け入れられず、二重のショックを受けるわけです。

 例えば、基本法にはクルド人に有利な条項が入っています。イラクの18州のうちクルド地区にあたる3つの州で、有権者の3分の2がそれぞれの州で反対した場合、新たな法律は制定できない。3つの州の人口というのは合わせてもわずか50万人、イラク全土は2000万人以上です。結局、クルド人に事実上、拒否権を与えてしまった。基本法では表向き連邦制を否定していますが、この拒否権だけで十分、将来の連邦制が担保されたことになる。シーア派は連邦制には絶対反対の立場です。

 また、新しい法律を制定するうえでの法の源=法源に関して、シーア派はシャリーア(イスラム法)を主張していました。しかし、これには占領当局が強く反対し、妥協策としてイスラム法はあくまで法源のワン・オブ・ゼムに過ぎないとされた。つまり、シーア派としては期待していた果実がほとんど得られなかったのです。シーア派民衆に不満が鬱積していく中で、再び米国はチョンボをします。サドル派の『アルハウザ』という新聞に対する発禁処分です。

 『アルハウザ』という新聞は、そんなに影響力のある新聞ではない。要は党派の機関紙であり、読む人もそういうものだと思って読みます。内容的には、反米だ何だと書いている。だからどうしたという程度の話なのですが、アメリカはそれが気に入らないということで発禁にした。明らかに挑発なわけです。暴れたくて、うずうずしていたけど、シーア派全体の共同歩調に従っていたサドル派にとっては、決起する格好の口実が得られた。

 サドル家はたしかにイラクのシーア派社会の中では、旧政権下で抵抗を貫いてきた名家です。だから、サダムに殺されたサドル師の父親などはひじょうに尊敬されていて、この親の七光を借りるように、サドル派のポスターには「サドル(父)からサドル(息子)へ」と書かれています。しかし、ムクタダ=サドル師その人自体に対する評価は政治経験もなく、宗教者としての権威もなくということでそう高くありません。同世代である若者はシンパシーを感じているのかもしれませんが。そうしたサドル師が、一グループでは仕切る力量もカリスマもないシーア派各政治組織とその突出を好まない民衆の妥協の産物として祭り上げられていた「無害」であるアリ=シスターニ師を凌駕して、突出できたのはなぜか。

■ムクタダ=サドルの台頭

 シーア派の政治グループは主要には4派あります。そのうち、最大党派のSCIRI(イラク・イスラム革命最高評議会)やダアワ党は亡命がらみの組織です。これらのグループは亡命中にアメリカやイランに「借り」があります。けれどもムクタダ=サドル師のグループというのはずっとイラクにいたわけで、彼らには特にアメリカに対して「借り」がありません。しかもSCIRIはイラン―イラク戦争中にはイラク人捕虜をイランで虐待したりもしている。頼りないけど、サドル派に一定シンパシーが寄せられる理由でもあります。

 つまり、ムクタダ=サドルというアメリカに対して借りのない党派が、同じようにアメリカに借りのない一般のシーア派民衆の怒りの噴き出し口になったということです。その機会を与えたのは、他ならずアメリカのチョンボなのです。

 このサドル派の突出は米国からみれば、悪いことにシスターニ師やSCIRI、ダアワ党に踏み絵を与えてしまった。もし、サドル派の決起にけちをつければ、今度はこうした政治グループなどが民衆の敵にまわる構造になってしまう。シスターニ師自身、4月4日にはサドル派に「頭を冷やせ」と突き放していましたが、この抵抗が単なるサドル派のスタンドプレーではないと分かった3日後には「デモ参加者には正当性がある」と姿勢を一転させています。

 SCIRIにしても同様に本来、蹴倒してやりたいサドル派のデモ隊に自分たちのテリトリーであるバスラの庁舎を一時的に明け渡している。これらの行動はすべからく、サドル派を抑えようとすれば、自身が民衆に乗り越えられてしまうという危機感の裏返しです。

 ところで、アメリカはどうしてシーア派を挑発したのか。イラク基本法の署名の際、シスターニさんが最後の最後で民衆の声に応えて署名式を引き延ばしてみたり、さらに基本法が制定された後に「こんな基本法はろくなものじゃない」と批判した。こうした行動について、私はシスターニさんのシーア派内での自己保身と、民衆のガス抜きを図った試みとみています。

 ところが、親の心子知らずというか、アメリカにしてみると、これだけで主権委譲プログラムは数日遅れになるし、だいたいそうしたシーア派の態度が気に入らない。その即時的な反応が前々から統治評議会の外でやんちゃをしているサドル派に向いて、『アルハウザ』を発禁にした。それが民衆不満に引火して、逆に抵抗闘争がドカンと火を噴くきっかけになってしまったということです。外部からみれば、情けない判断ミスとしかいいようがない。

■イラク統治の方程式が解けないアメリカ

 こうやってみると、アメリカが思考停止状態に陥っていることが分かると思います。 その根底にあるのはイラク統治の方程式が解けない現実です。サダム・フセインの独裁統治はよくない。しかし、イラクという国をサダム方式でなく、今の国民国家・近代国家の枠の中で統治できるのか。これは正直言って私にも分かりません。サダムは悪い奴だけど、やっぱり政教分離をきちっとするバアス主義しかないのではないかという考えが、イラク国民の間でいまも一定の影響力を持っている根拠でもあります。とにかく、アメリカはパニクっている。アラブやイラクに対する知識不足に加えて、現実的な足かせもかかっている。例えば、それはクルド問題です。

 クルド問題は将来的にイラクの枠の中で収まるのか、ひじょうに不可視です。つまりトルコやシリア、イランなどに住むクルド人にイラク・クルドの自立が何らかの連動や影響力を与えかねない中で、イラクの近隣諸国はそうした動きを絶対に許せない。例えば、親米を掲げながらもクルド問題が最大の国内課題であるトルコは、イラクのクルド人に対してもっと圧力をかけろとアメリカに求めています。

 クルドの問題を複雑にしているもうひとつの要因として、イラク・クルドの政治組織が歴史的にイスラエルと蜜月だったという歴史があります。彼らは公には否定していますが、やはり「敵の敵は味方だ」という論理がそれを支えた。それは彼らクルドの立場から見ればやむを得なかったことなのかもしれませんが、一方のアラブからみれば、大いに危険な連中となるわけです。

 逆にアメリカにしてみれば、クルド組織が親イスラエルだったという事実が、彼らに対してもうひとつプラスの評価を与えなければならない要素にもなっています。ところがクルドを厚遇すれば、他のイラクの国民のみならず、トルコやシリアも怒ります。その点はイランも同じです。アメリカは中東におけるクルド問題をどう解いていいのか分からない。

 クルド問題に加えて、アメリカはイラク戦争でバアス党組織を徹底的に解体しようとした。ところが、イスラム主義者を敵視していたバアス党統治機関が全くまっさらになった結果、そこにアメリカにとって一番嫌なスンナ派の急進派が入ってくるという問題が発生した。当たり前のことなんです。さらにイラク国民の6割を占めるシーア派の問題も、彼らとイランとの関係を警戒して全く解決できない。実際、イラクとイランのシーア派の関係はアメリカが考えるほど一枚岩ではないのですが。こうした一つ一つのファクターすべてにつまずいている。

 こうしてイラク統治の方程式が解けないまま、失策が重なる。その結果、ファルージャのように、ますますイスラム主義に対する住民の傾斜が強まる。例えば、3月31日にアメリカの4人の傭兵が殺された時、それをやったグループが「これはアハマド・ヤシン師虐殺に対する報復である」という声明を出しています。これまで地方の市民で、政治意識が薄かった素朴なファルージャの住民たちが次第に反米・反イスラエルの方向で政治化している証左ともいえます。それが新たな弾圧と強硬策を生み、イスラム主義というアメリカにとって最もやっかいな毒は一段とその濃さを増してゆく。アメリカのイラク占領政策は完全に悪循環を起こしているのです。

■「自由と民主主義」という宗教

 方程式が解けないイライラの中でも、血を流して占領している以上、何のためにわれわれはここにいるのかという大義が必要になる。ところがイラクにはWMD(大量破壊兵器)は存在しないことが明らかになって、その次の大義として掲げたサダムも捕まえた。それでも、抵抗がやまない。

 イラク占領の大義として他に何があるのか。ネオコンの夢物語ももはや通用しない中で、前面に押し出されているのが「悪魔のささやき」です。アメリカという国家そのものの存在理由といってもよい。つまり、イラク戦争は、アメリカにとって十字軍の戦いであるという宗教的な大義です。誤解を恐れずいえば、アメリカは宗教国家としての側面を抱えている。

 肝心なことは、いまアメリカが盛んに叫んでいる「われわれは自由と民主主義に反対するテロリストをやっつけているんだ」という台詞ですが、この「自由と民主主義」というのは、小泉首相が語るそれとはまったく違う内容を指している。

 アメリカ人にとって「自由と民主主義」とは、神(ユダヤ教、キリスト教にとっての)が国家に与えた責務であるという点です。その背景はちょっとさかのぼらねばなりませんが、ピューリタン革命がアメリカ人の精神的なバックグラウンドとしてある。腐敗した欧州を捨て、文明の最先端を新大陸で切り拓くというアレです。その内容が神授された「自由と民主主義」であるということ、これはアメリカの「国教」であり、その意味でイラクでの戦いは彼らにとって宗教戦争でもあるわけです。実際、ブッシュ政権の屋台骨である宗教右派の指導者たちはイスラムの預言者、ムハンマドをテロリスト呼ばわりしてはばからない。ブッシュはさすがに公言しませんが、内心はかなり同調しているでしょう。

 いま、イラク戦争はそうした意味で新しい段階に入ったと思います。イラク占領が行き詰る中、アメリカが本来持っている宗教性が全面的に出てきている。一方、イラクの抵抗勢力にもイスラムの色彩が次第に強まっている。その結果、文明の衝突に近い様相が出てきているのではないでしょうか。3月31日に4人の傭兵が殺された後のアメリカの逆ギレぶりをみていると、ますますそう確信できる。単純にアルカーイダがどうしたとか、アメリカのキリスト教原理主義者がどうしたとか、という枠をすでに超えている。

 さらに、こうした宗教性という問題に加えて、アメリカ国民の勘違いという問題があります。ブッシュ政権の基盤というのはアメリカ南部・中西部の素朴な人たちです。彼らは最大ロビー団体の一つである全米ライフル協会に代表される保守的な人たちで、ネオコンと全然違ってアメリカの世界戦略に関しては、ほとんど関心がない。言ってみれば、自分の村さえ安全ならそれでよいという人々なのですが、この人たちがイラク戦争には極めて好戦的になっている。その原因はイラクが怖いという心理です。彼らにとってイラクは庭先であり、家を守るためにはライフルを担がねばならないと思いこんでいる。

 その根底には9・11のトラウマがある。彼らは、イラクから自分の家に第2・第3の9・11がふりかかってくると信じている。だからイラクのテロリストをやっつけなければイカンという発想になる。しかし、ファルージャの住民たちがアメリカまで来てドンパチやることはありえないわけです。その意味では妄想に近い。けれどもこうした保守的な人々はこの妄想から離れられない。イラク人がなんかやるんじゃないかと思って、実際にイラクを叩く。アメリカが叩くことによって、普通のファルージャの市民が本当のイスラミストに変身するわけです。アメリカは自分たち自身で危険を作っている。端から見ていると非常に滑稽な間違いを犯しているのですが、それが現実であり、ニューヨークや西海岸の進歩派のイメージに取りつかれている日本の進歩的文化人たちがアメリカの実相を見誤る理由でもあります。

■思考停止は私たちの危険でもある

 さて、いよいよ私たち日本人の問題です。自衛隊派遣や人質事件が大きな関心事になっていますが、もう少し大局的にみると、今後アメリカという最強の帝国と日本がどうやってつきあっていくのか、私たちにも解いていない方程式がある。対米追随がダメというのは私も賛成ですが、それだけでは何の答えにもなっていない。何も政府だけでなくて、それは左翼にしても同じではないでしょうか。対米関係においては、日本も思考停止に近い。たぶんアメリカのような強大な帝国に対してとてもじゃないけど逆らえない、ということが先入観としてあると思います。しかし、果たしてそうなのかということを精神論を超えて、よくよく考えてみる必要がある。

 偉そうに言っている私も、実は方程式を解けていない。ただ、パレスチナや今度のイラクをみていると、日本人よりももっと物理的に物を持ってない人たちがアメリカを振り回している現実がある。そこらへんにヒントがないでしょうか。中東に関して言えば、歴史的に日本はアメリカほど、あるいは欧州ほど手を汚していない。そういった意味では外交チャンネルを広げようと思えば広げられるわけです。いろんな外交チャンネルを持っているということ、知恵を蓄えるということはひとつの武器です。そういうチャンネルを広げることで日本という独立した立場を作れるのではないだろうか。さらにアジアとの関係をどうするのか。そうでない限り、単純に対米追随でいくのであれば、極端な話ですが、日本もアメリカの51番目の州になって、その代わり選挙権をよこせと言うべきです(笑)。選挙権も発言権もなく、アメリカの一部としてこき使われるというのは奴隷ですから。

 現在のイラクを核とする世界情勢の中で、私たちは抗うという行為とともにいろんな主体にまつわる宿題も背負わされていると思います。アメリカという帝国が国際社会であり、その枠内で国家主義を追求するという日本の右派に対抗する異なった国際戦略の検討、さらにアメリカ、イスラム圏に代表される一神教世界とどう付き合うのかという宗教と私たちとの在り方。イラク戦争はそうした本質的な課題を私たちに与えてくれているともいえる。自衛隊派兵、人質事件の一方で、安易な精神論に乗っからず、私たちがどうあるべきかという問題を我慢して考え抜く覚悟がいまほど必要になっている時期はないと思います。

(2004年4月25日発行 『SENKI』 1142号4面から)

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