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(回答先: 竹中VS後藤田(こりゃ見物ですね。) 自民党の内部抗争本格化? 投稿者 hou 日時 2004 年 7 月 26 日 12:53:45)
>竹中氏は「郵政改革で政府部門の効率化が進むだけでなく、民間部門も活性化され、
>雇用を含めて経済全体が押し上げられる」と民営化の意義をあらためて強調した。
竹中氏の「経済の論理をまったく無視した間違った議論だ」の傍証なんだろうが、そうなるかどうかは米英の歴史的経験に学ぶべきである。
米国は、レーガン政権のサプライドサイド政策で80年代中期に航空業界の規制緩和が実施された。
航空業界の規制緩和を受けて、竹中氏が言うように、格安航空運賃の新興航空会社が林立し、米国経済をある程度活性化した。
航空会社を興せば、リースであれ航空機に対する需要が増加し、乗務員の雇用が拡大し、空港の運航施設利用料支払いが増加する。そして、航空運賃が安くなったことで利用客も増加したので、観光関連産業も恩恵を受けた。
しかし、それから数年後の米国航空業界は、アメリカン航空・ユナイテッド航空・デルタ航空の寡占構造に移行した。
林立した格安運賃航空会社は相次いで倒産した。それらのみならず、イースタン航空・パンナム航空・コンチネンタル航空・ノースウェスト航空・USエアーといった大手航空会社も倒産した。
そして、格安運賃航空会社向けにリースされていた航空機は、その多くがネバダの砂漠に“保管”されるようになった。
結局、「航空規制緩和」は、新興格安航空会社の株式に投資した人たちや新興格安航空会社に債権を持つ人たちが膨大な損失を被り、生き残ったメガ航空会社が採算を重視する運航体系に移行することで利用客の利便性も大きく悪化し、生き残った航空会社の従業員の就業条件も悪化するするかたちで終結した。
「航空規制緩和」は、投資銀行や航空機メーカーが一時的に利益を手にするだけだったのである。(航空機メーカーは、その後、反動不況で大量のレイオフを行ったのだから、利益を手にしたのは投資銀行だけだったと言えるかもしれない)
なぜ、このような結末になったのかを簡単に説明する。
端的には、航空運送の供給力増加ほど航空運送に対する需要が増加しなかったからである。
米国勤労者の実質所得は、70年代からほとんど増加していない。実質可処分所得は同じだと考えればわかりやすい。
たとえば、100の需要に100の供給力という需給構造で航空会社がそこそこの利益を上げているとする。
それが、「航空規制緩和」で需要は110に増加したが供給力も150に増加した。しかも、需要が110に増加した要因は格安運賃だから、金額ベースで考えれば、需要が90に対し供給力が150になったとも言える。
既存航空会社も、シェアを高めるか従業員の給与を下げなければ、従来の利益を確保できない状況になったのである。
新興格安航空会社は限られた路線で運航しているから、路線規模や財務力そして資金調達力に優る航空会社は、従業員の給料を抑えながら、競合する路線が赤字になることを覚悟で値下げ競争を仕掛ける。
この競争の過程で、新興航空会社はバタバタと倒れ全滅した。
もしも、米国の勤労者実質所得が増加基調にあったなら、航空需要は90ではなく130とかになり、ある程度の新興航空会社が生き残ったかもしれない。
しかし、それでも、米国の勤労者実質所得が一定なら、仮に航空需要が130に増加すれば、自動車や家電など他の需要がその分減少するから、他の業種で倒産や賃下げが起きることになる。
フロー(所得)の増加がないままの競争激化は、共倒れを生じさせるだけなのである。
英国も、ブレア政権が国鉄の「民営化」を行ったが、その後も収益は良化せず事故が多発するようになり、今では、「再国営化」が模索されている。
郵便事業も民営化されたが、サービス劣化や値上げそして郵便局をショップ化することで収益を向上させている。
サービスの劣化や値上げは利用者や他の業種の損失だが、郵便局のショップ化も地域商店の経営を圧迫する。
やはり、フロー(所得)の増加がないままの収益力向上は、他の業種の経営を圧迫するだけなのである。
「民営化」されたドイツポスタルも、宅配業者を買収するなど多角化を通じて収益力を上げようとしている。
経済成長(フロー(所得)の増加)がないなかで収益力を上げようとしたら、パイの取り分を増加するしかなく、その分ほかの企業や家計が圧迫を受けることになる。
今の日本は、経済成長が名目でマイナスという経済状況である。
日本の郵政事業が民営化され収益力を上げようとしたら、サービスの低下(人員削減)や料金値上げを実施したり、郵便局のショップ化など多角化を図るしかない。
サービスの低下(人員削減)は、可処分所得の減少を通じてGDP総需要の減少につながる。
料金の値上げも、他に消費できる可処分所得を減らし、他の業種の経営を圧迫する。
郵便局のショップ化は、郵政事業には光明であっても、地域の小商店の経営を圧迫する。
郵便事業の参入を認めれば、宅配業者が参入する可能性はあるが、雇用の増加はほとんどなく、追加投資はせいぜいポストの新設くらいであろう。(“切手”は、コンビニなどに委託して販売するはず)
ご存知だとは思うが、郵便物の取り扱いは減少している。(金額ベースで年率3%の減少)
新規参入は、「民営化」された郵政公社が値上げで収益力を上げる余地を失わせる。
そして、新規参入宅配業者が郵便物の取り扱いを拡大すれば、「民営化」された郵政公社は、採算性を維持するため、サービスの低下(人員削減)や“ショップ化”を図るしかない。
営業効率のいい都市部は価格競争になる可能性も高く、都市部で「民営化」された郵政公社が敗北すれば、不効率の地方部が事業の中心になるので、サービスの低下(人員削減)は激烈なものになるだろう。
完全雇用というより人手不足で、郵便物の取り扱い量も拡大していた高度成長期に、郵政事業を民営化していたのなら、民間に活動力を提供する役割を果たしたり、効率的な集配業務の開発にもつながることで、経済発展に貢献した可能性が高い。
しかし、フロー(所得)の増加も郵便物の取り扱い量の拡大もない「デフレ不況」下で郵便業務の「規制緩和」を行っても、首切りにつながり、それが公的社会保障負担の増加をもたらすだけなのである。