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(回答先: TOKYO少女(8) 投稿者 三人目 日時 2004 年 10 月 24 日 19:12:08)
619 :70 ◆DyYEhjFjFU :04/10/16 22:34:31
そのままオタに電話した。
メールなんて待ってられなかった。
オタだってわかっててくれたんだと思う。
たった数回の呼び出しで男の声が聞こえた。
考えてみればぼくとオタは普段あまり喋らない。
あんなにたくさん会話するのにそれは2バイトに変換されるから。
大量の文字と画像データ。
電話の声は別人のように聞こえた。
男の声が本人だとわかるまで
道路沿いの強風の中、オタなのかと叫び続けなければならなかった。
「エアインディア」
とオタは言った。
航空会社の名。
雑音の中そこだけやけにはっきりと響いた。
途切れてしまった探索の小径の先。
オタは天才的なひらめきでもって最後に
搭乗予約のデータの中から彼女の名を引き当てた。
ついてた。ラッキーだったとオタは言った。
たまたま航空会社のデータベースに張りついてたやつがいて。
普段なら最初の連絡だけで数日かかるほど用心深い連中なんだ、と。
リークさせるために金もかかったんだろう。
オタがそれを口にすることはなかったけれど。
620 :70 ◆DyYEhjFjFU :04/10/16 22:36:26
すまない。とオタは悔しがった。
新しいことはもう何ひとつわからない。
憶えてるか。3枚のgif。
インドの3つの街。ペダルタクシィの写真。
この街のどれもが電気街なんだと。日本でいうアキハバラ。
まったく知らなかったよ。路地裏に入ればウィンドウズが2ドルで買える。
この場所が選ばれたのには理由があるんだよ。絶対に。
でもそれが何なのかはわからない。
オタのため息。近くて音が割れる。
あのリスト。数字の羅列。
それはレターヘッドに印字されるように整えられてた。
いまでも意味不明の単語がいくつかあって
それは医用電子装置メーカ数社の名に似ている。
さらに疑って読み取れば、液体シンチレーションカウンタだの
染色体画像解析装置の型番にもぴったり重なる。
これはきっと偶然なんかじゃない。
オタは企業情報と口にしかけ
それから、いやあり得ないと一蹴した。
それこそ荒唐無稽だ。
苦しまぎれに頭を切り換えようとして
むこう一月分のインド行き予約状況を調べてみた。
そこに嬢様の名があった。
偽名を使ってないところをみると
これで終わりにしようとしてるんじゃないのか。
もちろんおれの言ってることはすべて当て推量だ。
だけど今夜手を離せば嬢様はもう帰ってこない気がする。
621 :70 ◆DyYEhjFjFU :04/10/16 22:37:44
もういいんだよ。オタ。
姫様はここにいる。
ぼくの手を握っててくれる。
目を閉じれば姫様の体温を感じることができる。
・
今日書いてるときに流れていた曲
スマッシングパンプキンズ/Smashing Pumpkins「machina」
624 :70 ◆DyYEhjFjFU :04/10/16 22:43:20
毎晩読んでくれた人。
ありがとう。
次のアップは数時間後。
最終話です。
628 :('A`) :04/10/16 22:56:10
70 名前: ('A`) 投稿日: 04/08/16 07:33
クリスマスイブにデートの娘を買ったことがある。
Hなしっていう条件。拘束時間は明け方まで。
高いなぁと感じつつ、綺麗だからまあ仕方ない。
食事して映画みて、すこし飲んで、場所を変えてまた飲んで。
話が弾んで楽しくてあっという間に明け方になった。
こういうのも悪くないと思った。
時間になったから開こうと言って、電車動いてる時間だし駅まで送ったら
「帰りたくない」と言われた。
金ないし。延長はしないよってきっぱり告げると
じゃあわたしが出すからホテル誘って…と。
繁華街にそのまま歩いて戻り、
結局ホテルでその娘に子供みたいにしがみついて、長いことぐっすり眠った。
髪から煙草とミツコと何か甘ったるい少女系コスメの匂いがした。
ハンドバッグに10センチくらいのピンクのクマのぬいぐるみが入ってて
やけに汚れてて、イメージと随分かけ離れたもの持ってるんだねと聞くと
お守りなんだと言ってた。
翌日の頭がすっきりした感じと爽快感は今でもはっきり覚えてる。
もう長いことあの爽快感を経験してないな。
この70氏の最初の書き込みからちょうど2ヶ月ですね。
これを見た時ここまで話が発展するとは予想できませんでした。
いよいよクライマックスか・・・
652 :70 ◆DyYEhjFjFU :04/10/17 02:00:47
代官山まで歩いてもぼくらは店を探そうとはしなかった。
お腹がすいているのかさえ分からなくなった。
どこかに入ってもいいし何も食べなくてもいい。
このまま道に迷ってしまってもかまわなかった。
結局落ち着いた先はフレッシュネスバーガーで
ぼくはオレンジジュースを飲み
彼女はフライドポテトを数本つまんだだけだった。
どうやらあの目黒の晩から巻かれはじめた夜は
完全に巻き取られてしまったらしい。
ぼくらにはもう時間が残っていないようだった。
彼女がそのことを口にすることはなく
つとめて明るく振る舞い、ぼくのために冗談を言い
ホテルに戻ってからも
ぼくのそばにずっといてくれた。
653 :70 ◆DyYEhjFjFU :04/10/17 02:02:28
ホテルにあった暗がり。
その闇の中で彼女は荷造りをはじめた。
洗面台にあった化粧品をまとめ
持ってきたどこかのショップの袋から
新しいワンピースを取りだして着替え
PCを起動して短いメールを送信した。
そのあとぼくらはベッドによこになってしばらく眠った。
彼女の心の中にあった凪。
さざ波ひとつない完璧な鏡面。
それに触れた途端
ぼくはもう何も話せなくなった。
彼女はありがとう、と言った。
気持ちが落ち着いていて、とても気分がいいと。
明け方。彼女はホテルの部屋を出て行った。
ふかふかの絨毯のせいで足音すらなく
彼女は妖精みたいにぼくの前から消えていなくなった。
654 :70 ◆DyYEhjFjFU :04/10/17 02:03:55
彼女が残して行ったお土産の包みを開けてみた。
派手な極彩色の花が描かれた
いかにもインドの土産っぽい香の箱。
中身はからっぽだった。
代わりに入っていたのはピンクのクマのぬいぐるみだった。
箱の蓋を開けるとき、香のかおりがさあっとひろがって
ぼくはそいつを肺の中いっぱいに吸いこんだ。
懐かしいかおり。
それは目黒の夜、彼女の首筋に残ったあの匂いとおなじものだった。
どうしても思い出せずにいた、あの
あまったるい匂いだった。
・
最後に流れていた曲
スマッシングパンプキンズ/The Smashing Pumpkins 「rotten apples」
664 :70 ◆DyYEhjFjFU :04/10/17 02:17:32
おわりました。ようやく。
たぶんいろいろ書きたいことがあったような気がするんだけど
キーに触ったとたん忘れちった。
とにかく最後まで読んでくれた人ありがとう。
すべてのレスをくれた人ありがとう。
シロウトのつまんない話に最後まで付き合わせてごめんなさいでした。
さーて飲も。。。ノシ