'04/2/7
　米軍機の低空飛行の抑制などを約束した「日米合意」から五年、中国山地を中心とした訓練空域ではそれが守られているとは言えない状況だ。本年度は、ヘリの夜間低空飛行や、国内航空法の最低高度基準を超えたと思われる低空飛行も目立った。合意が守られぬなら、米軍への航空法など国内法適用を除外する特例法のもとである日米地位協定を見直す必要があろう。

　一九九九年一月に公表された低空飛行訓練についての日米合意は、人口密集地や学校・病院などへの「妥当な考慮」▽日本の航空法の最低高度基準（市街地三百メートル、そのほか百五十メートル）の適用▽土日・祝日の訓練制限―などである。しかし、広島県で目撃件数が最も多い芸北町などは「学校や病院などへの配慮は感じられない」という。土日の飛行制限も守られていない。

　広島県が集計している米軍機低空飛行目撃件数によると、九九年度の七百六十七件以来、八百八十四件、九百九十二件、千三十六件と年々増え続けている。本年度上半期（四―九月）は前年度同期より少し減っているが、それでも四百三十七件に上る。低空飛行も、近年は高度が高くなった、とみられていたが、本年度からまた低空が目立つようになったという。東城町では太陽熱温水器が破損した。高度百メートル前後と推定される例もあった。

　さらに目撃地域の広がりもみられる。県の集計でも本年度上半期の目撃市町村数は過去最多の二十となった。広島の監視団体「米軍の低空飛行の即時中止を求める県北連絡会」（会長・藤原清隆君田村長）によると「訓練コースを変更した可能性がある」（岡本幸信事務局次長）という。そんな変化は目撃情報が急に増えた三次市にもうかがえる。四月にはヘリが三日連続で夜間低空飛行し、不安を高めた。十、十二月にもかなりの爆音が聞かれた。

　日米合意では、米軍は「国民の騒音に対する懸念に敏感」と、自ら言及しているが、本当とは思えない。問い合わせにも「合意を順守している」と繰り返すだけだという。日本政府の態度も住民を向いたものとは思えない。温水器破損事故についても、損害賠償は行われたが、どれほどの高さでどう飛んだので事故になった、といった肝心の説明は一切ないままだ。

　六〇年に発効した日米地位協定は、さまざまな米軍優位規定を設けた不平等な内容のまま、一度も改正されずにきた。日本政府も運用での改善を図る態度に終始した。そこから低空飛行への対処の不徹底さが生まれていると言ってもいいだろう。

　地位協定見直しを求める意見書が、沖縄県の働きかけで、中国五県を含む各議会で昨年一斉に決議され、計二十八都道府県に広がった。協定の見直しと低空飛行中止を、住民に直結する地方から結束して求めていきたい。

http://www.chugoku-np.co.jp/Syasetu/Sh04020701.html

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