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大型公共事業の見直しという点から、その行方が注目されてきた吉野川の可動堰(かどうぜき)に新たな動きが出てきた。
徳島県の飯泉嘉門(いいずみかもん)知事が、建設計画を進めてきた国土交通省に対して、「まずは可動堰以外の方法から検討してほしい」と要望したのである。国や県内の推進派への配慮からか、ストレートな表現は避けているが、可動堰を選択肢から外してもらいたい、ということだろう。
知事の心情は理解できる。1年前の選挙では、推進派が多数を占める自民党県議らに支えられ、建設反対を掲げた前知事を破った。だが可動堰問題はこじれにこじれている。
4年前におこなわれた徳島市の住民投票で「可動堰反対」が多数を占めた。全国の大型公共事業の見直しを進めていた当時の与党3党は、同じ年に可動堰計画を「白紙」に戻すよう勧告した。
だが「白紙」の解釈をめぐって、「計画の撤回」を求める住民団体と「可動堰は技術的に優れている」とあきらめない国交省が対立を続けてきた。
可動堰を選択肢に残したままだと、結論を出すまでにさらに時間と労力を浪費する。その間、治水対策を進める前提となる河川整備計画も作れない。吉野川流域の市や町、住民団体の意見を聴いてきた知事はそんなマイナスを考えて一歩前に踏み出したのだろう。
吉野川には江戸時代に築かれた、第十堰と呼ばれる堰がある。それを取り壊し、可動堰を建設する計画には、「財政難の折から巨額の資金を投じる価値がない」「水質など環境に悪影響を与える」などの反対論が多い。いまや地元を二分することで、むしろ地域の発展を妨げる存在になっているとさえいえよう。
飯泉知事の要望によって、ボールは国交省に投げられた。知事の言葉を額面通り受け取って、まず可動堰以外の方法を決め、それと可動堰計画を比較してどちらがいいかを決定する、といった主張もできないことはあるまい。
しかし住民投票の結果などから、民意はすでにはっきりしている。それを押し切って可動堰を建設するのは、事実上不可能ではないか。国交省はメンツにこだわらず、現実を見つめるべきだ。
可動堰を河川整備計画の選択肢から外す。第十堰を改修して、堤防の強化などで治水対策を図る。そうした方向に転じる、またとないチャンスだと思う。
徳島市から委託された住民団体が、3年かけて吉野川流域で「緑のダム」の実地調査をし、報告書をまとめた。森林を整備して、その保水力で治水効果を高めるという考え方だ。選択肢の中で参考になる案の一つだろう。
整備計画をつくる際には、住民参加と情報公開の徹底が欠かせない。そもそも「計画づくりに住民の意見が反映されていない」といった不満が混乱の始まりだった。国交省は、そんないきさつからも学んでほしい。