★阿修羅♪ 現在地 HOME > 掲示板 > Ψ空耳の丘Ψ34 > 185.html
 ★阿修羅♪
次へ 前へ
ブッシュの世界支配戦略とベクテル社
http://www.asyura2.com/0403/bd34/msg/185.html
投稿者 TORA 日時 2004 年 3 月 10 日 09:49:02:CP1Vgnax47n1s
 

 「ブッシュの世界支配戦略とベクテル社」 江戸雄介著(1990年刊)より


   序文
 レーガン政府時代、ベクテル社は公然とそのパワーを誇示し、シュルツ国務長官とワインバーガー国防長官の外にも、二人の閣僚を政府に送り、米国内の政治ジャーナリズムをしてレーガン政府はベクテル政府と言わしめた程で、正に当たるべからざる勢いを示していたのだ。
 然しブッシュ政権になってから、ベクテル社は主要閣僚は送っていない。果してベクテル社は米国政界から遠去かったのであろうか?
 とんでもない!ベクテル社はブッシュ政権の中軸を押え完全にコントロールしているのだ。御存知の通り、ブッシュはテキサス出身のために今回の大統領選挙でテキサス州より多大の援助を受けて当選を果たした。その借りを返すために、リーガン国務長官を始め内閣にテキサス・マフィアをはびこらせているが、それはあくまで当初のハネムーンだけだ。そのテキサスのヒューストンもベクテル社の根拠地の一つであるし、表面に出ない潜行こそベクテル社の本来だ。レーガン時代あまりにも目立ったことによるマイナスが反動的にベクテル社をして潜行に徹しさせているのもその一因だ。公開宣伝や大衆へのPRはベクテル社の最も嫌うところだからだ。何故なら一般大衆の支持や注文など全く必要ない巨大プロジェクトこそベクテル社の柱であり、政商であり、更に資金調達の必要ない株式非公開のいわば鎖国企業だからだ。本書は日本人の多くに未だ知られざるIBMさえしのぐアメリカの巨大企業のチャンピオン、ベクテル社の現状と将来を紹介すると同時に、ベクテル社を知らずして、アメリカ戦略を十分に理解出来ぬことを日本人に明らかにするために書かれたものである。

 アメリカは戦略国家であり、依然としてその基調は変わっていない。ヨーロッパが大変動をつづけている最中に、ブッシュは、コルバチョフとマルタ会談を行った。「ヤルタよりマルタ」の合言葉で米ソ二大首脳は如何にも平和主義者の会合を装ったが、その手は決して白いわけではない。ついこの間まで、ブッシュはベトナムやニカラグアで戦火を交え、ゴルバチョフもアフガニスタンで殺戮をくり返していたのだ。
 東ヨーロッパの大変動は米ソ両大国の思惑を遥かに越すスピードで、米ソ両国すらその対応に苦しんだ末に「マルタ会談」をいそぎ開催して即席のインスタント平和主義者をブッシュとゴルバチョフは世界に気取って見せた。
 東ヨーロッパの自由への嵐も米ソ二首脳によって仕組んだとのポーズを示したのは、ヨーロッパでの主導権を米ソが依然として持ちつづけんがためである。マルタ会談後の共同声明でも二人は如何にも平和信奉者を装っている。がその言葉の余韻が消えぬ内にブッシュはあっとおどろく軍事介入をパナマに昨年十二月二十日に行い、世界を唖然とさせた。アメリカに追従べったりの日本政府でさえ、さすがにパナマ軍事介入には反対の声明を出した程だ。平和の鳩は実は鷲であることを世界にアメリカは公然と示したのだ。
 アメリカは依然として軍事を武器とする戦略国家であることを忘れさせないための、強いブッシュのデモンストレーションなのだ。「アメリカをなめるな」と云うメッセージなのだ。
 このことを日本は決して忘れてはならない。
 そしてその軍事戦略の陰の主役こそ、「朝鮮戦争」から「ベトナム戦争」「中東動乱」とつづけて巨利を得ている、巨大な政商ベクテル社なのだ。ベクテル社こそ戦略国家アメリカを動かしているのだ。本書によって「知られざる巨大ベクテル社」が、ブッシュを操っている実体を読者は理解されるであろう。

              一九九〇年四月  ニューヨークにて  江戸雄介

 第一章 シュルツはベクテル社のセールスマン
 ベクテル社---この名を聞いてすぐわかる人は、ビジネスマンの一〇%もいない。IBMならば九五%以上はいるというのに。ベクテル社はIBMより強大な米国企業なのに。
 これほどの会社なのに、日本経済ジャーナリストすら二〇%も知名度がないのは不思議ですらある。なぜか?
 そのなぞこそ、ベクテル社の真のパワーを表しているのだ。一般の人に知らせる必要など全くないアメリカ政府の陰の演出者だからだ。その理由は次の二つだ。
(一)一般産業よりの受注など問題にしない。政府がらみの巨大受注のみ。(PRの必要なし)
(二)株式は非上場。一切、一族と幹部社員が持ち、利益公開せず。利益の独占を専守する。
 そして、そのトップ・セールスマンは有名なシュルツ前国務長官やワインバーガー前国防長官なのだから、その豪華パワーが知れよう。IBMと比較すれば、よく分かる。
 IBMは、毎日のように多大の宣伝をくり返して企業をPRしている。IBMの客筋は、政府や公共企業のみでなく個人もユーザーとしているからだ。然し、ベクテル社は宣伝不要。ベクテル社の名前は日本国民に殆ど知られていないのは当然なのだ。そのIBMは八九年は円本勢の追い上げで大幅減益を出している。
 IBMやAT&T、或いは、ロックフェラー・モルガンは有名でも、IBMより遥かに強大なベクテル社は、大衆とは無縁であった。
 然しながら、シュルツ国務長官の名は、就任当時日本の新聞、TVで、一日として登場しない日はなかったと言って良い。
 マスコミのスターになっていた。
 シュルツ前国務長官こそ、今、正にベクテル社の顔と言ってよいであろう。但し、深くベールを被った知られざる巨人としてのマスクなのだが・・・。
 では、シュルツ前長官のプロフィールを追ってみよう。
 そこにベクテル社の存在も自ら浮き上がって来る筈だ。名高いアメリカ東部エスタブリッシュメント(知識階級)の中でも、特に共和党系では、シュルツ氏は際立つエリートであった。早くからレーガンが当選すれば国務長官と名指しされていたのだ。
 政界とのつながりは、シュルツ氏は、シカゴ大学系のエコノミストの代表格として一九六〇年アイゼンハウワー大統領の下で労働長官に就任した。それまで、シカゴ大学系のビジネススクールの教授もしていた。
 共和党系であるのに、その後、ケネディ、ジョンソンの民主党の下でも、大統領の経済アドバイザーを務めたくらい高名で且つ人望家であった。共和党の天下になると、一九七二年ニクソン大統領の下で財務長官も務めている。その他にも、ニクソン政権では、労務長官、行政管理予算局長を歴任している輝かしいキャリアなのだ。
 チリ軍事政権の経済顧問も務めたり、硬派的な人脈ともつながり、華々しいキャリアを誇っている。国際交流も盛んで、西独のシュミット前首相とも親交がある。
 一九七五年、ベクテル社より高給で社長に迎えられたのも、上の様な輝くキャリアを買われたからであった。
 ベクテル社がアメリカ建設業者として、西独にも進出しているのも、シュミット前首相との親交が多いに役立っているのだ。
 ベクテル社長を勤めていたシュルツ氏は、レーガン政府入りは「収入の大幅減でいやだ」と言って中々OKしなかったと言われているが、実際では、ベクテル社の社長の役目も兼任担当しているのだ。
 政治信条としては、キッシンジャーと同じ共和党の穏健派と思われ、デタントを支持し、対ソ禁輸にも反対と言われている。今回の米ソ冷戦終結にも、働いているのだ。
 シュルツ氏は人の和を大事にする中道派であり、対人関係のうまさ、慎重さは極立っている。レーガン大統領とは以前より親友であり、同じカリフォルニア系で、その点でもサンフランシスコ本社のベクテル社とのつながりは深い。
 シュルツ氏は、特に、中東政策には強いテーゼを持っている。
 ベクテル社の全契約の二〇%近くがアラブ諸国相手なので、当然であろう。サウジではベクテル社がダントツ独占的で、ジューべル工業都市は東京都全部の土地に丸ごと都市を請負ったと言う物凄さで、契約は何兆円にものぼろう。二十世紀最大のプロジェクトと言ってよい。
 それ故、アラブ諸国への親近感は絶大なものがある。現実にジューべルに立ち寄った筆者ですら舌を巻く巨大さだ。
 ちなみに現在、ベクテル社は世界の二十五ヵ国以上で百六十の巨大プロジェクトを施行中で、USA(国内)四五%、中東二〇%、アジア一〇%、ヨーロッパ一〇%、アフリカ一〇%、その他五%となっている。
 シュルツ氏のアラブ寄りの姿勢の影響で、最近のアメリカ政策が在来のイスラエル一辺倒より少しずつアラブ寄りに変化していることは、注目したい。
 西側同盟国との調和を重視し、ソビエトとも友好姿勢を強めている。

 ニクソン時代のシュルツは、自己主張を貫くことをしなかったという特色があった。例として政府の経済介入には、自由経済の立場で反対を表明しながら、ニクソンの七一年の賃金物価コントロール政策を受け入れて、その政策を財務長官として実施していた。
 シュルツ長官が脚光を浴び出したのは、レーガンが内政に失敗して国家経済が苦しくなり、権力者の常用手段として国民の目を海外の出来事にそらすことに力を入れた時からだ。それがレーガンが、やたらと外交を前面に打出し、あれ程、ソビエトとの対決を叫んでいたのが一転にわかにデタントの旗手に変じた真相なのだ。
 まさかと思ったSS-20の核ミサイルの撤去を実行して、歴史的デタントの実効を示した始めての米大統領になるとは。レーガン自身も選挙公約違反を犯している(即ち対ソ対決を妥協に変じた)ことに気がつかないふりをして見せたわけだ。当然の事ながら、ソビエトにもお家の事情があり、(ソビエト国内経済も破産寸前なので)期せずして、米ソ両巨頭が、呉越同舟でデタントの盃をくみ交わすシーンとなったのであった。ともあれ、それが、シュルツ氏の名声を高めたわけで、全くラッキーな男と言うべきであろうか。
 一方で「レーガンは自分に投票しない連中のみよろこばせる外交を行って、投票した、真の支持者や保守派の要請に応えていない」と言う不満の声も、当然出て来るわけである。SS-20は恐ろしい核ミサイルである。射程五千マイル、一基のミサイルに百トンの核弾頭を三発まで積めると言うのだ。ソビエトとアメリカは、ヨーロッパのみ、SS-20を削減したが、アジアでは減らそうとしない。下手をすれば、ヨーロッパで撤去されたSS-20は、そのままアジアの核ミサイル増強となる可能性は大きいのだ。SS-20は日本へは今でも向けられていることを忘れてはならない。
 ともあれ、ベクテル社は、年俸二十万ドル以上という高給を取っている三十六人の副社長が存在し、この人材こそ政権の単なるブレーンにとどまらず閣僚候補のプールなのだが、シュルツ氏はこのベクテル社という人材バンクのエリート中のエリートと言うべき存在である。
 レーガンが大統領に再選されるや、ベクテル社は、「エース」シュルツと、ワインバーガーを閣僚に送り込み、表面は「民主政治への積極的参加」を打ち出してきた。
 レーガンを共和党の大統領候補にかつぎ出した者こそ、ベクテル・ジュニアだったのだ。
 レーガンが声高に叫ぶ「強いアメリカの復活」のスローガンを考え出したのは、シュルツ氏だったと言われている。
 かくして、シュルツ長官は事実上の副大統領として世界をこまめにとび廻り、幅広いコネと二ーズを作りつつ、ベクテル社の営業拡大に、日夜、貢献していたのだ。
 ベクテル社最新のカタログを見て目立つことは、社長、ステファン・ベクテル・ジュニアの挨拶である。
 ベクテル社は、すべてのカタログを通常の会社カタログとは全く違うイメージで作っている。まるで地味で、お金を掛けていない。その必要もないからだ。カタログすらなかなか公表しない。
 特に社員用には、「親愛なる友よ」の呼び掛けで始まっている。
 暖かい感じが極めて印象的だ。
 内容は主として六つに分かれたグループ各社の紹介

A ウエスタン発電会社(原子力・火力発電)
B ベクテル会社(サンフランシスコに在り、石油パイプライン・火山、プラント保管)
C ベクテル商社(ロンドンに在り、石油、石油化学)ヨーロッパ担当
D ベクテル開発(輸送、開発、水源、通信)
E ベクテル・ナショナル会社(防衛・宇宙)
F ビーコン建設(建設・その関係附属)

 以上を見ただけでも、そのスケールの大きさが想像できる。
 営業所に至っては、アメリカ国内四十ヵ所の外に世界三十五ヵ国に及んでいるのだ。
 もう少し、ベクテル社の業績をカタログより見てみると、

(1)原子力発電所の業績をトップにあげている。
 その工事実績は、アメリカ国内で第一位(スリーマイル島を含む)韓国、その他東南アジアで第一位(日本を除く)
(2)中東全域の巨大工事
a。最も独占的且つ巨額工事(サウジ)
 これは、世界最大のサウジ、リヤド空港、同じくダハラン空港、ジュベール工業都市、アブハ山間都市。このどれを一つ取っても、一兆円を越す巨額なもので、ジューベル工業都市に至っては、数兆円とも言われ(予算などない掛かつただけの工事)、そのスケールは山手線内回り以上・即ち東京二十三区に匹敵すると言う物凄さだ。見ない人にはとても信じられない。又、非公開のプロジェクトなので、参加関係者以外には全く知られていない。
b。その他の中東でも
 アラビア横断パイプライン
 エジプト火力発電所
 イラン、イラクでの工業施設
 とても数え切れない。
(3)その他
 フーバ・ダム
 ワシントン地下鉄
 サンフランシスコ地域地下鉄「バート」。ロス新空港・ラスベガス新空港外十ヵ所以上。
 鉱山開発、金属プラントとしては、パプアニューギニアの世界最大の鋼山
 海上プラット・ホーム(石油開発用)七十ヵ所一九四〇年以来だけでも二二五〇〇〇メガワット以上の電力開発を行っている。
 そのカバーする地域としては、国内のミシシッピー河より全世界に及ぶと高らかに述べている。発電関係の総合本部は、ワシントン州の隣のメリーランド州(ゲエイスルバーグ)にある原子力発電所から、水力、火力の凡ゆる発電関係でのリーダーである。そして、ブッシュはテキサスが地盤なのだ。
 国際関係の仕事も極めて多いので、そのオフィスは、サンフランシスコの本社内に常設してあり、一方、国内での本社はテキサス州のヒューストンにある。
 これはヒューストンが石油の町であり、且つ宇宙産業のコントロール・センターが存在していることと深く関係がある。
 最近完成した三百マイルのコロンビア・石油パイプラインは、アンデス山脈を横切り、ジャングルを切り開いた難工事で、五十三週間で完成している。
 ベクテル社は、鉱山開発と金属プラントでも大きな実績を持っている。
 鉱山開発は石炭やアルミニウムからウラニュウムまでの幅広い範囲だ。
 最近では、北米で金鉱山も手掛けた工事は自分で資金も調達した。
 その外にも、南太平洋の銅山、オーストラリア及びカナダでのアルミニウム鉱山開発がある。
 鉱山開発だけでない。
 その運営の訓練、保守のサービスも鉱山及び金属業者に行っている。
 最近も台湾でエアー・ポートと石炭鉱山の運営社員トレーニングを行った。
 四万マイル以上のパイプライン、百五十以上の石油精製所、八十五ヵ所の鉱山、百以上の海上プラットホーム。ロンドンのベクテルオフィスは主にヨーロッパの営業本部となっている。地域はヨーロッパ全域と中東アフリカまでをカバーしている。主なる工事は、石油とガス製造設備、石油精製設備、化学工場設備、パイプライン、土木工事や鉱山、発電所、飲料水プラント、北海での海上プラットホーム。この英国の本部は一九五二年以来、すでに三十六年のキャリアがある会社で、英国人の従業員が八○%である。北海油田も殆どベクテルの運営である。
 一方、アメリカでは、空港の七〇%がベクテル社の実績である。最近のロスアンゼルス空港、ラス・ベガス空港、ヒューストン空港、すべてベクテル社だ。その他四二〇マイルの光ファイバー通信システム(マサチューセッツ湾)
 112メガワットのサルタン河発電プロジェクト(ワシントン州)
 最近完成した、フロリダ、マサチューセッツでの汚水浄化設備や、廃物活性化設備等の化学設備もベクテルの得意である。
 更に宇宙や防衛も又、ベクテル社のメインビジネスで、将来、更に大きくなろう。
 その例として一九八七年インディアナ州でのパン・ナム・ゲートがSDIの安全システムの例としてベクテル社が実施した。
 原子力発電所の操作に経験深いのは勿論であるが、その廃棄物の再処理設備での新しい方法も実施し、アメリカ政府エネルギー省のプログラムも作っている。
 そして最後に、ベクテル・ジュニアは、カタログで次の如く表明している。
 「九十年間に及ぶ、発電所、石油精製、鉱山、開発、ハイテク産業の各種工事で顧客のあらゆるニーズに答えて来たことが、即ち我々の成功なのだ。その行動がベクテル社の未未を拡げる哲学なのだ」と。
 ベクテル社のカタログにはビーコン建設が紹介されている。
 ビーコン建設会社はベクテルグループの建設本部だ。
 ベクテルのBとコンストラクションのCONをとって作った建設全社だ。
 日本で言えば、大倉商事の大倉土木が大成建設になったのと同じだ。
 建設のオフィス構成はヒューストン、テキサス本社と四カ所の支店がある。
1 力ールトン(ノースカロライナ)
2 バートン・ルージュ(ルイジアナ)
3 べーカースフィールド(カリフォルニア)
4 リーズバーグ(バージニア)

 その他にもカナダで、ベクナ社(カルガリィアルバーター)がある。
 常に、困難な競争にも高度な安全性の仕事をなし遂げてきた。施設の再生や緊急な工事、長期工事計画でも問題なく消化する建設マネージャーは、定期的に研修をつませている。一九七九年に会社は設立され、最近も八十ヵ所二十億ドルの仕事を完成させた。ビーコン社は次の工事を主に取り扱っている。

 原子力発電所
 石油及びガス発電所
 石油及び精油製造
 鉱山
 金属溶解と加工
 重工業設備

 最近の工事では、トヨタのケンタッキー州での自動車組立工場の建設管理やワイオミング州のパルプ製造、ワシントン州の紙工場、テキサス州の化学プラントや精油所がある。
 原子力分野の最近の業績として、ノース・カロライナ州のブラウンズウィック原子力発電所に於て、ベクテルは原子力分野の安全記録を樹立している。

 上の最近のベクテルのカタログでは凡ゆる分野に於て、ベクテル社が産業設備と開発を手掛けた実績を誇っており、特に力を入れているのは次の四点である。

1 原子力発電分野
2 飛行場新増設の分野
3 宇宙産業の分野
4 防衛と軍需兵器供給の分野

 これ等を頭に入れると、ベクテル社がシュルツ長官を前面におし立て、何を日本に売り込まんとするかが判明する。
 即ち、目的はハッキリしている。
1、原子力発電所建設への参入
 ベクテル社が世界一の実績
 (スリーマイル島原発及び韓国の八大原発その他)
2、飛行場新増設への参入
 ベクテル社が世界一の実績
 サウジ(リヤド大空港、ジェダ空港、台湾、フィリピン…その他)
 アメリカ(ロス、ラスベガス、ヒューストン…その他)

 こうして先づ、手初めに関西新空港をベクテル社の日本へのゲートウェイとして侵入を開始したのだ。
 関西空港は、我が国初めての二十四時間国際航空でしかも海上空港。成田その他の如き時間使用制限があって、海外からの乗り入れが不十分なのとは異なる。
 国際化された日本での第一号だ。
 ベクテルは、強引にこの関西新空港のコンサルティション業務を金額は少なくとももぎ取り参入したのだ。

3、宇宙NASAと手を結びベクテル社は強い
 この分野は、SDIが、ベクテル社がそのカタログでも述べている如く、ベクテルの重要業務であり、世界一の力量を持つと推定される。
 宇宙産業は、今後、日本もますます拡大される巨大産業であり、日本メーカーの東芝、三菱、日立、NECがしのぎを削る。

 この分野でのアメリカ優位は当然であるが、ソビエト以外の自由諸国で宇宙産業のアメリカにとって将来のライバルは日本勢だ。
 それ故、アメリカ政府はベクテル社のためにも東芝を徹底的にバッシングし、日立を苦しめ、アメリカの優位を守り抜かんとしているのだ。
 「スペース」。人類に残されたこの未知の広大な空間も、SDIより始まる企業競争の舞台としてここでもみにくい争いが続いてゆくのだ。

4、防衛産業
 日本は幸い輸出用軍需品は作らず、この点ではアメリカの独走であり、ベクテル社の当面の狙いは、当然、防衛産業の今後の大課題たるシステム化に向かう。OTHレーダー、電子戦争、バッチシステム、軍事衛星を始め、ロケット技術でもNEC、三菱、東芝とベクテル社は、コンピュートしてその在来実績をもって日本に参入する方針なのだ。

 その他にも日本の民間大プロジェクトとしては…
a、東京湾横断道路(一兆二千億円)
b、東京臨海部再開発(三兆四千億円)
C、ジオトピア計画(地底総合開発構想)
d、丸の内再開発計画(三菱グループ構想)
e、東海道超電導新幹線計画(建設省、JR)
f、東京新国際空港(二十四時間国際空港)
 の如く目白押しに大プロジェクトが立案、実行に移されつつある。

 このすべては今後十年内に着工され、一部は今世紀中(二千年)に完成する予定なのだ。現在世界の中で、日本国内程、建設巨大プロジェクトを立案し、実行せんとする国は他にない。日本は今や世界一のリッチな国家なのがここでもよく判る。
 日本はそれ程、マネーがあるが、日本政府はそのマネーを日本国民の生活向上に直接役立つ、牛肉、オレンジの自由化や石油製品の値下げ、あるいは住宅地大造成に使わず、自民党と建設コングロマリットの利益のため、殆ど建設と開発に消費せんとしているのだ。
 利にさといアメリカ建設企業グループのリーダーたるベクテル社がこのチャンスを指をくわえて見ている筈がない。
 最近のアメリカは、インテリジェンス・ウォーズ(知的所有権戦争)を日本に仕掛けて来た。凡ゆる戦法を使って日本を苦しめんとしているのだ。
 モノ、カネ情報、サービス凡ゆるものを含めてなのか?
 否か?で日本は大さわぎだ。
 金融市場開放は、アメリカの圧力だった。ところが、日本の金融市場開放が海外市場でも勝利を得ることになった。日本の金融力はそれ程、強力であったのだ。
 又しても、アメリカの思惑は外れ、反って日本の銀行や証券、生保は、逆に海外市場の、ニューヨークのウォール街やロンドンのシティで力をつけることになった。
 それ程、日本マネーが強くなっていることに、アメリカすら気付かなかったのだ。
 アメリカの貿易赤字は依然として減らず、赤字はふえる一方なのだ。今年二月の商務省発表で、赤字の四五%は対日貿易である。
 そして依然、アメリカ景気はパッとしない。かくしてアメリカ大企業は、在来の国内競争をあきらめて、猛然と海外進出へと進むことを決意したのだ。
 アメリカ大企業は、生き残るために、国を、見捨て始めたのだ。
 そして目指す、進入国は、日米経済戦争の本家、日本本土以外にない。
 既に次の大企業が、次々と侵入を開始している。

 在来の会社
 IBM、ユニバック、バロース、ケンタッキーフライド、ゼロックス、マクドナルド、シェーキーズ、TI、フェアチャイルド、コダック、バンクオブアメリカ、チェイスマンハッタン・バンク、AIU、アメリカンエキスプレス、AT&T
 最近進出
 ソロモン・ブラザーズ、オマハ保険、シティコープ

 とくに大きいのはマネー市場だ。
 アメリカの証券会社や保険会社、銀行が多いのが特徴だ。マネーには国境はないため、東京市場では毎日十兆円近い外国為替が取引される日もあると言う。
 正にビッグ・バン(完全自由化)だ。
 もっとも、このマネーは取引で流れているだけで、それよりも重要なのは、M&Aであろう。
 アメリカ資本は、一気に日本企業を乗っ取り、M&Aを達成せんと、必死に働きかけてくるであろう。
 我々日本人が、あまりに金儲けのみに囚われていると、巧妙なアメリカの作戦にいつの間にか乗り込まれて仕舞う危険が充分あるのだ。
 特に建設業はなれていない外国資本との提携が危険でいっぱいだ。
 ましてやシュルツ氏自ら、その先頭に立っているのだから。
 ベクテル社を一つの家か城にしてみると、その構成は極めて手堅いファミリーの年功序列となっている。

 昇給も殆ど年功序列なのだ。この点はまるで日本企業と同じ。
 四十年の表彰さえある位、極めて定着率が低いアメリカの企業の中でも抜群に高いのがベクテル社なのだ。
 それだけではない。
 アメリカ社会は意外と学歴が物を言う社会なのに、ベクテル社では職工(溶接、土木)あがりを技師として大勢、管理部にさえ登用しているのだ。海外派遣には特別教育期間を充分に設ける事は勿論であるが、最も筆者が舌を巻いたのは、海外要員の宿舎であった。
 日本の大手建設ですらプレハブ住宅を当てがってもらえばいい方だと言うのに、ベクテルの社員にはホテルかとまちがう3LDKの住宅が家族用に取揃えらえ、冷暖房はおろか、学校、プールなんでも揃っている。
 勿論、社員の階級に応じて、下のクラスはワンルームであるが、車は皆、持つ事ができて、生活には全く不自由ないのだ。
 ベクテル社の社風は、意外や年功序列を重んじた上でのアメリカ式自由な討論の場を持つ柔軟性にあるのだ。その上で、マニュアル、システムの導入や、アカデミック組織を取り入れた、徹底的な合理化なのだ。
 そして、ベクテルは、売上や受注高を公表する事を極度にきらう。この点も、アメリカ式ではない。特に利益に関しては、全くノー・コメントだ。
 すべてに、目立たぬことを心掛けている。個人企葉のスピリットが、これ程巨大な企業の現在でも守り続けられている。

 四十一代大統領は大差でブッシュ氏が任命された。予想以上の大勝利であった。
 ブッシュ氏が前CIA長官であり、それだけに海外情報に通じている事は当然であろう。初めてCIAマン、大統領の出現である。

 現在日本の対米黒字は八五〇億ドルに近く、円にして十一兆円となる膨大なものとなっている。
 我々庶民の生活は、依然として変わりばえしないが、日本国はどうやら、世界一のリッチ・カントリーになっているのだ。
 でもこれは異常だ。日本国民はリッチとはいえず、企業のみ栄えているのだ。
 本来の貿易黒字は年商百億ドル(一兆六千億円)位で充分と筆者は、考えている。日本国民の消費がそれ程、上昇していかないのが問題なのだ。
 日本の場合一九八七年だけで千二百億ドル(十九兆円)もあるとは全く驚きだ。
 果してこのまま続けて行くとアメリカが一兆ドルの赤字になり、日本が八千億ドルの黒字国になりそうだ。
 それは想像しただけで異常事態だ。
 かつて中東にオイルダラーが奔流の様に流れ込み、サウジを始め産油国が繁栄を極めた一時期(一九七四〜一九八三年)の十年間があった。今はそのサウジも赤字国になっている。日本が今やアメリカに代って債権国になっているが、だからと言ってアメリカが今も尚、世界のリーダーである事に変わりはない。
 アメリカのジャーナリストの中には、日本は卑劣な手段でアメリカに上陸して来ていると、非難する人も多い。
 例えば
 1、自動車 一九六五年六万台 -> 一九八八年三二〇万台とまるで五十倍以上もクレイジーにふやしたこと。
 2、鉄鋼 日本の安値輸出でピッツバーグはもちろんペンシルバニアやクリーブランドの町は死の街になってしまった。その荒廃はひどい。
 3、婦人服 あまりの日本及アジア攻撃に労働者20万人が失職してしまった。
 4、IC NEC、富士通の大攻撃でアメリカも安値競争に…
 それは日本役人([例]通産省)が指導し資金も貸し、集中的にアメリカに攻める。
 官民一体で他国の産業をナギ倒すのだ。
 企業レベルでなく国レベルで攻めてくる。武力なき経済侵入だ。
 いわゆる「日本株式会社」だと言って強く非難しているのだ。
 そのため、アメリカは企業だけでなく町ごとダメになってしまうのだ。
 バッファローやペンシルバニアの如く死の町となる。これ等の町はまるでゴースト・タウンになった。
 この事が積もりに積もるとしたらどうなるのか?
 アメリカの有力な知識人の言った次の言葉が特に印象に深い。
 「今の日本は他国を攻める軍事力は乏しいよりもないに等しい。然しその小さな国土だけでは生活できず、石油も木材もない。あるのはよい港湾と知能だけだ。日本人はいつも何かに屈折した劣等感を持ち、それ故に休むことなく働き続けている様だ。休暇は極めて短く、それも次の仕事のエネルギーのための様に思える。よく訓練された、それは産業戦士の群だ。欧米のように休暇のために働く、のとは根本的に違う。いつも野心家でそして飢えている様に思える。日本は凡ゆる産業分野でアメリカに挑戦しているとしか思えない。そしてアメリカは、それに気づくのが遅すぎたのかも?」
 アメリカ産業が他の国に挑戦されて負けた歴史は一度もなく、それ故に不安に感じているのであろう。
 日本は今やアメリカだけでなく世界各国の様々な分野でリーダーシップを取ろうとしているようだ。リーダーその者の交代さえ迫っているのだ。IMFがそのよい例だ。アメリカの競争力そのものも低下したし、このままでは正しく世界経済でアメリカに日本はとって代わろうとしているとしか思えない。
 さりとてアメリカは、日本と違う習慣で、世界経済をやってきたし、その方法こそ民主的な最良の方法として考えてきた。
 外国からの挑戦にこれ程直面した事が、アメリカにないため、アンフェアと言う方が、アメリカに競争力がないと言うより容易だからだ。それでも感情としてアメリカ国民は報復の方に傾いてゆくだろうと筆者には思える。
 この様にして、アメリカも深く考え直して来ている。
 民間だけでなくアメリカ政府も色々と考えて対日政策を作りつつある。日本株式会社に対してだ。
 「アメリカ株式会社」を作るべきだと。日本の戦法を逆に利用すべきだと。
 巨大な会社を中心に日本に対して経済戦争を仕掛け、凡ゆる方法を使用して勝利を得ようとするであろう。
 その「アメリカ株式会社」のチャンピオンこそ「ベクテル社」なのだ。
 そしてシュルツ氏こそその影の大統領なのだ!

 次へ  前へ

Ψ空耳の丘Ψ34掲示板へ



フォローアップ:


 

 

 

  拍手はせず、拍手一覧を見る


★登録無しでコメント可能。今すぐ反映 通常 |動画・ツイッター等 |htmltag可(熟練者向)
タグCheck |タグに'だけを使っている場合のcheck |checkしない)(各説明

←ペンネーム新規登録ならチェック)
↓ペンネーム(2023/11/26から必須)

↓パスワード(ペンネームに必須)

(ペンネームとパスワードは初回使用で記録、次回以降にチェック。パスワードはメモすべし。)
↓画像認証
( 上画像文字を入力)
ルール確認&失敗対策
画像の URL (任意):
投稿コメント全ログ  コメント即時配信  スレ建て依頼  削除コメント確認方法
★阿修羅♪ http://www.asyura2.com/  since 1995
 題名には必ず「阿修羅さんへ」と記述してください。
掲示板,MLを含むこのサイトすべての
一切の引用、転載、リンクを許可いたします。確認メールは不要です。
引用元リンクを表示してください。