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核燃料サイクル:難問すべて先送りの「路線維持」決定 [毎日新聞]
http://www.asyura2.com/0403/genpatu2/msg/510.html
投稿者 あっしら 日時 2004 年 11 月 02 日 03:42:39:Mo7ApAlflbQ6s
 

(回答先: 原子力委策定会議:核燃料サイクル政策を維持する方針決定(毎日新聞) 投稿者 シジミ 日時 2004 年 11 月 01 日 19:38:24)


 原子力開発利用長期計画の策定会議(議長=近藤駿介原子力委員長)は1日、使用済み核燃料を再処理する核燃料サイクル路線維持の方針を決めた。しかし、青森県六ケ所村に建設中の再処理工場の能力では処理しきれない使用済み核燃料の処理方法は、決まっていない。再処理で生じるプルトニウムの使い道も明確ではなく、多くの課題が残っている。電力業界や青森県には歓迎の声がある一方、コスト負担への懸念や核燃料サイクル政策への不信感も根強い。

 ◆処理能力越える量やプルトニウムの扱いも未定

 近藤委員長は11回目となる1日の会合で、核燃料を地中に埋める直接処分と再処理のどちらを選択するか、出席した22人の委員に意見を求めた。

 策定会議は32人で構成される。多くは電力事業者や原子力研究者、原発立地自治体の長ら「原子力村」とも呼ばれる原子力関係組織の代表だ。明確に直接処分を主張したのは脱原発を唱えるNPO(非営利組織)「原子力資料情報室」の伴英幸共同代表だけだった。

 注文はあった。山地憲治・東京大教授は「現行は再処理を維持するにしても、将来的に直接処分の道筋をつけることが重要だ」と、全量再処理からの転換の明確な位置付けを問題提起した。吉岡斉・九州大大学院教授は「政策案が二つしかなく、選択の幅が狭い」と論議の進め方に疑問を投げかけ「電気事業者が自主的に再処理と直接処分のいずれも選べるようにする」とする案を出した。

 しかし、ほとんどの委員が「日本では直接処分地の選定が極めて困難」(児島眞平・福井大学長)「再処理は長期的なエネルギーの安定供給に貢献できる」(藤洋作・電気事業連合会会長)などと、再処理路線を支持した。近藤委員長は直接処分の支持者が伴代表以外にいないことを確かめ、再処理路線に絞って論議することを宣言した。

 しかし、全国の原子力発電所から出る使用済み核燃料は年間約1000トン。建設中の再処理工場の処理能力は年間800トンで、全量再処理はできない。事務局案では、処理能力を超える分について「2010年ごろから検討を開始する」と問題を先送りした。

 再処理維持の場合、余剰プルトニウムの問題もある。日本は国内外にプルトニウムを計40トン保有している。プルトニウムを燃やす高速増殖炉は実用化のめどが立たず、既存の原発で使う「プルサーマル」計画も、関西電力美浜原発3号機事故などの影響で遅れている。使うあてのないプルトニウムがたまっていく可能性が高い。伴代表が「利用計画は不透明だ」と指摘したものの、会議ではほとんど論議されなかった。【足立旬子】

 ◆電力業界はコスト回収を懸念

 再処理維持の合意について、電力業界は「理解が広がった」と歓迎している。しかし、業界の自由化の進展と電力需要の伸びの鈍化で、各社の経営環境は厳しくなると予想されるだけに、100年近くに及ぶ長期事業のコスト回収を巡って、懸念もくすぶっている。

 業界は一貫して再処理維持を主張してきた。六ケ所村の再処理工場が稼働しなければ、使用済み核燃料の置き場がなくなり、最悪の場合は原発停止に追い込まれかねないためだ。勝俣恒久・東京電力社長は1日の策定会議で、「再処理はエネルギーの安定供給や環境負荷の低減に優れている」と訴えた。

 一方、電力10社で作る電気事業連合会は昨年、再処理工場が40年稼働した場合の費用を18兆8000億円と試算した。うち15兆円は電気料金に上乗せすることが政府に認められたが、残りは業界の負担になる。これには事故で操業費が膨らんだ場合は入らず、工場停止後三十数年かけて廃棄する費用など不透明な要素もある。負担はさらに重くなる可能性が大きい。

 負担増の分を、電気料金値上げという形で消費者に転嫁することには、強い反発も予想される。電力小売りの自由化は、05年度から総需要の6割に拡大され、07年度から全面自由化論議も始まる。新規参入に伴う競争激化で、東電は10月から平均5.21%値下げを実施した。業界では「再処理事業は100年に渡るが、10年後でも業界がどうなっているか分からない。自由化と原子力のより深い論議が必要だ」との声も出ている。【高橋秀郎】

 ◆安堵と不安の六ケ所村

 六ケ所村の古川健治村長は「一定の方向性が示され、喜んでいる」と、方針決定に安堵(あんど)の表情を浮かべた。

 再処理工場では劣化ウランを使ったウラン試験の実施が予定されているが、燃料貯蔵プールの漏水や再処理コストの試算隠し問題などで、試験の前提となる県・村と事業者との安全協定が締結できない状態が続いている。県議会は安全協定の締結容認が大勢を占めており、県は年内にもウラン試験実施にゴーサインを出す見通しだ。

 しかし、県幹部が「六ケ所で処理できない使用済み燃料をどうするのか。第2再処理工場や中間貯蔵施設の位置付けなどを見極める必要がある」と話すように、不安材料も残っている。

 一方、市民団体「核燃料廃棄物搬入阻止実行委員会」の平野良一共同代表は「再処理してもプルトニウムの使い道がないのに、なぜ今、再処理方針を決めなければいけないか。拙速だ」と反発を強めている。【湯浅聖一】

 ◆米国は直接処分 仏露は再処理

 世界では、再処理と直接処分の両路線がきっ抗している。最大の原発大国・米国が全量直接処分を選択する一方、フランスやロシアは全量再処理路線を取っている。

 欧州では80年代以降、再処理路線の見直しが進んだ。ドイツは89年に直接処分への転換を決定、国外に委託していた再処理は来年7月で終える。英国では、再処理するかどうかは、使用済み核燃料の保有者の判断に任されている。

毎日新聞 2004年11月2日 1時29分

http://www.mainichi-msn.co.jp/shakai/wadai/news/20041102k0000m040176000c.html

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