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http://www.chibalab.com/news_otoshiana/documents/20040309.htm
ガリバーたちが唱える「創造なき破壊」 No.26【2004年3月9日】
恐るべきシュムペータ経済学を信仰する小泉・竹中コンビ
今日のデフレ経済下で国民のストレスが風船のように膨らんで、今にも破裂しそうな状況である。それ故に、単純に解決できないようなものはすべて敬遠されてしまう。市場経済における消費者にとって、複雑な仕組みや制度はもちろん煩わしいだけだし、忍耐を必要とする日本文化の収得や、理解しにくい世の中の仕組みや政治のことなんか、頭の中からすっきり排除して、軽くてスマートに生きることだけに専念しようとしている。マクドナルドやウォークマンが象徴するような、ポップでファーストフード的な生き方である。主流メディアの中からひっきりなしに流れてくるコマーシャル的なライフスタイルであり、時流の市場経済的生き方である。
市場経済主義者であるマクドナルドやナイキやマイクロソフトやディズニー等の世界的大企業は、「民主化」と「規制緩和」と「小さな政府」を、世界共通の正義として、自分たちの仲間である様々なメディアを駆使して全世界に向かって布教して歩いている。(ちなみにマクドナルドの日本に於ける店舗数は、全世界の中でダントツの2位で、約4000店舗もあるのだ。もちろん 1位はアメリカ本土である。)
それらを一気に広めるために利用されたのがシュムペータの「創造的破壊」というかなり怪しい経済理論である。そのシュムペータの理論を後ろ盾に、橋本首相は「ビッグバン」という金融改革を断行して、日本の株式市場と企業がヘッジファンドに好きなように乗っ取られたし、いまは「構造改革」という名のもとに小泉・竹中コンビによって、“財政緊縮政策”という内需破壊政策が実行されている。
「構造改革」の行き着く先は、国内の需要不足に拍車をかけ、結果的にさらに輸出依存を強めることになる。そして輸出増加によって為替はしだいに円高になり、なお一層の「経済縮小」が強いられることになる。それの繰り返しである。シュムペータの理論によると、不況の中で次のイノベーターが現れ、新たなイノベーションを起こすというのがシュムペータのシナリオである。つまり、「不況は老朽化した非効率な企業を市場から退出させるために有益である。古いものを徹底的に清算した後に、新しいものが創造される」という主張である。これが有名な『創造的破壊』である。
したがって“財政政策”などで景気を支えるような行為は、この市場の新陳代謝を阻害することになり、厳しく慎むべき政策ということになる。このシュムペータ教の理論を熱く信仰しているのが小泉・竹中コンビなのである。もちろん彼らのほかに主要メディアや若手二世政治家や経済同友会等が、いっせいにこのカルト理論を援護したために、私たち多くの国民も騙されてしまったのである。
現実がどうなったかというと、経済が不況に陥ると、生産性の高い企業が残るということにはならなかったのである。たとえ生産性が劣る企業であっても、政治的に金融機関と癒着している大企業だけが逆に生き残って、金融基盤のしっかりしていない新興インターネットビジネスやベンチャー企業が真っ先に破壊され、淘汰されていったのである。この不況の中でもあえて新しく開業できる企業は、あくまで資金力の豊富にある企業ばかりで、決して革新性のあるベンチャー企業ではなかったのである。
つまりシュムペータの理論はあくまで机上の理論であって、インチキだったのである。その確たる証拠が、日本の今の経済状況である。バブル崩壊後、日本の開業率は低迷したままである。長い間、廃業率が開業率を上回っている。不況が続けば、イノベーターが現われるというシュムペータ教の御神託とはまったく正反対の結果である。シュムペータ教が本当に正しいのであれば、いま日本で開業ラッシュが起こっていても不思議ではないのである。
振り返ってみると、確かにアメリカでベンチャー・ブームが起きたのは、ITバブルの真っ最中のときだった。ようするに、景気が良い時にこそ、革新的な企業の参入が増えてくるのである。景気が良くなって私たち国民が陽気になって浮かれてこそ、初めて投資が行なわれ、新たにビジネスにも挑戦してみようか、というような気分になるのではないか。いったん景気が悪くなってしまうと、何もかもが冷え込んでしまうのが現実である。不況のままに放置した方がいいというシュムペータ経済学が正しいというなら、地方の経済はとっくに立ち直っていなければならない。あくまで現実は不況になればなるほど、リスクをとるものが誰もいなくなり、企業はお互いを守るために合併し、新参者の入る隙間はいよいよ少なくなってしまう。
つまり日本の問題は、こんな馬鹿げたシュムペータ経済学が、小泉首相を含めて、マスコミに登場する経済学者やエコノミスト等の御用学者たちの手によって、堂々と、いまだにさもまっとうな理論であるかのように私たち国民に向かって語られ続けていることである。
小泉政権が成立してもはや3年が経過した。彼が行なってきたことを一言でいうなら、『創造なき破壊』であり、世の中の「中流階級」を破壊し、ブッシュのようにマスコミを操ることで高い支持率を演出し、私たち国民を将来不安に陥れたことである。小泉政権が推し進めた強引な不良債権処理によってデフレ不況と雇用破壊が一気に進行して、年 3万 2000人以上の自殺者が出ている。施政方針演説の中で、「雇用を 200万人創出した」とおっしゃっているが、実際には正規労働者は、小泉政権が発足してからの 2年間で 196万人も減少しているのだ。
その一方で、非正規労働者は逆に 119万人も増加している。さらに 2003年6月に労働者派遣法が改悪されて、これまで約45万人だった派遣労働者が、この改悪で急激に増えることはほぼ間違いない。リストラによって失業者が増えることで、企業内で確実に長時間労働が増え、その結果として過労死が倍増している。
このような雇用破壊を容赦なく進める小泉政権は、そればかりか失業保険給付の削減も行なっている。2003年の雇用保険法の改悪によって、5月から失業手当給付の削減が行なわれた。失業手当は、従来は賃金水準の60〜80%だったが、50〜80%へと引き下げられた。給付日数も自己都合は最大180日が150日へと30日の短縮となった。また失業対策に向けたワークシェアリングへの政府の姿勢は、まったく前向きではない。勝手に自殺でもして償却してくれたほうが、政府としてはむしろその方が助かるといった感じである。
もちろん社会保障についても、財政難を理由に、負担増と給付削減がおこなわれる。医療保険は2002年7月に改悪が行なわれ、70歳以上の窓口負担が、定額制から1割〜2割負担へと増大した。さらに2003年4月からは、窓口負担が2割〜3割へと引き上げられた。同時に、保険料負担も、月給だけでなくボーナスからも同じ割合で保険料を徴収することとなる。
そもそもの税源不足は、不況のせいというよりは、自民党政権が所得税の累進課税を緩和して高額所得者優遇政策を採用したことと、大企業の法人税率を引き下げたことに起因している。そして自治体への財源である地方交付税や補助金の削減によって、地方を切り捨てる政策を巧妙に推し進めている。
いわゆる「三位一体の改革」は、わずかな税金の移譲をエサにすることで、補助金や地方交付税を削減しようとしているのである。補助金は地方自治体の自治の拡大と自立の観点から削減すべきものではあるが、中央政府の地方の支配の権限の源である補助金をある程度維持することで、基本的には中央の赤字のツケを地方に回そうという政策に他ならない。
財政難に陥っている地方の自治体を、合併特例法のアメでうまく誘っておいて、効率化の名のもとに地方の財政削減を無理やり強要している具合である。ようするに小泉政権は、弱者を容赦なく切り捨て、アメリカや国際金融財閥や大企業等の強者に徹底的に追従する政権なのである。