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国内3カ所の原発をモデルに、地震によって79年の米スリーマイル島原発事故のような「炉心損傷事故」が起きる確率を試算したところ、約1000倍の格差があり、最も高い原発は40年間で2%程度に達することが、独立行政法人・原子力安全基盤機構の研究で分かった。地震による原発事故のリスクが具体的な数字で明らかになったのは初めて。3原発名は未公表だが、福島、大飯、浜岡各原発とみられる。国際原子力機関(IAEA)が推奨する基準に達しない結果が出た所もあり、議論を呼びそうだ。
同機構は、経済産業省原子力安全・保安院の委託で、原発の耐震安全性を確率で評価するための研究を進めている。研究を指導したワーキンググループには、電力会社の担当者も参加している。
昨年9月に同機構が出した報告書「確率論的手法を用いた設計用地震動の作成手法の整備」によると、「サイト1」「サイト2」「サイト3」の3原発をモデルに、周辺で起きた過去の地震などから地震の発生確率や大きさを計算。揺れで機器などが損傷する確率のデータを基に、供用期間を40年間と仮定し、この期間に地震で冷却装置が一切働かなくなり、原子炉を冷却できない事態に至って炉心が損傷する確率を試算した。
その結果▽サイト1=約0.0017%▽サイト2=約0.45%▽サイト3=約2.4%だった。年当たりの確率に換算すると▽約0.00004%▽約0.01%▽約0.06%となるという。
報告書には、3原発名は書かれていない。しかし、地盤の状況など試算に使ったデータは、サイト1が福島、サイト2が大飯(福井)、サイト3が浜岡(静岡)の各原発の国へ提出された設置許可申請書などから引用している。
地震を含め原発の安全性を確率論的に評価する方法は、欧米で導入が進んでいる。IAEAも各国に実施を求め、炉心損傷確率が年当たり、新設炉で0.001%以下、既設炉で0.01%以下となるよう基準を設定することを推奨している。
国の原発耐震設計審査指針は、発電所ごとに過去の地震などから想定される最大の揺れを求め、その揺れに耐える設計を求める。さらに、壊れるまでには余裕があることも確認する。
ただ余裕の程度や、想定外の揺れが起きる確率は原発によって違う。地盤によって揺れの伝わり方が変わるため、同規模の地震でも原発に届く揺れも大きく違い、試算の損傷確率がばらついた。
同機構は「代表的な原発のリスクの程度を把握することや、確率論的な地震の評価結果を原発の安全規制に活用するためのデータ蓄積が目的で、一つの試算にすぎない」と説明している。【鯨岡秀紀、中村牧生】
◇具体的議論可能に リスク試算
地震で重大な原発事故が起きる確率は、原発によってかなり違うことが明らかになった。原発の耐震性に不安の声もある中、国や電力会社は「原発は十分な耐震性がある」と説明してきたが、事故リスクを具体的に示したことはない。独立行政法人原子力安全基盤機構の試算結果は、地震時の原発事故リスクについて、具体的な議論を可能にする点に大きな意義がある。国民の信頼を得るには、国や電力会社が積極的にリスクの情報を公開することが必要だ。
国や電力会社は従来、“地震でも原発は絶対安全”と思わせる説明をしてきた。例えば、中部電力が浜岡原発(静岡県御前崎市)を紹介したパンフレットには、「想定されるいかなる地震に対しても十分な耐震性をもっています」とある。
だが、スリーマイル島原発事故(79年)、チェルノブイリ原発事故(86年)、JCO臨界事故(99年)を経て、00年版原子力安全白書は「原子力は『絶対に』安全とは誰にもいえない」とした。想定外の揺れが襲う可能性も否定できない。
こうした流れを受け、国の原子力安全委員会は現在、原発事故のリスクをどこまで小さくすれば十分かを示す「安全目標」の導入へ向けた検討を進めている。絶対安全でないなら、「無視できるほど低いリスクに抑えよう」との趣旨だ。
では、今回の試算で明らかになった最高で年約0.06%という地震時の事故リスクは、高いのか低いのか。03年版原子力安全白書は安全目標を考えるうえで参考となる数字として、01年の人口動態統計を基にしたデータを示している。日本人のがんによる年間死亡率は0.02%、交通事故による年間死亡率は0.0098%−−。こうした数字より高い。
地震国・日本で、どこまで原発事故のリスクを受け入れるのか。今回の試算結果は、電気を使う国民一人一人に重い問いを投げ掛けている。【鯨岡秀紀、中村牧生】
毎日新聞 2004年11月22日 3時00分
http://www.mainichi-msn.co.jp/kagaku/science/news/20041122k0000m040151000c.html