★阿修羅♪ 現在地 HOME > 掲示板 > 雑談専用9 > 760.html
 ★阿修羅♪
次へ 前へ
あのJ・ソロスはカール・ポパー哲学を崇敬しているらしい。
http://www.asyura2.com/0403/idletalk9/msg/760.html
投稿者 小魚骨 日時 2004 年 6 月 02 日 15:03:31:5fM4yUMte5cr2
 


「反ブッシュ」運動に精を出していると言われているJ・ソロスは、学生時代に出会ったK・ポパーの哲学を高く評価しているらしい。
それなら、“金融投機批判”や「反ブッシュ」の言動も理解できないわけではない。

===============================================================================================
以下は私が顧客向けのウイークリーレポートに掲載した「ソロスの錬金術」の書評です。
J・ソロス「ソロスの錬金術」前編(1996年9月30日)


藤崎 達哉

--------------------------------------------------------------------------------
あまり生々しい相場関係の本は読まない!のが私のポリシーである。だいたいこの手の本は、相場師の成功談に終始しており、むかつく事はあっても、役にたつ事はない!というのが私の見解である。…とキッパリ宣言した後でナンだが今回の書評は、「ソロスの錬金術」 である。
もともとこの本を買ったのは、健康診断の合間の暇つぶしのためだった。ところが読んでみてぶっとんだ。前回、考えるヒントで引用したKポッパーが言及されているではないか!さらにNo6で考察した科学的説明モデル(DNモデル)が載ってるではないか!そんなわけで急遽、この本が今回の図書案内の対象となったのだ。
この本は、私のまわりでも読んでいる奴が多く、彼らの感想はおおむね「難解だった」である。それもそのはず、本書の底流には、Kポッパーの哲学が流れており、この辺りを押さえていないとシンドイはずだ。ワー!こんなこと書いてるうちに紙面の1/3も使ってしまった。そんなわけでソロスの背景(ここに彼の発想の源があるに違いない!)について重要だと思われることを2つだけ述べる。

1) ソロスがロンドン大学に学んだこと:Kポッパーはこの大学の科学方法論の教授であった。そのポッパーを亡命先から呼び寄せたのはハイエクである。オーストリー学派の雄ハイエクは、単に近代経済学とか新古典派といった枠では捉え切れない理論(しばしば特異で、難解で、意味不明)を持っている(といわれている)。

2) ソロスがハンガリー出身であること:戦後アメリカが科学技術大国になったのは、ナチス迫害をのがれたヨーロッパのユダヤ人を受け入れたからである。とくにかつてのオーストリー・ハンガリー出身の有名人を挙げれば枚挙にいとまがない。ここに知識におけるユダヤ人コネクションがあるようだ。

実は1)と2)も密接に繋がっているのでもっと詳細に解説したいが今回はここまでにする。ワー!紙面の半分を使ってしまった。
それにしても「錬金術」とは、なんとも挑発的な題名である。彼は「科学」に対してこの言葉を用いている。しかし、時代錯誤な発想を揶揄するためにしばしば使われるこの言葉に、積極的な意味をあたえている。天体の運行のように、我々人間にはどうにもできない法則がある。これを見出すのが「科学」である。従って、科学は客観的である。一方、我々の働きかけによって性質を変えられる対象がある。この手法を組織化したものが「錬金術」である。ソロスによれば、自然を対象にした場合、科学が成功をおさめ錬金術は失敗に帰した。しかし社会を対象にした場合には事態は逆になる!というのだ。

観測者(科学者)自身が観測対象のなかにいる場合、観測者の行動が観測対象そのものを変化させてしまう。もともと量子力学で問題となっていたこの事態は、相場の世界でもあたりまえのことである。客観的な判断のつもりで発表したデータが、価格に反響する。ある理論が市場参加者のコンセンサスになっているがゆえに、その理論どうりの事態が成立する。投資家の行動そのものが相場を動かしてしまう。
これらの現象がソロスのいう「再帰」である。これは永遠に完結することのないプロセスである。ここには収束すべき均衡など存在しない。
ところで、ソロスのいう錬金術的な見方は、もっと一般的に生物学的・進化論的アプローチと呼ばれる方法に通底している。そして、これは最近の自然科学の潮流なのだ。つまりソロスが自己の「錬金術」との対比を際立たせるために使った「科学」は19世紀的なそれであり、現実の科学はすでに再帰的な現象の解明にも着々と成果をあげているのである。
ワー!紙面が尽きてきた。参考図書も一応載せたいので、今回はここでオシマイとしよう。そんなわけで次回の図書案内も「ソロスの錬金術」となります。
ジャン!ジャン!

関連図書ガイド
・ソロスの著作は本屋に積まれているのでガイドの必要はないだろう。
・ポッパー哲学のコンパクトな整理は、山脇直司『包括的社会哲学』東京大学出版会がすばらしい。
ハイエクに関しては、私は「複雑現象の理論」という超短い論文を読んだだけなので案内できる立場にない。ただ、彼を中心として、1980年以降の新自由主義の台頭の中で、これまで傍流であったオーストリー学派の理論が徐々に注目されているということを記しておこう!
天才フォン・ノイマンをはじめオーストリー・ハンガリー関連で注目すべき人は多い、ここでは文系の人としてKポランニーとドラッカーを挙げておこう。ポランニーは経済人類学の創始者として有名だが、その昔ドラッカーの才能をいち早く見抜いた人でもある。彼はまたポッパーとも親交があった。
生物学的・進化論的アプローチに関しては、物理主義一辺倒の石頭が多い科学哲学者のなかで、早くからこのアプローチの重要性を主張していたのもやはりポッパーである。Kポッパー『客観的知識 − 進化論的アプローチ』木鐸社
またこのアプローチの具体的手法に関してはIプリゴジン『複雑性の探求』みすず書房


--------------------------------------------------------------------------------

J・ソロス「ソロスの錬金術」後編(1996年10月28日)

今回は、「ソロスの錬金術」後編ということになるが、前回の最後のところで、ソロスのいう錬金術的な(再帰的)ものの見方は、最近の科学全般の流れでもあり、それは生物学的アプローチであると指摘した。彼の分類をもう一度復習すると…
われわれの働きかけによって変形できない対象 → 自然科学 → 科学的方法
われわれの働きかけによって変形可能な対象 → 社会科学 → 錬金術

であり、私は後者を生物学的アプローチと呼んだのである。実際、彼は市場を一つの生物と見做しているような記述がいくらでもある。興味深いのは、彼の「市場」と「現実」の二分法である。彼はいう…


「私の運用成績での成功は、先を見通す能力とは対照的である。したがって、金融市場での出来事と、実際の世界での出来事は分けて考える必要がある。」

われわれの感覚からいえば、金融市場での出来事も実際の出来事であると思えるのだが…、この分類にはどういう利点があるのか?これに関しては、次のように考えればよいだろう。すなわち…
実際の世界=環境、金融市場=生物(あるいは生物集団の組織 )

こうすれば、環境を研究することと生物を研究することの混同を防ぐことができる。但し、問題なのはソロスも含めて研究する人間自身が生物集団の一員であるという事実である。このようなリカーシブ(再帰的)な事態を分析するために導入されたのが錬金術というわけだ。

ところでソロスの敬愛するところのKポッパーも非常に明快に生物の特徴について語っている。彼はすべての生物の行動様式を科学理論(仮説)の発展様式と同じメカニズムをもつものと見做している。環境の中の生物は仮説(理論)に基づいて行動するとされる。ここで仮説とか理論とかいっても、いわゆる学説のような狭い意味ではなく、「目の構造」とか「本能」とかいったムチャクチャ広い意味で使われている。つまり「目の構造」や「本能」は、太古にその生物が提出したサバイバルのための仮説である!と考えるのである。当然の帰結として間違った仮説を提出した生物は死に絶えてしまう。同様に、これまでうまくいった仮説がこれからもうまくいく保証はない!(これは帰納の問題と呼ばれ、将来の意思決定において非常に重要な実践的意味を持っている。ちなみにポッパーはこの問題を解決したのはオレだ!と主張している。ただこの主張は哲学ギョーカイでは認められていない。 藤崎注)これがポッパーの描く生物進化のプロセスである。もっとも人間が提出する科学理論の場合、間違っても即、死に絶えることはないが、意識的に誤りを排除することが重要だと説かれるのである。
再びソロスから引用しよう!


「私のアプローチは、金融市場の将来の展望についてさえ、確実な予測はまずできないのである。 ―中略― なんらかの妥当性を持つとすれば、それはこの理論が、金融市場の機能する方法に対応しているからであろう。これは市場事体が将来について仮説を立て、その仮説を検証しているのだと見ることができる。検証の結果、生き残った仮説は強化され、否定された仮説は破棄される。私と市場の主な違いは、市場の場合は、市場の参加者が何が起っているのかわからないまま試行錯誤を行なっているのに対し、私は意識的にそれをしているのである。」

我々は人間以前の生物ということか!

関連図書ガイド
ソロスのウエッブページを発見したのでご紹介 「http://www.soros.org
帰納の問題についての解説は、内井惣七「科学哲学入門」世界思想社

http://www.law.keio.ac.jp/~popper/review3

 次へ  前へ

雑談専用9掲示板へ



フォローアップ:


 

 

 

  拍手はせず、拍手一覧を見る


★登録無しでコメント可能。今すぐ反映 通常 |動画・ツイッター等 |htmltag可(熟練者向)
タグCheck |タグに'だけを使っている場合のcheck |checkしない)(各説明

←ペンネーム新規登録ならチェック)
↓ペンネーム(2023/11/26から必須)

↓パスワード(ペンネームに必須)

(ペンネームとパスワードは初回使用で記録、次回以降にチェック。パスワードはメモすべし。)
↓画像認証
( 上画像文字を入力)
ルール確認&失敗対策
画像の URL (任意):
投稿コメント全ログ  コメント即時配信  スレ建て依頼  削除コメント確認方法
★阿修羅♪ http://www.asyura2.com/  since 1995
 題名には必ず「阿修羅さんへ」と記述してください。
掲示板,MLを含むこのサイトすべての
一切の引用、転載、リンクを許可いたします。確認メールは不要です。
引用元リンクを表示してください。