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(回答先: プーチン政権の内実と日ロ関係:「シベリアの呪い」を超えて【力の意志 5月号】アメリカがジレンマに陥るのを待っているロシア 投稿者 処方箋 日時 2004 年 5 月 10 日 15:41:29)
スペシャル対談:木村汎(拓殖大学海外事情研究所教授) VS 増田俊男
[力の意志2004年5月号 公開記事 No1-2]
▼〔木村〕
プーチンは確かによくやっており、今度も71%の得票を得て再選されました。だが、これが彼のピークなのではないかと観測もある。静観することでアメリカを焦らす戦術に言及されましたが、そうとばかりではない面もあります。
アメリカは今年が大統領選です。民主党のケリー候補の著しい猛追は報道されている通り。伝統的に民主党は人権問題について共和党より敏感です。ホドルコフスキー逮捕のように三権分立がまだ確立されていない。チェチェン戦争において無辜の市民まで殺戮されている。ロシアが抱える人権問題に対して民主党は厳しく批判するだろうと予想されます。
大統領選を前にして共和党もロシアに対して批判的にならざるを得ません。昨年10月に訪ロしたパウエル国務長官も「ロシアはやはりわれわれとは体質が違う国だ」という発言をしています。アメリカとの関係がギクシャクしていて、ロシアが動くに動けない。
国内に目を転じると、プーチンは先に述べたエコノミスト、シラヴィキ二派のバランスをいつまで取っていけるかという問題もあります。また、貧富の差が拡大しています。選挙期間中に「所得倍増」論を国民に訴えかけましたが、何らの具体策も明示していませんから、おそらくうまくいかないでしょう。成果が見えてこなければ、プーチン人気にも翳りが出てくる。そうなると、ロシアがいま冷たく当たっている日本との関係が一つの切り札になってくる可能性もあります。
東シベリアのパイプライン競争では、日本が中国に競り勝つようになってきました。この辺で日本もロシアに対して静観の態度を取る、すなわち、あまり物欲しそうな態度を見せないのも一つの手でしょう。それでないと「パイプライン問題で多大の恩恵を受けるのは日本だ。しかもこれはビジネスであり、そこに政治・外交問題を持ち込んで欲しくない」これがロシアの態度でしょう。領土問題などは霞んでしまう恐れがある。
その意味で、小泉首相がロシアにエネルギー庁長官を5回も送ったのは間違いです。「日本は領土より石油」という間違ったメッセージをロシアばかりか世界に送ることになってしまった。「パイプラインは政治・外交的環境を好転させる手立てに過ぎない」という正しいメッセージをロシアに認識させる。そのためにも、また、アメリカ大統領選の行方を睨む必要もあり、この一年は日本にとって非常に重要な年となりましょう。
▼〔増田〕
ロシアが漁夫の利を得ることも考えられます。金融市場の現状を一言で言えば、ドルとユーロの熾烈な戦争です。マーケットではユーロが上昇する一方、ドルは下落しています。昨年10月、その状況を見計らって、プーチンは石油の決済通貨をユーロにすることを匂わせる発言をしています。これによって一気にユーロが跳ね上がった。これはアメリカに対するプーチンのデモンストレーションだと私は捉えています。
つまり、数カ月前までアメリカのプロパガンダが奏効してEUは憲法制定でゴタゴタが続いていましたが、先日のスペインのテロでまとまりを見せてきた。この状況下でプーチンは石油決済をユーロでするというカードを握っている。これはアメリカにもEUにも切れるカードなのです。
金融市場ばかりか、イラクにおいても混乱が続き、欧米の対立がはっきりしてくるとなると、石油の市場価格は上昇することになる。黙っていても儲かるのはロシア。私が言うロシアの漁夫の利とはこういうことです。
▼〔木村〕
エリツィンがソ連を崩壊させたのは早計だったという声が、ロシアの民族派ではかなり大きい。しかし、再統合は不可能です。ただし、ロシアが有志の国々―例えばウクライナ、ベラルーシ、カザフスタンなど―との間でゆるやかな連合を作る。そうなるとプーチンの任期も自然と伸びる。2期目の4年を終わっても、ロシアとベラルーシの連合体を作れば、プーチンはその新組織トップとなる。彼の部下には民族派が多いから、そうした展開も考えられます。
しかし、すでにそれらの地域にアメリカが楔を打っています。中央アジアに軍事基地を作っている。ロシアがもう一度ちょっかいを出そうとしている国々にアメリカは進出しています。ロシアの周辺地域においても米ロの関係は今後ギクシャクしていくでしょう。
http://www.sunra-pub.co.jp/bnumber/0405/0405/0405_kiji1.htm