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【怪物・EATER物語】核融合発電は実現不可能 ITER誘致の裏目的は核兵器[槌田敦]
http://www.asyura2.com/0401/war47/msg/573.html
投稿者 なるほど 日時 2004 年 2 月 03 日 09:09:22:dfhdU2/i2Qkk2
 

(回答先: 使えない「使える核兵器」[田中宇ウェブログ] 投稿者 なるほど 日時 2004 年 2 月 03 日 04:39:13)

核開発に反対する
物理研究者の会通信
第39号2001年12月

【怪物・EATER物語】
核融合発電は実現不可能
ITER誘致の裏目的は核兵器

槌田 敦


T.核融合はエネルギーとしてまるで役に立たない

【石油枯渇では、核融合はまったく無意味】
 1960年代に原発が推進された理由は、「石油は30年で枯渇する」であった。しかし、当時から原発の事故の不安と放射能を残すというふたつの欠点については、推進側も認めていた。
 彼らも、多くの人達と同じように、未来のエネルギーを太陽光と位置づけていた。しかし、当分太陽光は完成しそうにもないので、比較的近い将来に完成しそうな核融合の開発を訴えたのである。つまり、原発は、核融合が成功するまでの「つなぎ」であった。図示すると次のようになる。


石油 → 原発 → 核融合 → 太陽光


 しかし、この図式は、1960年当初から破綻していた。それは、核融合の装置には、莫大な鉄やコンクリートの外に、ヘリウム、リチウム、ニオブなど希少元素が大量に必要になる。また海水中に豊富という重水素も分離しなければならない。これら希少資源を生産するのに石油が必要となる。「核融合は資源のない日本向き」と宣伝したが、大ウソであった。
 そこで、石油が枯渇すれば、石油の代わりに石炭を使用して核融合の装置と燃料を作ることになる。だが、そのような迂回作業で核融合発電するよりも、石炭をそのまま燃して発電する方が効率的に発電できるに違いない。
 したがって、当時すでに「石油が枯渇したら核融合」という主張は無意味であった。けれども、多くの人々はこのようには考えず、核融合を賛美した。石油枯渇で暗く寒くなる世界を想像する時、これを和らげる「ゆめ」が欲しかったのである。

【石油枯渇30年のウソ】
 ここで、石油が枯渇するという「30年」とは、原油の可採年数のことである。1960年には35年、1980年には31年であったから、間もなく石油がなくなるという説には説得力があった。しかし、この「30年で枯渇」も最初からウソだった。それは1940年に原油の可採年数は20年といっていたから、1960年には石油は枯渇している筈であったが、枯渇するどころか35年と増えていたのである。けれども、これを指摘する学者はいなかった。
 このウソが本格的にばれたのは、1990年になって、可採年数が45年になってしまったことである。地下から石油を大量に掘り続けたのに、石油は増えてしまったのである。それ以来石油枯渇説は消えてしまった。たまにそれを言う人もいるが、迫力はない。
 そもそもの間違いの原因は、可採年数ということばにある。人々はこれを採掘可能な年数と誤解したのである。これは、原油の確認埋蔵量を年間使用量で割った値と定義されている。ここで「確認」と書かれていることから、「未確認」の原油が存在する。そこで、この「未確認」の原油の量を追及すると、「未確認だから分かりません」という答えが返ってくる。分からないのに、可採年数ということぱを文字通りに解釈して、30年で石油は枯渇すると脅していたのであった。
 確認埋蔵量は、「現価格」と「現技術」で採油可能な量と定義されている。採油する技術がなければ地下に石油があっても採油できない。また、採油するのに石油の価格よりも石油を掘る費用の方が高ければ、利益が得られないから採油しない。これは石油がないのと同じであるが、地下に石油が実在しないということではない。
 可採年数が30年から45年に変わったのは、「現技術」の向上である。一方、「現価格」という経済的条件は分かりにくい。まず、「価格」とは需要と供給の関係で決まるという経済学の原理を思い出していただきたい。石油という資源は、欲しくなると価格があがり、採算がとれることになって、蓋をしていた井戸から石油が出てきて、需要を満たすことになる。つまり、石油は欲しくなると、出てくるのである。
 したがって、石油は当分枯渇しないという結論が得られる。しかも、石油の価格があがれば、石炭の液化など石油代替エネルギーの採算もとれるようになり、エネルギーの需要は満たされて、石油の使用量は少なくなり、石油は長持ちすることになる。

【天然ガスは事実上無尽蔵】
 そのうえ、地球には気体の石油、つまり天然ガスが豊富に存在する。原油採油のとき、同時に得られる天然ガスは、これまで全量焼却されていた。しかし、これを運搬する液化技術やパイプライン技術ができて、産地からいくらでも運べるようになった。現在の可採年数も石油のほぼ倍あり、枯渇を議論する段階ではない。
 日本の近くには、サハリンの天然ガスがあり、これは間もなく、パイプラインで全国各地に配給されるであろう。最近のパイプラインは海底に敷く。海はだれの物でもないから、漁業権さえ配慮すればよいのである。
 また、日本周辺は天然ガスの宝庫である。天然ガスは、10℃以下、50気圧以上で、水と結合してメタンハイドレートというシャーベット状の物質になる。500メートルよりも深い海底ではこの条件はどこでも満たされるので、地中から湧き上がってくる天然ガスはすべてシャーベット状態になる。そうすると、このシャーベットが蓋になって、その下の岩石の割れ目にある水が追い出され、そこに天然ガスが溜まることになる。
 日本の場合、奥尻、網走など北海道の周辺から三陸沖をへて千葉沖、そして遠州灘から日向沖にかけてその条件を満たす天然ガスが存在する。すでに八戸沖と浜松沖でメタンハイドレートが試掘されている。
 もはや、エネルギー問題は存在しない。文部科学省核融合開発室も「化石燃料はここ100年程度の範囲では枯渇は予想されない」と素直に認めている(原子力eye2001年11月号p14)。
 核融合開発はエネルギー問題解決のためではなく、後に述べる別目的のためである。

【核融合にはリチウムなど希少資源が必要】
 核融合反応は、化学反応と似ている。重水素(D)にトリチウム(T)を反応させて、中性子(n)とヘリウム(He)にし、熱(q〉を得る。


D + T = n + He + q


 燃料の重水素は、海水から得るなどという人がいるが、そのような工場はどこにもない。普通は湖か川の水を使う。ことさら「海水」というのは、誇大広告で大量に存在することを印象づける手段であり、奇弁術のひとつである。
 ところで、核融合に必要な資源は重水素だけではなく、トリチウムが必要である。これは一般に金属元素のリチウム(Li)を原子炉に入れて、中性子照射して作る。または重水炉(たとえぱ、カナダのCANDU炉)という特殊な原発の副産物として生産される。特にリチウムは、希少資源のひとつであって、水爆の原料だからその資源はアメリカとロシアが抑えていている。この外にも、超電導磁石に使うニオブやこれを冷却するヘリウムなどが大量に必要になる。これを生産するのに大量の石油が消費される。
 核融合炉に使用する鉄材は、定常トカマク炉の設計では2万4千トンと計算された。これは原発の20倍以上ということになる。これだけでも核融合は無意味であろう。その外、チタン、銅、錫などの金属資源も大量に使う。
 そしてこの資源を金属精錬するのに石油を大量に使用することになる。石油枯渇説が消えたのになぜまだ核融合かというと、核融合推進派は核融合は温暖化ガスを出さないからと言い逃れしている。しかし、核融合の材料を作り、また運転するために石油を大量に使う。核融合が炭酸ガスを少ししか出さないとはどういうことか!
 核融合推進派は、「ゆめ」の核融合にこだわり、「思考停止」状態に陥っている。

【トリチウム生産のために、原発10基が必要】
 核融合炉1基に必要なトリチウムを生産するには、原発が10基必要である。核融合は原発のようなプルトニウムや核分裂物質という放射能は出さないと宣伝しているが、実際はプルトニウムなどを原発の10倍も発生することになる。
 ここで大切なことは、トリチウムは半減期が12年と短いことである。生産工程での目減りを含めると、10年で半分になってしまう。そのため、アメリカでは、核兵器用トリチウム不足という事態が生じている。そこで、商業用原発を転用してトリチウムを生産しようとしている。

U.ITERは原発以上に危険

【ITERで扱うトリチウムは3キロ、核兵器工場並】
 これまで日本では、原研で扱ったトリチウムが最大で、10グラム程度だった。JT60では、水素と重水素しか扱っていない。重水素はほとんど核融合しないから、トリチウムをほとんど発生していない。
 しかし、ITERではトリチウム使用量は3キロと大量であって、核兵器工場並の使用であることに注意する必要がある。これをわずか3キロと考えてはいけない。
 水爆には、主に重水素化リチウムを用いる。原爆で作った中性子をリチウムに衝突させてトリチウムを生産し、これを重水素に衝突させて核融合させて中性子を得、連鎖反応させる。しかし、目減りがあるため、初期充填のトリチウムが必要である。この量は、小型水爆で最低3グラムである。したがって、ITERで必要とする3キロは、小型水爆の1000発分ということになる。これがITERが核兵器工場並という理由である。
 トリチウム1グラムの放射能は1万キューリー(3.7×1014ベクレル)である。1キューリーはラジウム1グラムだから、トリチウム3キロは3千万キューリー、つまりラジウム30トンという巨大な量の放射能を扱うことになる。

【燃えない物を無理に燃す固有の危険性】
 核融合推進派は、核融合には固有の安全性があるという。その意味は、原発は核分裂反応を制御棒の出し入れで制御して運転しているので、この運転操作を誤ると、原子炉暴走の危険がある。事実、チェルノブイリ原発事故はこの核暴走から核爆発に至った事故であった。核融合では、そのような制御をしている訳ではないから、暴走などあり得ない。これを、推進派は核融合固有の安全性といっている。
 しかし、固有の危険は暴走だけではない。核融合の場合、核分裂と違って、反応を制御する訳ではないから、暴走事故などあるはずがない。核融合推進派は、このような当然のことを言って、素人を煙に巻こうとしている。
 核融合は、原子核を衝突させ、結合させて反応させる。ところが、原子核はともに正の電荷をもっているので、反発しあって結合したがらない。そこで、1億度という高温にして原子核を加速し、無理に結合させて反応させようというのである。これがなかなか達成できないから、核融合はもたもたすることになる。
 この1億度という温度は、真空槽の中の重水素とトリチウムの混合気体を加熱してイオン化(プラズマ状態)にし、これに強力な磁場を掛けることによって得られる。問題はこの無理から始まる。この磁場にはTNT火薬約60トンのエネルギーが溜まっている。この磁場は超電導磁石によって得られるが、超電導は不安定状態だから、クエンチといって突然一部が崩れて安定な常伝導になることがある。そうするとこの場所で熱化が進み、液体ヘリウムが気化して爆発し、装置を壊す可能性がある。
 また、プラズマにはTNT火薬約1トンに相当するエネルギーが溜まっている。このプラズマも不安定で、しばしば崩れることがある(ディスラプションという)。この時、瞬時にエネルギーが放出されて、真空槽の壁を壊せば、内蔵しているトリチウムを全量大気中に放出することになる。
 このように核融合には、燃えない物を無理に燃すことから生ずる固有の危険性がある。これは、原発とはまったく違った危険性であり、核融合炉が暴走しないことだけで、核融合の安全性をいうのは、やはり奇弁術のひとつである。
 このような運転上の固有の危険だけでなく、核融合にはもっと本質的な固有の危険がある。それは、核融合で発生する中性子の数が、発生エネルギーあたり原発の4.5倍もあり、しかも、発生する中性子のエネルギーが、核融合では14Mev(ミリオン・エレクトロン・ボルト)であって、核分裂の6倍もある。そして、原発ではこの中性子は冷却水などで消費され、またエネルギーは1億分の1程度に減速されてから原子炉の壁に衝突する。ところが、核融合ではこの14Mevの高エネルギーの中性子が全部いきなり真空槽の壁に衝突する。これによる装置の放射化と劣化は厳しいことになる。
 したがって、核融合では真空槽の痛みが激しく、短期間に真空の維持ができなくなって、プラズマの温度が上がらなくなる。そして、無理に使えば真空槽の破壊となる。それに14Mevの中性子が真空槽の炉壁でどのような挙動をするのか、未だに分かっていない。この14Mevの大量の中性子は、核融合反応でなければ得られないから、ITERの真空槽が何回の核融合実験に耐えられるのか、まったく分かっていない。
 その結果、真空槽は短期間の運転で放射性廃棄物になってしまう可能性がある。ITER計画では、その量は運転終了時に、7万5千トンと発表された。設計変更の半値ITERでは3万9千トンというが、放射化した鉄材は真空槽だけでなく、周辺構造材や機器も廃棄物となり、またその他超電導材のニオブやコンクリートなどを含めればとてもその量では収まらないであろう。20年間使用すると言っているが、その場合おそらく一年に数回程度しか核融合実験はできないであろう。
 高エネルギーの中性子による影響だけでなく、物体に多数回衝突して低エネルギーになった中性子も一筋縄ではいかない。この中性子の漏れだしを約2メートルの厚さのコンクリート壁で防ぐという。しかし、壁を2メートルのコンクリートにすることはできても、広い天井のコンクリートは重くて、とても2メートルの厚さにすることはできない。そのため、中性子は宇宙に向けて漏れ放題で、上空を通った航空機の乗客は被爆することになる。そのうえ、この中性子は大気中の水蒸気の水素原子に衝突して地表へ逆戻りし、住民を被曝させる。これをスカイシャインという。
 それだけではない。低エネルギーの中性子は、普通の気体と同じ挙動も示し、配管の中を伝わって流れ出る。ITERなどの核融合炉は原発では考えられないくらい膨大な数の配管が、炉室との境のコンクリートを貫いているので、漏れ放題ということになる。
 これらの対策をするには、膨大な予算が必要である。しかし、半値ITERでは、予算の節約でその対策は絶望に近い。

V.トリチウムの危険性

【トリチウム被曝のメカニズム】
 核融合の最大の危険はトリチウムにある。トリチウムのICRP勧告ではコバルトの400倍も甘い基準になっている。その根拠は、トリチウムが弱いべ一タ線しかださないからである。これは薄い紙一枚も通過できないので、トリチウムが体外にある限り、あまり大きな問題ではない。これは本当である。
 しかし、これが体内に入るとどうか。ここに判断の分かれ目がある。このICRPの甘い基準は、水爆の製造を可能にするために設けられた。ICRPの基準作成にあたって、軍事を優先するアメリカやソ連の意向を無視する訳にはいかなかったのである。
 トリチウム事故の場合、通常、トリチウム分子(T2)として大気中に放出される。これは空気中の水蒸気と反応して、トリチウム水(THO)となり、呼吸によって体内に取り込まれるが、大部分は尿として排泄される。ここまでは推進派のいうとおりである。
 しかし、その一部は、生体反応によって、脂肪や遺伝子など体組織に取り込まれる。こうなるとなかなか排泄されない。特に、遺伝子に入ったトリチウムは、遺伝子を直接被曝させる。

【トリチウムの危険性】
 ICRPのトリチウム水の許容濃度は、1ミリリットル中に0.05マイクロキューリー(0.05μCi/ml)である。(キューリーとは、放射能の量の単位。近年の表記ではベクレルを使う。1Ci=3.7×1010ベクレル)。
 この許容濃度では、次に述べるような危険性があって(放医研、第9回環境セミナー報告書、1981年12月他)、安全は保証されていない。
@ 不妊と突然変異 マウスでは、体重1グラムあたり0.5μCi(許容濃度の1O倍)のトリチウム水の注射で雄マウスは一時的に不妊。不妊期前の子供に突然変異は8000匹中11匹、不妊期後の子供では32000匹中23匹。サルでは、体重1グラムあたり雄に0.5μCiのトリチウム水の注射で生まれた53万匹の子供のうち28匹に突然変異が認められた。これは自然発生の4倍という(日経新聞80.10.20)。
A 致死効果 リスザルでは、母体濃度が0.5μCi/mlで半分の卵母細胞が死亡する。これは許容量のわずか10倍である。
B 染色体異常 許容濃度でヒト培養白血球の染色体を細胞あたり0.1個切断する。
CDNA中のトリチウム崩壊DNAのなかにトリチウムを入れると、DNAは切断されたり、変質されたりして(シトシンはウラシルに変わる)、遺伝情報は混乱する。
D 発がん、寿命短縮の例もある。

【困難なトリチウムの閉じ込め】
 トリチウムは、冷えた金属容器に閉じ込めることができるが、熱した金属ではザルと同じで、自由に通過する。
 核融合すればプラズマは発熱するのでこれを冷却するために熱交換器が必要となる。核融合燃料として使用したトリチウムは、大部分が未反応として残るので、そのトリチウムはこの熱交換器の隔壁から常時漏れ出すことになる。漏れ出しを防ぐには熱交換器の隔壁の厚さを増やす必要がある。しかし、それでは熱交換は不可能になる。したがって、トリチウムの冷却水への漏れだしを防ぐことはできない。

【トリチウム回収には莫大な費用が必要】
 空気や冷却水に混ざったトリチウムを回収する技術がないという訳ではない。しかし、それには莫大な費用が必要となる。したがって、室内や冷却水に漏れたトリチウムはこれまで全量放出していた。
 米核兵器工場の場合、何回もトリチウム漏れの事故を起こしている。たとえば、1984年のサバンナリバー工場事故の場合、トリチウム5グラム(5万キューリー)を室内に漏らしたが、全量を60メートルの高さの排気塔から砂漢に放出した。
 動燃の再処理工場では、気体のトリチウムは排気塔から全量放出している。また廃液に含まれるトリチウムは、イオン交換樹脂で金属放射能を取り除いた後、全量海に捨てている。
 原発でも同様で、2次冷却水に含まれるトリチウムは全量海水に放出している。泊原発の場合、この濃度は0.3ベクレル/mlで、自然界の300倍である。特に、敦賀にあるふげん原発は重水炉なので、大量のトリチウムが日常的に放出されている。
 予算を半額にしたITERでは、トリチウムの回収費用を捻出できる訳がなく、原研がいうトリチウム回収は絵そらごとで、許されない口約束である。

【カナダ原発、米核兵器工場周辺でがん多発】
 カナダ原発は1次冷却水として重水を使う原子炉である。この重水は中性子を吸ってトリチウムを生成する。そこでカナダはこのトリチウムを重水から分離して、アメリカの核兵器工場に売っている。ところでこの重水中のトリチウムでも、熱交換器から2次冷却水に漏れたトリチウムはそのまま環境に垂れ流している。
 そのため、たとえば、ピッカリング原発の周辺では染色体異常のダウン症が1.85倍も発生し、小児白血病(血液がん)が2割増え、新生児死亡率も増加している。同じく重水炉である敦賀のふげん原発では、調査もされていない。
 核兵器工場ローレンスリバモア近郊で、皮膚がんが他の地域の6倍という著しく高い割合で発生していることが明らかになった(朝日95.9.20)。疾病管理センターは原因不明としている。がんの発生数が、放出される通常の放射能ではとても説明できないのである。残る原因は、やはりトリチウムしかない。
 アメリカ核工場や研究所14の施設の調査によれば、22種のがんが通常よりも高い確率で発生していることを政府は認めた(朝日00.1.30)。通常の放射能漏れの影響としては説明できないから、これも原因はトリチウム以外に考えられない。
 ITERは、すでに述べたように核兵器工場並のトリチウム3キロも扱う。しかも、核兵器工場とは違って、高温のトリチウムプラズマを冷却するため熱交換器を使用する。したがって、従業員や周辺住民の日常的なトリチウム被曝は、核兵器工場をはるかに越えることになろう。また、事故を起こしてキロ単位でトリチウムが放出されることになれば、その悲劇はチェルノブイリを超えることになろう。

W.そもそも核融合発電は実現不可能

【プラズマ安定化に失敗、実用化は無理】
 ITERは、トカマクという形式の核融合炉で、磁場を用いて真空槽の中の電離気体(プラズマ)の中に電流を発生させ、これによりプラズマを維持する。ところが、この方式ではプラズマが不安定で突然消滅してしまうことがある(プラズマ・ディスラプション)。この現象はたまたま起こるのではなく、原研のJT-60では毎週1〜2回の割で発生しているという。
 ITERのプラズマの中を流れる電流は2000万アンペア程度が予定されている。ここで、このディスラプションが起こると瞬間的にこの電流も消滅する。これによって、磁場は消えるが、その時、自己を保存するように、別の場所に電流を誘導する。これにより真空槽や排気装置や計測装置の中に、複雑な渦状の大電流が発生する。
 これらの渦電流は、相互に強大な力を及ぼすので、装置はねじ曲げられる。200トン程度の小さな装置ならば1センチも飛び上がることがある。ITERのような重くて大型の装置では飛ぴ上がることはないが、装置に大きな歪みが残る(塑性変形)・多数回のディスラプションでこの歪みが溜まれば、装置が突然破壊される原因となる。
 それだけではなく、プラズマが消滅した時、プラズマの中にはTNT火薬1トン程度のエネルギーがあり、これが瞬間的に解放されて、真空槽の壁に熱衝撃を加え、これを減肉する。
 このような力学的、熱的影響については、対策ができたとしても、そもそも何故ディスラプションが起こるのかが不明で、これが頻発することを防げない以上、仮に、核融合反応で発電することができたとしても、発電が毎週1〜2回の割で突然止まってしまうのでは、実用化はとても無理ということになる。

【真空槽の修理作業も無理】
 すでに述べたように、核融合の中性子は、エネルギー強度と量の両方で原発の比ではなく、DT反応で出る14Mevの強烈な中性子に耐えられる炉壁材料もない。また、すでに述べたように真空槽の壁はディスラプションによっても塑性変形や熱衝撃を受けて劣化する。
 さらに、プラズマに存在する熱はダイバータと呼ばれる装置に集められるので、このダイバータの劣化は激しい。したがって、真空槽の壁やダイバータは消耗品となるため、頻繁に交換しなければならない。
 一方、核融合による中性子は、真空槽の装置全体を放射化する。これも原発とは桁違いに大きい。したがって、この交換修理作業は、作業員を被曝させることになるので、人力ではとても無理で、すべてロボットを使う必要がある。
 しかし、このロボットは電子信号によって運転されるが、高い放射線を受けて被曝し、指令を間違え、狂って動き回ることになる。これではとても交換修理作業はできず、実用化はもちろん、ITERの修理さえ無理であろう。

【大きすぎて十分な加熱も無理】
 1996年末、アメリカ科学雑誌サイエンスが、ITERのような巨大装置ではプラズマは撹乱され、エネルギーを失い、十分な加熱は無理という記事を書いて、核融合の研究者をあわてさせた(Science96年12月6日号p1600)。この内容をサイエンス誌に伝えたのは、テキサス大学核融合研究所のドーランとコチェンロイターである。彼らが計算したところによれば、ITERは巨大過ぎて、小さいトカマク装置では問題のなかったプラズマの乱れを制御できず、核融合に必要な加熱ができない、というのである。
 したがって、核融合研究者が、ドーランたちの研究を無視して、ITERに巨額の費用を請求することは、不誠実極まりないことになる。核融合研究者たちが、もしも科学者として誠実であろうとするなら、ITERに限らずすべてのトカマク型装置の予算請求を一切中止して、総力をあげてドーランたちの数値計算の再計算をすることであろう。そしてドーランの研究結果が再確認されたのであれば、無意味となるトカマク装置の研究は中止すべきであろう。
 原子力分野からも同様の見解が出ている。元電力中央研究所研究員で、現東京大学教授の山地憲治氏は、「大型装置による実証はできるだけシミュレーション(計算)で代用するなどの工夫が必要であろう」と述べている(山地憲治、原子力eye,1998年9月号)。

【心ある核融合研究者にも、マスコミにも見放されたITER】
 アメリカ物理学会核融合部会長として、現大阪大学教授の長谷川晃氏は、トカマク型核融合は時期尚早であって、推奨できない、とエネルギー省長官に意見を述べた。その結果、アメリカは、1997年、ITER開発に参加しないことになった。
 長谷川氏のあげた理由は、@危険な放射性トリチウム、A強烈な中性子による炉壁の破壊、B高価な運転コストをあげ、失敗すると核融合の悲観論は決定的になる。そして、成功したとしても、1年前後で炉壁はぼろぼろになる、などであった。
 長谷川氏は、現在も、ITER建設反対の主張を続け、次のように述べている。社会的に受け入れられるDT核融合炉の可能性は将釆ともにゼロに近い。アメリカの核融合装置TFTRの経験から、ITERでは維持のための費用が大きく、総費用は2兆円を上回ると考えられる(日本物理学会誌2001年7月号p543)、と。
 現在、ITER建設に積極的なのは、原研の研究者とその周辺に限られている。それは特殊法人見直しで、原研がその対象になっているからである。しかし、その他の研究者は計画が遅れるにつれて、醒めた発言をするようになってきた。本年2月に、核融合研究者350人が非公式の会合を開いたが、統一見解には至らず議論はくすぶったままという(毎日01.11.14〉。
 マスコミもITERについては醒めていて、以前には、「核融合の研究は経済大国日本の義務」(日経88.12.7社説)と手放しで推奨していた日経新聞が、「まず、核融合が未来のエネルギー源たり得る保証がない点である。エネルギー源と考えるなら、現在の段階で取り組むべきことはほかにある」と主張を修正した(01年7月15日社説)。

V.嘘ばかりついてきた核融合研究者

【1970年代では、物理学者のほとんどすべてが核融合推進】
 私が、核融合に反対したのは、今から27年前であった。当時、原研がJT60という核融合実験装置を建設するというので、大キャンペーンをはり、物理学会誌の核融合特集で「核融合が成功すれば、人類の生存期間は大幅に延長されることは確実である」とまで書いた(日本物理学会誌、1975年11月号)。そこで、私はこれに反論する投稿をした。
 そのころ、原発に反対していた物理学者も、ほとんどすべてが核融合は原発よりクリーンと信じて、核融合を支持しており、公然と反対したのは私だけであった。したがって、会誌の審査委員の受け入れられるところとはならず、却下寸前となった。
 しかし、当時の物理学会誌の有馬朗人編集委員長(後の東大学長)には、会って直接意見を聞いてもらった。そして、この投稿論文をふたつに分けて採用してもらうことができた(日本物理学会誌、1976年8月号p598と12月号p938)。前編は『核融合発電の限界』であり、後編は『核融合発電の限界と資源物理学』であって、「開放系のエントロピー論」というその後の私の研究方向を決める最初の論文となった。

【1970年代の核融合推進の理由】
 当時の核融合推進の理由は次の5項目であった。@地上の太陽、A核融合は安価、B資源無尽蔵、C原発よりクリーン、D固有の安全性。
 地上の太陽。これは、まったくのウソである。太陽の中心の温度は1400万度であって、ほとんど核融合していない。その発生のエネルギーは、1g,1秒あたりわずか2ergに過ぎない。蚊の鳴く程度と言えばよいであろう。これに対して、人間の発熱量は、20,000ergだから、太陽の1万倍も発熱している。太陽の発熱量が大きいのは図体が大きいからである。核融合炉は、『地上の太陽』ではなくて、『地上の超新星』である。この超新星の爆発を装置の中で実現しようとしていることにそもそもの無理がある。
 安価。核融合をするには巨大な装置が必要なことが分かって、そのウソはすぐにばれてしまい、言わなくなった。
 資源無尽蔵、原発よりクリーン、固有の安全性については、すでに述べた。

【ITERではなく、怪物・EATER】
 このようなウソのうえに、核融合研究は、遅々として進まない。砂漢の逃げ水のように完成目標は遠のいていく。1950年代には、10年後に完成すると言っていた。それが、10年研究すると10年完成時期が伸びることになって、50年研究した現在、完成時期は50年後という。量初から言えば100年後である。
 核融合を研究しているのは、原研のJT60だけではない。大学での核融合開発費用も巨額である。すでに累積額は約1兆円で、世帯あたり約3万円になる。そして、やっと、わずかに核融合反応の中性子が発生したに過ぎない。
 そのうえ、ITERは怪物で、『big EATER(大食い)』という方が実態を正しく表現できる。この怪物は、膨大な資金と資源を喰らい、膨大な放射性廃棄物を垂れ流す。

【核融合は核分裂と本質的に異ならない】
 東大の山地氏は、すでに引用した論文の中で次のように言っている。
「核構造の中に閉じ込められたエネルギーの開放という点で核融合は核分裂と本質的に異なる点はなく、資源・環境の点からも決定的に有利とはいえない。ましてや、経済性は未知数であり、実用化を目指して今ただちにプロジェクト化する必要性は認められない。(中略)。実用炉として想定されているDT反応では、Li資源の制約、中性子による誘導放射能の問題がある。
 核融合の利用法として、電源としての経済性・環境特性に決定的に有利な点はない。(中略)。「地上の太陽」の実現というロマンだけで核融合の開発が許された時代は終わっている」、と。
 そして、彼は、大型装置ではなく計算で代用すべきと結論したのである。

Y.しかも、低コストlTERはもっと問題

【半値ITERは片肺核融合】
 ITERは、当初計画では、100億ドル(1兆円)計画であった。これを米欧露日の4極で分担することにしていた。しかし、米が抜けると予想され、また実質的には露も抜けて、欧日だけでは負担できない。そこで、何の根拠もなく半額にして、compact ITERと呼ぶことになった。費用の節約で、手抜きすることにしたのである。
 その結果、ITERの性能は大幅にダウンすることになって、十分な加熱も無理となっている。結局、DT燃焼の実験としてはアメリカのTFTR、ヨーロッパのJETがすでに発表した程度の成果しか望めないことになり、何のために高額の投資か、まったく意味不明の『半値・EATER』となった。

【トリチウムの確保が困難】
 建設費削減で、このITERではDT核融合に必要なトリチウムを生産しないことにした。そこでトリチウムを全量を購入することになるが、その輸送の危険については何ら考えられていない。
 また、トリチウムは、後に詳しく述べるが、水爆や中性子爆弾の材料である。アメリカはこの不足に悩み、原発を改造してトリチウムを生産しようとしている。したがって、簡単にはトリチウムは買えないことになる。その場合、ITERを誘致した国は、自国の原発を改造し、発電効率を抑えて、トリチウムを生産することになる。

【かえって高価となる半値ITER】
 政府は、日本がこの半値ITERを誘致する場合、7000億円の負担が必要と試算した(朝日01.11.25)。これは、おそらく原研の試算であろうが、その内容は、建設費5000億円、運営費700億円、運転費毎年300億円プラス解体費の合計で約13,000万円、その55%負担として7000億円という。
 まず、建設費について、原研のJT60でさえ建設費は2000億円を超えている。これよりもはるかに大きいITERが5000億円で済むはずがない。
 JT60では、当初建設費は1000億円と言っていたが、建設開始後2000億円となり、最終的には2800億円となった。これからも分かるように、研究者は常に始めは安く建設できるかのように言い、建設を始めてから、政府に泣きつくという方法を取る。打ち切れば、それまでの開発費はパーになる、と脅すのである。この予算獲得の方法は、動燃の高速炉『もんじゅ』でも、再処理工場でも同様である。したがって、建設費は当初計画の2倍以上ということになる。建設費は、ITERでは、すくなくとも1兆円となるであろう。
 運転維持費について、ITERは費用節約のため安価なステンレスを使用することになるから、装置がすぐに放射化し、長谷川氏のいうように1年前後でオシャカになってしまうだろう。年300億円、20年で6000億円でおさまる訳がない。運転維持費は、2兆円を超えることになるであろう。
 そして、原発の30倍を超える放射性廃棄物の処理費用は、1兆円を超えるであろう。建設費、運転費、廃棄物処理費を合計すると、4兆円を超えることになる。
 政府試算では、その55%が誘致国の負担ということになるが、アメリカはすでに脱退している。ロシアも支払い能力はない。残るはEUであるが、残りの45%を引き受けることはありえない。誘致に名乗りを揚げもしないのだから、せいぜい10%であろう。その結果、日本は、3兆6千億円の負担をすることになる。建設が始まれば、途中で止めることの難しい国際協力であることにも注目する必要がある。
 このITER開発の金額は、小泉内閣が約束した国債30兆円の1割を超え、世帯あたりにして10万円負担という巨費である。すでに医療への政府支出も減らされることになった。エネルギー問題では、九州最後の池島炭鉱も、政府の補助が減らされて採算がとれず、閉鎖された(日経01.11.29)。残る日本の炭鉱は北海道の太平洋炭鉱だけとなった。
 核融合は3兆6千億円もの費用をかけるに値しない。エネルギー開発なら、炭鉱への補助金や石油の備蓄など、他にすることがたくさんある。これは、すでに述べた日経新聞の社説を再引用するまでもなく、自明である。

Z.騙されるな立地点住民

【立地点の本命はどこか】
 これまで、北海道、茨城、青森の3つの県が誘致を表明してきた。この中でもっとも激しい誘致運動をしてきたのが、北海道と苫小牧市である。それだけに、苫小牧市民の反対運動も、他の誘致県とは違って、懸命だった。
 ところで、この提供される土地の最大の欠点は、千歳空港から飛び立ったばかりの飛行機の真下にあることである。咋年のコンコルド機墜落事故と最近のニューヨーク空港事故で、ふたつも直下型墜落事故があった。ITERは大きいので、墜落対策として天井を頑丈に作ることはできないから、この場所に建設することはそもそも不可能である。
 文部科学省は、本年10月専門家会合を開き、この苫小牧地区を不適地とした。その理由は、@電源確保ができない。A地盤が軟弱、B標高が低く津波対策不十分、という意味不明の判断をした。この程度の理由ならば最初から分かっていることで、ほぼ10年という長期にわたる北海道の誘致活動と元科技庁の対応での予算の無駄づかいは一体何だったのかということになる。残る基本的理由は墜落対策だけだが、これは六ヶ所でも関係するので、理由に上げられなかったと思われる。
 茨城県那珂町の場合、内陸であって、そもそも原子力施設には向いていない。それにITERの敷地予定地はあまりにも狭い。そして、その周りを民家が建て込んでいる。原子力施設を設ける場合、その周辺に広大な無人地帯が必要である。特に、トリチウムが地上で漏れ出す事故を考えると、拡散で薄めるための十分な距離が必要である。この点、那珂町では敷地境界での被爆に対応できない。
 那珂町の予定地は、1999年に臨界事故のあったJCOから数百メートルしか離れていない。原子力施設と民家の距離の必要性については、この事故で住民はよく知っている。したがって、この土地に、決まった場合、激しい反対運動が起こるのは確実である。それでも、この土地を候補地として残したのは、ITER計画の見通しも立たないこの時期に、誘敦場所を青森だけにしてしまうことにためらいがあったからであろう。
 青森県六ヶ所は、本命である。広大な敷地があって、3キロ離れた所に人家が1軒あるだけで完全な無人地帯である。すでに、このITER予定地と再処理工場と放射能埋設地など核施設のすべてを取り囲む迂回道路もできていて、誘致の準備は終了している。
 難点といえば、この予定地はあまりにも不便で、研究者は三沢市に住み、ここまで遠距離通勤することになる。特に、冬場は激しい風が吹いて、通勤不可能となり、研究員は研究所で寝泊りしなければならない。しかし、このような不便さがあって、外国人研究者に敬遠されることは、後に述べるITERの裏の目的には好都合である。
 もうひとつの難点は、天ケ森射爆場が5キロと近く、訓練爆撃した飛行機がITER予定地の上で旋回して帰還することである。また、この爆撃機はしばしば事故を起こしている。
 しかし、六ヶ所は経団連など中央団体が当初からこの地を推薦していることも参考にすれば、この地が本命であることが分かる。

【3万9千トンの放射能は永遠に地元保存】
 半値ITERの設計はまだ完成していないようで、どれだけ資源を使うのか、明らかでないから、どれだけ放射性廃棄物が出るかもわからない。通常は、炉の構造材と磁石と機器の3万9千トンと言っている。これは原発の約30倍の放射能である。
 それだけで済む訳がない。莫大な量のコンクリートや建材も放射性廃棄物になる。とても、処分場を探して、運び、処分できる量ではない。結局は、建設地にそのまま残され、チェルノブィリ原発のようにコンクリートで蓋をするだけの石棺に保管されることになるであろう。
 特に、超電導磁石に使う大量のニオブが、中性子を吸ってニオブ94になることである。この放射能は半減期が2万年で、20万年というとんでもない未来の子孫にまで負担を残すことになる。
 これまで国は、責任をもって放射能を撤去すると約束して原発を建設してきた。しかし、そのためには、放射能の受け入れ地がなければならない。そのような場所は結局見つからなかった。そこで、原発の放射能では、仮に預かるという形式にして、六ヶ所に運んでいる。これまで、青森県は、六ヶ所を最終処分地にすることを認めていない。
 国は、今後、放射能の撤去を約束しないことにした。核融合の場合も、発生した放射能は、現地処分を承知のうえ、誘致させることにした。青森県と茨城県知事は、これを受け入れて、ITERを誘致している。
 この誘致問題を決めるのは、県知事であると国はいう。しかし、知事の任期は4年であるのに、これをはるかに超える期間にわたって毒性のある放射能を受け入れる権利が知事個人にある筈がない。

【追加費用はすべて国と自治体の負担】
 すでに述べたように、費用をけちった半値ITERである。大部分の費用は、これを誘致する国が負担することになる。まして、その国の特殊事情で予算を超えた費用は、すべて誘致国が支払うことになる。そして、その一部は誘致県と地元市町村の負担となる。県や市町村が、利益を求めて誘致した以上、追加分を負担するのは当然である。
 実は、ITERは、立地点の企業の利益は少ない。それは核融合が巨大科学装置であって、地域の企業に分担作業させようにも、させるところがほとんどないからである。事実、那珂町の原研施設JT60でも宣伝ほどの効果がなかった。それでもなお、わずかなおこぼれがあるから、県内地元企業の要望で、県は誘致運動をすることになる。
 そして、結局は地元自治体の負担がどんどん追加されれば、その一部が地元企業にも流れて多少は儲かるのである。ITERを誘致した自治体が、ITERへの出費で破産しようと地元企業の知ったことではない。
 地元企業は、このような不正で儲けるべきではない。やはり堅実に農業など地場産業に頼るべきである。原発市町村は原発建設時には一時期好景気になっても、その後は経済的没落している事実をよく観察すべきであろう。

[.核融合を隠れ蓑にした核武装計画

【何故、日本だけが核融合に熱心なのか】
 すでに述べたように、ITERは、無意味で、困難で、高価である。アメリカは早々に撤退してしまった。ヨーロッパも及び腰である。ロシアにはそもそも参加する資金がない。それにもかかわらず、日本はこのITER計画を捨てようとはしない。それは、日本に核融合開発を口実にした核武装計画があるからである。
 日本が、すでに、核兵器を開発したことは、イギリスのスパイによって暴かれている。94年1月30日付の英国サンデータイムズは、「日本が核兵器製造に必要なすべての部品をすでに保有しているうえ、さらに濃縮プルトニウムを組み込むだけで完成する爆弾を製造した可能性もあるとする国防省の秘密報告が93年12月に内閣に提出されていた」と報じた(朝日94.1.31)。
 イギリスのスパイは、非常に正確な報告をするので、評価は高い。日本が核兵器の製造能力をもつべきだという外務省の秘密文書(69年)のあることは公然の秘密である。また、すでに閉鎖された『東海原発』が、軍用プルトニウムを製造する目的でイギリスから購入したことも、防衛庁の報告書で明らかになっている。もっとも、これはアメリカの妨害で、再処理はイギリスでおこなうことになり、日本は『東海原発』から軍用プルトニウムを確保することに失敗したことになっている。
 しかし、日本はこれで核開発をあきらめた訳ではなかった。特殊法人の旧動燃は、高速炉『常陽』を建設した。高速炉の燃料は、炉心とこれを包むブランケットから成り立っているが、このブランケットは濃縮ウランでなく天然ウランを使うので、ここで軍用プルトニウムが生産できる。旧動燃はこれによって、すでに30キロの軍用プルトニウム(原爆15発分)を生産した。しかし、この段階で、アメリカの介入があり、ブランケットを外すことになって、これ以上の軍用プルトニウムを日本は持っていない。この使用済み燃料は現在なお大洗事業所に保管してあるという。
 また、やはり特殊法人の電源開発は、青森県大間にカナダからCANDU炉を輸入する計画を立てたことがある。しかし、インドが、このCANDU炉から得た軍用プルトニウムで原爆を作り核実験したので、アメリカは日本の購入計画に介入し、これを妨害した。
 しかし、最近、アメリカは、日本に限定的な核兵器開発を許している。その理由は、中国が戦略核兵器から戦術核兵器に方針を変え、また実験を繰り返したからである。そして、インドやパキスタンが核兵器を所有したからである。この3国の核をアメリカが直接支配して、核攻撃すると脅すのは得策ではない。そこで、日本に核開発させて、アジアの核の均衡をとらせるのがもっとも良い、というのであろう。
 このアメリカの態度の変化に乗じて、旧動燃は、『もんじゅ』を建設して、ブランケットで年間60キロの軍用プルトニウムを生産することにした(原爆30発分)。そして、このブランケットの使用済み燃料と、すでに所有している『常陽』の使用済み燃料から、軍用プルトニウムを得るために、この専用再処理工場『RETF』を建設している。これにより、日本は、原爆の連続生産が可能になるのである。
 しかし、もんじゅの事故と隣の再処理工場の事故が重なり、現在、この計画は頓挫しているが、旧動燃は名前を核燃機構と改め、この2つの施設を再開しようとしている。けれども、これだけでは、水爆はできない。これに必要なトリチウムを日本は持っていないからである。原研が所有しているのは10グラム(水爆3発分)に過ぎない。
 そもそも、核融合研究は、水爆の研究ではじまった。磁場で閉じ込めるという方法は水爆では使わないが、核融合発電に用いる反応の詳細は、水爆や中性子爆弾研究に直結する。それだけではなく、日本は、原爆の所有に加えて、核融合研究を口実にして水爆(中性子爆弾)も保有をしようとしているのである。
 これを説明するには、まず、水爆とは何かを説明する必要がある。

【水爆とは何か】
 水爆の基本的構造は、@原爆部分、A水爆部分、B追加原爆部分の3つの構造から成り立っている。
 原爆部分では、濃縮度96%以上の軍用プルトニウムを約2キロ用意し、その周りを火薬で包んでいる。この火薬を点火すると、プルトニウムの体積は約半分に圧縮(爆縮)されて、臨界条件を満たし、核爆発が起こる。
 水爆部分は、重水素化リチウム(LiD)と3グラム以上のトリチウム(T)で構成されている。これが、原爆の爆発で生じたX線で加熱され1億度を超える温度になり、DT核融合反応が起こり発熱する。また原爆とこの核融合反応で生じた中性子(n)がリチウム(Li)に衝突してトリチウムを生産し、これがDT核融合反応を起こして連鎖反応となる。
 そして、追加原爆部分は、高濃縮のウラン(U)10キロ程度で構成されている。ここに、原爆や水爆部分の爆発で生じた中性子が供給されて、核分裂反応が追加される。
 つまり、水爆には、2キロの軍用プルトニウムと3グラム以上のトリチウムと10キロの軍用ウランが必要になる。中性子爆弾は小型水爆であって、小さいために連鎖反応の損失が大きく、トリチウムは水爆よりも余計に必要となる。

【ITERは、水爆開発の口実】
 原爆開発後進国として、日本はあからさまな核開発は許されていない。そこで、平和利用を口実にする。日本の原発で、すでに述べた東海原発は老朽化して廃棄してしまったので、軍用プルトニウムを生産できる原子炉は日本にはなくなってしまった。
 通常の原発で作られるプルトニウムでは、プルトニウム239の濃度が60%程度と低く、原爆は作れない。高速炉は費用がかかり、事故が多発するので、これを維持する国は日本だけになってしまったが、それでも日本は、事故で動いていない高速炉『もんじゅ』を断固運転再開と頑張っている。それは、この炉と高速炉『常陽』以外に、プルトニウム濃度が96%を超える軍用プルトニウムを生産できる原子炉を日本は持っていないからである。
 このようにして、軍用プルトニウムを確保したとしても、水爆や中性子爆弾をもたなければ、一流の軍事大国にはなれないと考える人は多い。そこで、トリチウムを確保するために、またも平和利用を口実に使おうとしている。それが、ITERなのである。ITERに対する真剣味が他国と違うのは、こうした事情がさせるのである。
 日本が日本国内にITERを建設できれば、まず、日本人にトリチウム技術の習得ができる。それだけでなく、トリチウムを3キロ確保してもよいことになる。これは、水爆で必要とするトリチウムの約1000発分、中性子爆弾なら約100発分を確保できる。

【着々と進む日本の核開発】
 一方、日本での核開発の法的準備は着々と進んでいる。1978年には、参議院で、法制局長官が「自衛のための必要最小限度を超えない範囲にとどまる限り、核兵器、通常兵器を問わず保有を禁ずるものではない」と答弁し、その後繰り返し発言して、国会論議として確定させた。社会党、共産党もこれに反論していない。
 そして、98年には、参議院予算委員会で、大森内閣法制局長官は、公明党による憲法上核兵器の使用についての質問に対して、「わが国を防衛するために必要最小限度にとどまるなら可能である」と述べ、保有から使用へ一歩前進させた。これについて、各党派が何か対応したという話は聞かない。
 この「使用する」という点で、もっとも重要なことは、「どこでどんな核兵器を使用するのか」ということである。これについては、以前に民社党の質問に、防衛庁が「核地雷」と答えたことがある(参議院予算委員会1982.4.5)。当時の情勢では、これが北海道に埋設するものであることは明らかであった。この議員は、思わぬ方向へ議論が展開したことにあわて、突然に質問を打ち切ってしまった。
 どこで、どのような核兵器を使用するのか、をしっかりと議論すれば、憲法で許される核兵器の本質があきらかになる。まず、他国の領土を攻撃するのに核兵器を使用すれば、憲法に違反することはだれでも認めている。政府は、防衛的に核兵器を使用するのであれば、違反にならないと解釈し、野党もそれに異議を唱えていない。防衛的とは国内での使用ということになる。
 しかし、その場合、通常兵器と核兵器は質が違うことに注意しなければならない。通常兵器が国民を犠牲にする場合には、防衛のために仕方がなかったという論理を使う。しかし、核兵器の場合、あまりにもその効果が大きいために、侵略してきた外国兵を攻撃したのか、それとも国民を攻撃したのか、区別がつかないことになる。しかも、戦後に国内に放射能汚染を残すことになる。
 したがって、核兵器を防衛的に使用することはあり得ず、すべてが攻撃的核兵器である。これまでの国会論議には、この点が欠けている。なぜ、社会党や共産党が、この点から核開発に議論を仕掛けなかったのか、まるで分からない。
 このままでは、ITERに付属するトリチウム工場は日本の中性子爆弾の工場となる。そして、六ヶ所の隣村にある東通原発でトリチウムを生産することになる。このようなことを、何も発言しないで、許しても良いのであろうか。


(編集後記)この核融合に関する記事は、たんぽぽ舎により、図表などを追加して、パンフレットとして発表する予定となっている。

発行所 核開発に反対する物理研究者の会
           横浜市緑区寺山町524
会費(通信)実費相当 6号分1000円
口座番号  『核開発反対の会』00160-3-615391

http://env01.cool.ne.jp/ss03/ss03039.htm
http://env01.cool.ne.jp/index02.htm

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