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「夢の核融合」のウラは核兵器開発 2004/02/21
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核融合の研究者たちには誇大妄想狂が多い。核融合とは重水素とトリチウムの核反応であるが、その燃料の重水素は海水から得ると言う。だが、塩分のため装置が痛むので、これは普通の水から得る。もうひとつの燃料のトリチウムの原料はリチウムであるが、これも海水にあると言う。だが、海水中のリチウム濃度は薄いからこれを取り出すには大量のエネルギーが必要になり、実行されることはない。
また、核融合は太陽の反応と言う。だが、その体積あたりの発熱量はわずかであって、人間の発熱量の1万分の1に過ぎない。太陽の総発熱量が多いのは図体がでかいからである。ざっと、こういう調子で誇張ばかりである。
それにこのリチウムからトリチウムを作るのに核融合炉1基あたり10基の原子炉が必要で、核融合は原発の10倍の放射能を作る。そして、核融合反応で発生する中性子は原発の核分裂よりも強烈で量も多く、これに耐える金属容器は存在しない。したがって、自己点火で核融合反応が成功しても、炉がすぐに痛むので発電は無理である。
私は、30年前、これらの理由をあげて研究者のいう核融合のウソに反対した。その後、核融合研究はほとんど進歩せず、言っていることも昔と同じで、私の指摘には何も答えられない。しかし、その研究費はどんどん巨大になり、使い物にならない装置がどんどん作られ、古いものはどんどん廃棄されている。
また、石油や天然ガスは200年程度では枯渇しないことも分かった。エネルギー問題はすでに消滅したのだから、核融合の研究開発を急がなくてはならない理由は何もない。それでもなお、核融合開発は国家プロジェクトとして続けられている。
ところで、今回提案のITER方式では、自己点火までは加熱できないと計算された(1996年)。したがって、ITERの発電計画は中止になったようだが、建設だけはこの計算結果を無視して実行するというデタラメさである。失敗かどうかが実証されるのは20年後だから、現在のITER推進者たちは退職するので無責任なのである。
そのうえ、核融合の研究を続けるには巨額の費用と電力と鉄など資源のほか、リチウム、ニオブなど希少資源も大量に消費される。ITERの場合、原発を5基建設できる資金と莫大な量の鉄などを消費する。したがって、イータはITER(道の意)ではなく、今後は「EATER」(大食い意)と改名するのがよいと思われる。
このように、「夢の核融合」でしかなかったのである。それなのに、日本とフランスがこの「EATER」の誘致合戦でしのぎを削る「夢想家」を演じている。したがって、これには裏の目的があると判断する外はない。
日本の場合は、トリチウムの軍事利用である。この問題を、推進派はもちろん、多くの反対派も口を閉ざしている。日本の反対派が、この重要なことを故意に隠す裏には、裏のまた裏があるようだ。
世界の原子力の商業利用は自滅の方向にある。ドイツは03年11月稼動中の原発を1基廃止した。今後つぎつぎと廃止する予定である。アメリカは20年前から原発を建設していない。電力会社は原発をきわめて安価に手放し、それぞれ小さな発電会社として独立させ、発電を続けることにした。イギリスの原発会社は破産寸前である。銀行債務を圧縮し、政府の50億ポンド(約1兆円)の援助で、当面の経営破綻を回避した(03年10月)。
日本も各地で原発建設計画を取りやめた。原発の費用が高くて使い物にならないのである。これまで、原発は安いとウソをついてきたのだが、電力の自由化と天然ガス利用いう世界経済の流れで、このウソがばれてしまった。経産省はまだ原発は安いと言っているが、電力会社は原発は高いと言いはじめた。
その結果、核保有国は原子力の商業利用は止めて、元の軍事利用に戻そうとしている。アメリカは、建設中の原発を水爆や中性子爆弾用のトリチウム生産炉に変更した。
日本は軍事利用を本格的に始めようとしている。総合科学技術会議は、04年度予算案の最優先Sランクとして、高速炉もんじゅと核融合「EATER」などを決定した。
もんじゅを開発するのは、原爆用プルトニウムを生産できるからである。多くの日本人は「どんなプルトニウムでも原爆になる」というウソを教えられ、これを信じているが、普通の原発から得られるプルトニウムでは原爆はできない。原爆用のプルトニウムを得るには、高速炉などの特殊な原子炉が必要である。したがって、普通の原発の建設は次々と中止する一方で、ナトリウム漏れ事故のもんじゅの運転を再開しようとする。
「EATER」は水爆用のトリチウムを大量に使う。したがって、「EATER」を日本国内に建設すれば、日本はそのトリチウムを生産し、これを大量貯蔵することが、認められることになる。逆に、この「EATER」を国内に建設できなければ、日本はトリチウムを生産する口実が得られず、核兵器開発ができないのである。
フランスの場合は、もともと核兵器所有が認められている国であるから、その口実は必要がない。しかし、フランスは原発大国であって、その余剰電力に困っている。「EATER」を世界の援助で作って、この余剰電力を大量消費できることを望んでいる。
ドイツは、フランスとしっかり軍事同盟したから、フランスの核はすでにドイツの核であって、金のかかる核兵器開発をする必要がなく、「EATER」を必要としていない。仮にフランスが「EATER」の誘致に成功して、その費用の半分を負担することになっても、それはEUが負担するので、ドイツの分担はそれほどではない。
フランスは、日本の電力料金がフランスの1.4倍も高いと主張する。発電しない「EATER」を運転するのに、原発半基分の50万キロワットの電力料金がかさむからである。そして、青森県六ヶ所村は地震対策が必要で、建設費はフランスの場合よりもずっと高くなり、各国負担は増えるとも指摘する。
一方、アメリカは日本の核武装がアメリカの手のひらの上でなされることを認めている。したがって、日本支持である。中国とロシアはフランス支持である。残る韓国は揺れている。したがって、日本の核開発の実態を中国、ロシア、韓国がどう見るかで「EATER」を日本が誘致できるかどうかが決まるのである。
(槌田敦)
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編集部注:筆者は名城大学教授。原発問題などで発言を続けている。著書に『熱学外論』『原発安楽死のすすめ』『エントロピーとエコロジー』など。
http://www.janjan.jp/government/0402/0402201295/1.php