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(回答先: 96年福岡チョモランマ登山隊の「見殺し」行為をどう評価します? 投稿者 あっしら 日時 2004 年 4 月 28 日 18:38:30)
著者の意図や見解に対するコメントは、↓の「私の見解」で代えさせていただきます。
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『私物化される世界』の著者であるジャン・シグレールさんは、スレッドで引用した日本登山隊の出来事を取り上げる前ぶりとして、「これまで見てきたように、略奪者たちのふるまいは不道徳に満ち満ちている。これは何に由来するのか?どうしたら説明できるだろうか?」と書いている。
そして、スレッドで引用した「このような事情を受けて、二人の日本人登山家は弁明のために記者会見を開いた。探検のスポークスマン、二十一歳の重川英介はこう説明する。「私たちは自力で頂上に登るのです。登攀のためにあらゆる努力を傾けます。疲労困憊していて、助けることができなかった。八〇〇〇メートルのかなたでモラルを発揮することは不可能です」」の後には、次のように論を進めている。
P.91〜92
「 これは、グローバル化した資本の略奪者たちが日頃経験する具体的な状況を彷彿とさせる談話である。ある一定の受注量を超えると、金融帝国のボスたち、すなわち多国籍企業の経営者たちはもはやモラルのある行動をとることができなくなる。つねに前進すること、生き抜くこと、帝国をつねに拡大すること、これらの至上命題が完全にモラルの欠けた行動を要求する。
多国籍企業のボスたちが手にする莫大な収入のすべてがブラッド・マネーに由来するわけではない。いちばんの高給を得ている経営責任者が、実は折り紙つきのクビ切り屋にすぎないことも少なくない。経営監査役会は、経営責任者が数千の従業員を解雇し、それによって生産コストを削減し、「スリム化した」企業の株式相場を急回復させたことに報いるのである。これらの略奪者は社会ダーウィニズムを実践していて、成功を収めている。多くの例のなかからいくつかあげよう。
一九九七年、イーストマン・コダックの経営責任者、ジョージ・フィッシャーは世界規模で一挙に二万人を解雇した。その報酬は、六〇〇〇万ドル相当のイーストマン・コダックの株券だった。
サンフォード・ワイルは多国籍企業、トラベラーズの経営責任者である。一九九八年にライバルであったシティコープとの合弁を成功させた。数え切れないほどの多くの国々の男女従業員一万人がいきなり解雇された。この年に、サンフォード・ワイルは報奨金として二億三〇〇〇万ドルもの金をせしめている。
大物の略奪者たちのシニシズムと不道徳は、酸性雨のようにピラミッドのてっぺんから内部へと浸透してきている。文明というのは海に浮かぶ船のようなものである。文明には満載喫水線がある。すなわち船にはそこまでは積荷の過重で沈むことはないという限界がある。ヨーロッパの商品社会の満載喫水線は最近の一〇年間に著しく低下してしまった。
支配者の強欲はその取り巻きたちにも伝染して、彼らの脳を汚染している。今日では、多くのボスたちが嬉々として自分の企業を食い物にしている。彼らの行動はまるで百年戦争時代の追いはぎ強盗のようだ。当時、彼らは同行者たちからすべてを巻き上げたのである。」
著者の紹介:
ジャン・ジグレール
1934年、スイスのベルン生まれ。ベルン、ジュネーブ、パリ、ニューヨークで社会学を専攻。弁護士。
1999年まで30年以上にわたってスイス連邦議会下院議員を務める(社会党)。
2000年5月までジュネーブ大学社会学教授。
現在は国連人権委員会の「食糧に対する権利」特別報告者。
1962年から1965年まで国連職員として今後に滞在して以来、アフリカの文化・社会・経済に深い関心を寄せる。数多くの社会学関係の直さのほかに、近年は告発の書が多い。
おもな著書に、『スイス銀行の秘密 ―マネー・ロンダリング』(河出書房新社)、『世界の半分が飢えるのはなぜ?―ジグレール教授がわが子に語る飢餓の真実』(合同出版)など。