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(回答先: 週刊文春:異議退け、販売差し止め支持 東京地裁 [毎日新聞] 投稿者 あっしら 日時 2004 年 3 月 19 日 23:10:27)
決定の主な内容は次の通り。
1 主に被保全権利に関する問題について
(1)本決定における問題点
プライバシー権は他人に知られたくない私的事項をみだりに公表されない権利を含むもので、極めて重大な保護法益であり、その侵害行為の差し止めを求めることができるものと解するのが相当である。しかし、プライバシー権が絶対的な権利でないことはいうまでもない。
表現の自由は、重要な憲法上の権利であり、とりわけ公共的事項に関する表現の自由は、特に重要な憲法上の権利として尊重されなければならない。しかしながら、あらゆる表現の自由が無制限に保障されているのではない。
(2)出版物の販売等の事前差し止めの要件
ア 最高裁昭和61年判決
事前差し止めは原則として許されず、「その表現内容が真実でないか又はもっぱら公益を図る目的のものでないことが明白であって」かつ「被害者が重大にして著しく回復困難な損害を被るおそれがあるとき」に限り例外的に許される。
プライバシーは他人に広く知られるという形で侵害されてしまった後では、それ自体を回復することは不可能となる。プライバシー保護のため侵害行為を事前に差し止めることは、他の方法をもって代替することができない救済方法であるという側面がある。本件は事前差し止めを認めない限り救済方法がないという特質を有する。プライバシーについては、表現内容が真実であることは表現行為を許容する方向に働く要素とはなり得ない。
本件は発行部数70万部を超える全国誌の販売等の差し止めを求める事件で、差し止めをより慎重にすべき事情ともいえないではない。反面、販売等によって債権者が受ける損害の重大性も発行部数が大きくなれば増大することが明らかである。
イ 最高裁平成14年判決
同判決は「公共の利益に係わらない被上告人のプライバシーにわたる事項」を表現内容に含む小説の差し止めを認めた。
(3)本件における差し止めの可否
ア 本件においては、債権者らの私事に関する事柄が「公共の利益に関する事項」に当たるとはいえない。著名な政治家の家系に生まれた者であっても、政治とは無縁の一生を終わる者も少なくないのであり、そのような者の私事が公共の利害に関する事項でないことは明らかである。
イ 本件記事を「専ら公益を図る目的のもの」とみることはできないといわざるを得ない。本件記事を熟読しても、私人の私事に関する事項であっても特別に専ら公益を図る目的で書かれたものであると認めることはできない。
ウ 他人に知られたくないということに関しては個人差が大きく、出版物の販売等の事前差し止めが表現の自由の制約を伴うことにかんがみれば、単に当事者他人に知られたくないと感じているというだけでは足りず、問題となる私的事項が、一般人を基準にして、客観的に他人に知られたくないと感じることがもっともであるような保護に値する情報である必要がある。
この点、事実は純然たる私事に属することであって、一般に他人に知られたくないと感じることがもっともであり、保護に値する情報であるというべきである。
本件記事は、政治家の親族であることを前提とした活動もしておらず、純然たる私人として生活してきた債権者らの私的事項について、毎週数十万部が発行されている著名な全国誌を媒体として暴露するものである。全くの私人の立場に立って考えれば、私的事項を広く公衆に暴露されることにより債権者らが重大な精神的衝撃を受けるおそれがあるということができる。
2 主に保全の必要性に関する問題について
本件雑誌として印刷された約77万部のうち、約74万部は既に債務者の占有を離れているところ、後者の約74万部のうち、一部は既に一般購読者に販売されているものの、残りは取次業者又は小売店等の占有下にある。このような事情のほか、原決定の主文が債務者が第三者に何らかの指示をすることまでも命じているものとは解し難い表現をとっていることも考え併せると、債務者から取次業者に対して本件雑誌の引き渡しがあったときは、原決定にいう「販売」が完了しており、本件雑誌が取次業者から小売店等を経て一般購読者に流通していく過程は、もはや原決定による差し止めの対象外の現象であるとみるのが相当である。
原決定は、現時点においては、債務者の占有下にある約3万部について、取次業者その他の者への販売、無償配布又は引き渡しを差し止める限度において、実際上の存在意義を有するにとどまる。
しかしながら、債務者の占有下にある約3万部の雑誌が出荷され、一般購読者に販売されて、その読者が増えれば、それに伴ってプライバシーの侵害も増大するものというべきである。その販売等の差し止めが解かれることによるプライバシー被害は、観念的なものではなく、著しく、かつ回復不能なものであることが明らかであるというべきである。
よって、現時点においても、債権者らの申し立てに係る仮処分の必要性は失われていない。
以上の次第で、債権者らの仮処分命令の申し立てはいずれも理由があり、これを認容した原決定は相当であるから、これを認可する。
[毎日新聞3月19日] ( 2004-03-19-21:53 )
http://www.mainichi.co.jp/news/flash/shakai/20040320k0000m040090002c.html