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Re: ブッシュの世界支配戦略とベクテル社 政権変われど、ベクテル変わらず
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投稿者 TORA 日時 2004 年 3 月 10 日 09:54:42:CP1Vgnax47n1s
 

(回答先: ブッシュの世界支配戦略とベクテル社 投稿者 TORA 日時 2004 年 3 月 10 日 09:49:02)

「ブッシュの世界支配戦略とベクテル社」 江戸雄介著(1990年刊)より

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 政権変われど、ベクテル変わらず
 ニクソンよりブッシュまで、アメリカの大統領はUSA国内だけでなく、アメリカが世界の安全保障守護者としての立場でグローバルな戦略を展開してきた。
 それは、必然的に、アメリカが強大な軍事力の必要維持となり、アメリカの軍事産業への巨大ニ-ズとなって表れて来る。
 一方に於て、ベクテル社のシュルツ社長や最高顧問だったワインバーガー前国務長官の存在がどんなに、ベクテル社に大きなインパクトとなろうことは、何人にも想像される所であろう。
 ベクテル社は、朝鮮動乱で基礎を作り上げたが、大きく成長を遂げたのは、ベトナム戦争であった。
 ニクソンが大統領に就任した一期目こそ正にベクテル社が成長を開始した時と言えよう。
 「ベトナム戦争」
 これは、正に二十世紀アメリカの悲劇であろう。
 それまで、アジアの旗手に止まっていた日本がこの戦争の間に成長を遂げ、二十年後の今日アメリカに代わって、世界金融の旗手になろうとは、トンキン湾事件の一九六四年に誰が想像したであろうか!

 暗殺されたJ・F・ケネディは、マリリン・モンローのナゾと共に、ヒロイン化されているが、彼は決して平和愛好者ではない。筆者も見たダラスのケネディ記念館は、あくまで、美化された商品と同じである。
 世間の人は皆、コマーシャルに毒されてケネディの実体を知らない。
 ベトナム戦争はまるでニクソンが主役の如く思っている人が多いが、ベトナム戦争は、J・F・ケネディがマクナマラ国防長官を矢面に一九六二年に、内戦に介入したのだ。
 それは、一万六千人の軍事顧問団にも達するスケールで行われた。三十万人の兵士の命が失われたのだ。
 その後、ジョンソンが、トンキン湾事件を起こして拡大したのを、ニクソンが引き継ぎ、カンボジアまで手を拡げた後に、一変して、大衆受けを狙ったニクソンがキッシンジャーを使った派手な演出方法で凍結させた。
 ニクソンは、ウォーターゲートのつまらぬイメージで、悪役の如く思われているが、一方に於て、米中国交回復も演出して平和にも少しは貢献しているのだ。

 ニクソンは、決して悪役ではない。功罪半々と言えよう。
 このニクソン、ジョンソン時代のベトナム戦争で、アメリカは、折角獲得した国富を使い果たすのであるが、ベクテル社は、この時代に共和党と深い連系を遂げて大きく伸びているのだ。
 戦争は、民衆には増税と不幸を生み、ヒッピーを誕生させ、国家財政の黒字を喰いつぶすモンスターであるが、一方に於て、古くから戦争商人達を巨大に肥らせるビジネスだったのである。

 一般の人は、戦争で巨利を得るものは、兵器産業や輸送機関、軍需物資製造業のみと考え勝ちであるが、より巨利を得るのは、軍事コンサルタントや商社であることに全く気付かない。
 日本でも、古くは、日露戦争での三井物産や、日中戦争の三菱や三井の巨利が、造船業や兵器産業よりも遥かに大きいことを考えてみればよく判る。三井、三菱は戦争によって今日の基礎を確立したのだ。
 然も彼らは不死鳥の如く平和時にも成長するのだ。
 アメリカには、巨大商社は存在しない、と在来考えられていた。
 ベクテル社こそ、アメリカを代表する「ザ・商社」なのだ。
 その商社ベクテルが、アメリカを疲幣させたベトナム戦争で、暴利を得て巨大化していく姿は、日中戦争の三菱商事と鹿島建設を併せたものとして、オーバーラップして考えれば、よく判ろう。
 どんむに暴利であったか・・・。
 その一部を分析して見ると、
 共和党政権とベクテル社の関係は、戦争ビジネスのみではない。
 平和時に於ての政治的コンツェルンとしても大きく活躍している。
 USA国内でも、主なる空港の新設・改修は殆どベクテル社の独占なのである。
 (例 ロサンゼルス空港・ラスベガス空港・ダラス空港・・・他)

 然し何と言っても、ベクテル社が真に巨大化したのは、産油国のリーダーたる、サウジアラビアに進出してからだ。
 サウジとの関係は、創業者、ステファン・ベクテルが、ファイサル国王(後に暗殺された名君)の信頼を得たことからとされている。
 ファイサル国王は、筆者が中東で最も尊敬する名君であり、暗殺の報を得た時には、深いショックを受けた。
 ファイサル国王こそは、中東に近代を実現させた名君であり、中東を団結させ、有名な「石油戦略」を作った不世出の国王であるが、そのことは拙著「イラン、イラク戦争はメジャーの謀略」で詳しく述べてあるので、ここでは省略する。

 オペック(OPEC)の石油戦略が信じられない程の巨利を湾岸産油国にもたらし、一九七四年〜一九八○年代に、湾岸産油国になだれ込んだ「オイル・ダラー」は世界マネーの五〇%に達し、さまざまな神話的成金を産みだしたが、その最も代表国はサウジ、イラン、イラクで、ベクテルは、イランにも進出していたのである。
 そして、そのイラン・イラクを不可解な戦争(一九八〇年九月)へと導いた影の演出者のナゾは、他日にゆずるとして、ここではサウジでのベクテル社の想像を超えたパワーの一端のみに止めたい。
 (ベクテル社は、イラン革命寸前に、イランでの利益の大半を撤収し巧みに逃げ切った)

 サウジでのベクテル社の名は、時と共にこの国に深く根を下ろし、サウジ石油王国を影で操っていた強大なアラムコ石油よりも更に強大となっていった。
 ファイサルなきあとの、ハリド前国王、ファフハド現国王時代には、ベクテルの名を出せば、税関すらフリーパスに等しかった。
 ベクテル社の支配下のジェダ空港建設や、それに続く、リヤド空港建設現場(世界一の大空港)で、ベクテル社内部は、治外法権に等しいだけでなく、各種の体育館はおろか、いくつものプールやゴルフ場まで、ナイター付野球場すらあったのだ。筆者もここで野球練習を何回もした。
 そのビジネスに至っては、コンサルタントのみでなく、建設全般を白紙で受注したのみでもなく、月間二百億円のオイルダラーの大半の運営すら任されているという、まるで自由自在の有様であった。
 その利益は、まるで天文学的であり、当時の日本の年間国家予算にも匹敵すると推定される。

 サウジに設立された、アラビアン・ベクテル社の社員は一万人にも達し、世界各国(西ドイツ・英国・フランス・イタリア・アジア・西ヨーロッパ各国)から、産油国のオイルマネーの巨大プロジェクトを求めてベクテル社に、まるで砂糖にたかるアリの如く、蝿集していたのであった。
 日本とて例外でなく、三菱重工・日本電気・住友商事・千代田化工などは、特に熱心な下請けとなった。
 如何、そのプロジェクトが巨大であったかは、このサウジで、韓国の飛大・三星・金星は、一万人以上の労働者を最盛期にサウジに集めて肥大化して、その蓄積が世界の韓国パワーの原動力となったことでも判ろう。

 サウジのみではない。
 クウェートは、サウジの親戚であり、USAやカタール、オーマンのアラビア半島の湾岸諸国はすべて、サウジの影響下なので、その指示にて殆ど左右されており、その売上高と利益は、空前のもので、とても計算し難い。
 わずか十年で推定十兆円を上回る利益を計上したと推定されている。
 何しろすべて中東は、秘密主義で、その経費は一切公開されず、調査も許さない。
 CIAにですら把握されていないのだ!

 わずか十年で、これ程の利益を計上した一私企業は、世界の歴史でも初めてではないか。
 今日でも、国務省中東特使として行動しているハビフ氏も、シュルツ・ベクテル社長の部下であった。
 現在のベクテル社のヘルム氏は元イラン大使で、ハート氏は元サウジ大使と言う有様で、ベクテル社に入った陸海軍の主だった。退役将官に至っては、数え切れないという豪華さで、正に史上空前の
 「ザ・商社ベクテル」の名にふさわしい。

 ベクテル社は、レーガンと深く組んで、共和党と共に更にビジネスを延ばし、一九八九年より始まる政治権力を掌中に収めている。
 共和党ブッシュの勝利で国防長官にもベクテル色の人物が就任すると言う、筋書き通りに今や、まっしぐらと言っても過言ではない。
 今や、アメリカ合衆国の、否、世界の将来に、ベクテル社の作るグランドデザインが大きく投影されているのだ。
 為替レートを何故、アメリカは円高にするのか?
 他に貿易赤字を解消する方法がないからであり、極めて強引でキケンなハードランディングと言うべきだ。
 当然ドラマチックな無理な政策や円高是認の発言を、アメリカ政策関係者が今日は、財務長官や世銀総裁が明日はと人を替えて行うのだ。
 何故、アメリカの貿易収支は大赤字を続け、更に国家財政赤字も大幅なのか?
 レーガン大統領は財政均衡を公約の柱とした。「強いアメリカ、強い国家」の建設や再建(もともとアメリカは世界最強国だったので・・・)をスローガンとして走って来た。
 それには本来ドルは強くなくてはならない。しかもレーガンはこの実現を増税なしに実現せんとしたのだ。
 これをレーガンは、サプライサイド・エコノミックス(供給の経済学)と称した。
 が、実際の政治としては単にアメリカは借金を増やして、サラ金より借りまくる様な形式でアメリカ経済を人為的に見せかけだけの供給をふやした。一方で赤字を増やしつつ一方でアメリカは消費も増大させると言う方式だ。
 そして日本は、アメリカ政府と手を組んで日本の金融筋に圧力をかけ、生保や銀行に莫大なアメリカ国債を買わせ続けてアメリカ経済を支える手伝いをさせてきた。
 このため、ドルは一気の暴落を免れて来たのだ。が、このために、日本の生保会社は「セイホ」とアメリカ人ですら記憶する程のアメリカ国債を買い込み、ドルの値下がりを巨額に背負い込まされて、三兆円の赤字を作った。
 生保のオバサン達が堂々として長年にわたり私達庶民からむしり取って来た零細な保険掛金の蓄積は、あわれアメリカ国債のドル目減りで一気に泡と消え去ったのだ。
 それでも善良な日本の生保加入者は、大人しく何も言わない。
 どんなに生保会社が大損失を蒙ったか!

 アメリカは一九八四年、赤字債務国に転落し、その後も債務は増大する一方だ。レーガン大統領は正に「国を誤った」のだ。
 ともあれドルの下落は、まだまだ続く。
 外国人の投資家は、アメリカに対する投資を手控えているので、アメリカヘの資金流入はますます少なくなるのもその一因だ。
 アメリカヘの海外資金流入の増加には金利を上げるのが一番よいが、金利が高くなれば株式の暴落と、国内産業の不況も招くことになる。よってドルを下げた方がより安全と、アメリカ財務省は、孝えている。これも極めて危険な方法だ。
 昨年未、アメリカの対外債務は四千億ドルを越えた。この借金を国際競争力の強化に使わずに、消費的支出に使ってしまった事が、レーガンの失政なのだ。豊かなアメリカを再現するために・・・。
 そのため、貿易赤字は増大をつづけ、ドルが目減りを続けた。
 経済の立直しは、三つしかない。
 ?@円高→ドル安
 ?A金利の引上げ→対米投資増加
 ?B株価の下落→金融資産の減少(利回りは増大する)

 アメリカ経済の赤字が日本経済の黒字と正に対抗している今日、アメリカ経済の大赤字は決して対岸の火事ではないのだ。
 日米経済は、一体不可分なのだ。
 レーガンの失政がブッシュの失政につながる事は、日本でも経済破局を招くのだ。
 ブッシュ政府を理解し、更にそれを操るベクテル社を理解する事は、我々にとっても今日的な重大事項である。

 ニクソン大統領からレーガンまで、対日経済政策は、大きく動いて来た。まず一九七三年四月「通商改革法」がニクソン大統領によって会議に提出された。
 主なる骨子は、
 1、アメリカと外国との対等な競争機会の確保
 2、国際貿易における公正とバランス
 3、輸出産業を強化し同時に諸外国との経済関係の強化
 4、不正、有害な輸入競争の禁止
 5、共産圏市場の開放(アメリカの進出機会)
 6、発展途上国産品のアメリカ国内受け入れ

 この法案は、約一年八カ月の長い審議の後、一九七四年二月に成立した。
 これを一九七四年通商法と称し、特に「通商法三〇一条」は、対日制裁の色濃い関税引上げや輸入規制が打ち出され、その後、半導体規制として実施された有名な法案である。
 一九八七年七月米上院で圧倒的大差で可決された包括貿易法案は、この七四年通商法三〇一条をさらに強化したものだ。
 スーパー三〇一条の法制化の実施。
 ニクソン大統領とベクテル社のつながりは、レーガン大統領ほどではないが、それでも、有力な閣僚にヘイグ国務長官も居り、シュルツ社長もニクソン政権の下で財務長官及び行政管理予算局長も兼ねていたので勿論太いパイプで結ばれていた。
 ニクソン時代は、アメリカはベトナム戦争下であり、ベクテル社のベトナム特需が、巨大であった。
 ニクソン政権でも後には、ロックフェラー人脈が支えており、ベクテル人脈と、このロックフェラー人脈とが、又、不思議にもCIAネットワークで結ばれていることが面白い。CIAネットワークは、今やブッシュCIA元長官が四十一代大統領になったことにより、とうとう政権のトップに立つことになる。
 この支えは、ロックフェラー人脈の資金ネットワークとベクテル人脈の人材バンクネットワークできっちり構成さることになること間違いない。

 七三年以前にもニクソンは有名な「ニクソンドクトリン」を発表して日本に痛手をあたえた実績を持つ対日キラーであったことは忘れられない。
 この宣言とは、次の如きものであるが、その日はちょうど一九七一年八月十五日で対日戦終結記念日であった。

 1、金・ドル交換停止
 2、一〇%輸入課徴金
 3、賃金、物価八十日間凍結

 今にして思えば、これも円高誘導オペレーションであったことは明白だ。
 この年は、アメリカ経済にとって歴史上、忘れ得ぬ年になったのだ。
 即ち、一九七一年にアメリカは、七十八年ぶりに貿易収支が赤字になった。赤字は、二十三億ドルだった。翌年も六十五億ドルの赤字になるが、一九八七年度の四千億ドルから見れば、約五%だから、まだまだだった。尚、この年一九七一年の四月→六月貿易収支三カ月連続赤字はアメリカにとって、今世紀はじめてだった。アメリカの黄金時代は一九七一年に終わったのだ。それに対しこの年一九七一年日本は黒字に大躍進し七十八億ドルになった。
 尚、日本が長い赤字トンネルを抜けたのは一九六五年であり、今から二十五年前やっと黒字国になったのだ。それから、一九七三年第一次オイルショック、.一九七八年第二次オイルショックも、ことごとく征服して一気に世界のトップヘ快進撃して来たのであり、アメリカは、逆に坂をころげ落ちて行ったのだった。
 ともかくニクソンは、曲がりなりにも、ベトナム戦争を終わらせた大統領だった。
 とにかく、ベトナムの戦いは、アメリカ国家の財政を今世紀最大赤字に落し、アメリカ国民のプライドを粉砕し、アメリカの若い人をヒッピー風俗に仕立て、ベトナム民衆の百万人を殺傷し地上に焦上を作り上げ、一方で、アメリカ軍需産業にのみ、繁栄をもたらせたのだ。
 それから十年、カーターの時代を経て、レーガンが再び共和党の旗手として大統領に当選する。
 レーガンを大統領の椅子に坐らせた資金は、ロックフェラー、ベクテルラインであった。
 では、レーガン大統領とベクテル社のつながりを見てみよう。レーガンのスローガンは常に「力強いアメリカを再現しよう」だが、一方で、アメリカ経済は、東方に注意を奪われていた。
 「東方より雷鳴がとどろく」の古い格言がアメリカにあるが、それこそ日本マネーがアメリカ本土に殺到する大爆風の予兆であった。
 日米両経済大国が互いに協力しながら、世界を繁栄に導く---のは立前でありながら実際には、アメリカは、日本が特定商品を集中豪雨の如くアメリカ本土に売ってマーケットを独占し、その結果、アメリカ企業が競争力を失い、倒産→レイ・オフとなってゆくと、主張しているのだ。
 その特徴的な実例として

 1、自動車産業の衰退
   洪水の如き日本車の上陸による。
 2、電化製品の滅亡
   今日、アメリカの家の九九%に必ず、何事かの日本電化製品あり、こ
   のため、GE、RCA、ビッターのアメリカ古参メーカーは、潰滅的損害を
   出した。
 3、半導体の敗退
   この分野でも、アメリカの敗色濃厚で、ペンタゴン自身が、また世界
   一のICメーカー、TIも必死に防戦。フェヤチャイルドは日本側の買占
   めの動きを阻止する激戦展開中だが、既に敗北は決定。
 4、雑貨でも敗北
   時計、カメラ、センイ
   品物が小さくて目立たないが、品種は多く、圧倒的にアメリカ市場を
   独占している。カメラ事務用品、衣料品、時計の品種は豊富で、デザ
   イン、性能、共にすぐれ、最早アメリカ企業は戦う意思すら失い全滅
   したままの状態と言ってよい。

 それでは、アメリカが日本に売れる品物をピックアップして見ると
 (1)航空機(これとて十年後には危ない)
    それ故にFSX戦闘機の共同開発が大もめとなった。
 (2)食糧品(米、牛肉、オレンジ)
    大さわぎして、大統領自身が日本政府に追るわけだ。
 (3)ハイテク産業(コンピューター、通信)
    単なるハードのハイテクコンピューター(IBM)の時代は終わってい
    る。通信では既に日本が勝ち、残るコンピューターのIBMとて(NE
    C、富士通、三菱、東芝の)日本連合にはとても勝てない。IBMはア
    メリカ政府の支援にて陣地をやっと守り続けている状態であるが、
    ジリ貧は免れない。
 (4)大型プロジェクト(宇宙、防衛産業)
    アメリカの最後の砦だ。アメリカが今こそこの分野で、世界に誇る
    宇宙産業と軍事分野で日本の大型プロジェクトを押さえんとしてい
    る。この分野のアメリカ優位は断然で、十年は日本を離し、その間
    にジャパンマネーを吸収せんとする作戦だ。そしてこのアメリカを
    代表するエース企業こそ、ベクテル社を先頭とするプロジェクト企
    業集団なのだ。その華麗な、下記のワシントン・コネクションをご
    覧下さい。


 IBMは、現在世界最大のコンピューター会社であるが、所詮はコンピューター、メー力ーの域を出ることは出来ない。
 コンピューター(ハード)の業界でも、日本の富士通、NEC、日立、東芝、三菱等に激しく追い上げられており、何時かは世界TOPの座を下ることさえ考えられる。
 まさか?と思う方も多いと思うが、あの鉄の巨人、U・Sスチールが、今、日本のメーカー群に追い抜かれたことや、GMがトヨタに迫られて危ないことを考えれば、未来は判ろうと言うべきだ。クライスラーは三菱が買収の情報さえある。
 AT&Tにして然り。NTTの力は恐るべきで、何時、AT&Mを抜くかは時間の問題なのだ。
 然るにベクテル社の位置は殆どライバルなしの独占が多い。
 その中東での独占や、東南アジアでも、アメリカの国旗がゆく所、常にベクテルが巨大建設を独占的に支配してゆくのである。これには日本とて太刀打ち出来ない。
 驚くべきは、その人脈である。
 大まかに数え上げても・・・

 デビット・ロックフェラー会長、ユージン・ブラック元世銀総裁、ニクソン大統領、ケーシーCIA長官、ワインバーガー元国務長官、ジョン・マックロイ元世銀総裁、ジョン・マッコーン元CIA長官、ジョージ・ブッシュ大統領、ヘイグ元国務長官・・・
 その一つ、例えばワインバーガー元国防長官は、ニクソンとは極めて近い親友であり、ペプシコーラ会長とも親しい。それ以外にも、レーガン内閣では、ベクテル社が三人も大臣を送り、国防省と国務省を押さえる外に、エネルギー省、原子力委員会等のエネルギーをすべて手中にした。
 それ故、レーガン政権は、
 「ベクテルのリモコン政権」とさえ言われた程なのだ。
 一企業が、なぜ、そうまで強力に成長したのか?
 ベクテル社は一八九八年カンサス州の農場主、ワレン・A・ベクテルの手によって、鉄道建設の請負会社として設立されたと言われている。当初はごく普通の土建屋だった。それがフーバー・ダムやベイ・ブリッジ(シスコとオークランドを結ぶ)などに参加し、少しずつ実績を上げた。
 太平洋戦争時にはベクテルが活躍したデーターがないので、さしたる実績は少ないと思われる。
 ベクテルが巨額工事を手掛ける様になったのは、やはり共和党とコネが出来てからだ。アイゼンハウァー大統領時代にベクテル社は原子力と言う新興の高度システム分野に大きく進出する。
 原子力技術は、国家のトップ技術であり、それ故に、ふんだんな予算を得てベクテルは成長する。二代目ステハン・ベクテルは、カリフォルニア大学の出身である。同級生に元CIA長官ジョン・A・マッコーンがいる。単にCIA長官だけでなく、一九五八年から三年間、アメリカ政府の原子力委員長にも就任していた。
 ジョン・A・マッコーンは一九三〇年代にはベクテル社の石油精製プラント部門を共同経営したと伝えられているステファン・ベクテルとは親交ある人物である。
 アメリカ政府の原子力政策の全てを支配していたジョン・A・マッコーンの発言力が、ベクテル社にどれ程の巨利を計ったかは、想像を越えよう。
 それ故か、アメリカ国内でのベクテル社の原子力発電設備のシェアーは五〇%を越えており、自由世界での原子力発電建設シェアーは(韓国で八O%を含め)六〇%の過半数を越える、文字通り世界一の実績なのだから驚く外はない。

 更にベクテル社は一九六〇年代に入るや、今度は金融コングロマリットとも深くジョイントするまでに成長する。
 ロックフェラー(チェスマンハッタン・バンク)世界銀行と結合して海外ビジネスヘ大きく手を拡げ出す。
 政権中軸と結びつく手法をシステム化したのだ。即ち、共産党系のエスタブリシュメントやCIA長官を自社に迎え入れグループ各社の副社長とする(二十名もの副社長)。そして日頃は高官を養い、共和党政権が出現するや、閣僚や政府ブレーンに送り出して政策を有利に作り出すという「政商システム」を作り出したのだ。
 そしてレーガン大統領時代に一段と強力に成長した。
 レーガンを大統領候補にしたのもステハン・ベクテルが主力なのだ。
 レーガンのスローガン
 「強いアメリカ」を考え出したのは、シュルツだと言われている。
 USA国内の原子力発電受注額だけでも、七八年五十二億ドル、七九年四十五億ドルの巨額だったのだ。現在のベクテル社は、全世界で常時、百五十近い大プロジェクトを展開中で、中東、アジアがその売り上げの三〇%、USA国内四〇%、その他二五%となっている。

 これ程の、巨大企業が何故、今日まで知られなかったのか?
 誰でもそう思う筈だ。

 原子力発電所、大空港まるごと、洋上プラットホーム、ダム、地下鉄、そして、USA本国を主軸に、東南アジア、アフリカにかけての巨大プロジェクトを一手に扱って来た、世界一の建設とコンサルタント会社。日本の十六建設会社を合わせた巨人、ベクテル社。
 何故、日本人は関西新空港ゴリ押し参入まで判らなかったのか全く不思議だ。

 では、筆者が冷静にIBMとAT&Tを併せたよりも巨大な政商を分析してみよう。

 (1)政商であること。
    時の政府と深く結びつく。
    閣僚をレーガン時代は国防長官、エネルギー長官と四人も送り込ん
    でいる。
    政治を掌中にしているのだ。
    然も世界一のアメリカ政府を・・・。

 (2)ジャーナリズムに宣伝しない。
  a、その必要がない
  b、一般大衆と接触しない
    (IBMやAT&Tとは違う。一般大衆は客ではない。相手は殆ど各国
     政府自体だ)
  c、日本のジャーナリズムは不勉強
    日本のジャーナリストは海外経験が少なく、すべて外電か共同電を
    うのみにしている。

 (3)世界に広がる組織
  a、あまりに大きくて把握しにくい
  b、政府そのものを支配し批判を受けにくい

 アメリカの過去の歴史上、一介の私企業がこれ程までの権力を手中にしたのは全く例がない。IBMとGMよりも力強く、然も、ライバルもなく、そのマーケットは全世界に拡大しつつあるのだ。
 宣伝する必要もない---。
 何故ならば
 「親方は星条旗」なのだ!

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