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【ワシントン中島哲夫】米中央情報局(CIA)のテネット長官は23日、イラクの大量破壊兵器捜索を指揮してきたCIA特別顧問、デビッド・ケイ氏が辞任したと発表した。
ケイ氏は同日、ロイター通信に対して「イラクは湾岸戦争(91年)の後、生物・化学兵器の大規模生産を再開せず、大量の備蓄はなかった」との判断を示した。イラクでの大量破壊兵器の米側捜索責任者が大量の備蓄の可能性を否定したことで、ブッシュ政権がイラク戦争前、フセイン政権打倒の大義名分として主張した「大量破壊兵器の差し迫った脅威」は、存在しなかったことがほぼ確実になった。
ケイ氏は元国連査察官で、昨年6月、CIA特別顧問に任じられ、1400人規模の捜索チームを指揮した。同10月、米議会への暫定報告で「大量破壊兵器は未発見」と明言、同12月には米メディアが「ケイ氏は辞任の意向」と報じていた。
辞任発表後、ケイ氏はロイター通信との電話インタビューで、(1)湾岸戦争終結時点で存在した生物・化学兵器は、国連の査察とイラクの独自対応を通じて廃棄された(2)これらの兵器の大規模な生産をイラクが再開しなかったことを示している(3)90年代中ごろ以降、これらの兵器の大規模な備蓄は存在しなかった――との趣旨を明言した。
また、核兵器については、「極めて初歩的な計画の再開」を示唆する兆候が見つかったと指摘した10月の暫定報告がそのまま最終結論になると述べ、重要ではないとの認識を示した。
これらの判断は、関係者の事情聴取や書類資料の精査を通じて固めたもので、大量備蓄の物証は一切ないとケイ氏は述べた。また、今後10年を費やせば未発見のものが見つかる可能性はあるが、全体の「おそらく85%程度」は既に発見し、実態把握に必要な作業はほぼ完了したと語った。
ケイ氏は未発見の兵器が少量、どこかに存在する可能性を否定してはいないが、6月に予定されるイラク側への主権移譲の後は従来のような徹底調査が「ほぼ不可能になる」とも指摘、現在以上の進展は見込めないという判断を示唆した。
辞任の理由についてケイ氏は「複雑な諸事情」があると指摘。その一部として、捜索チームが大量破壊兵器の調査に専従することを任務受諾の条件としていたのに、分析官らがゲリラ攻撃対策などに回されていることを挙げた。ブッシュ政権が大量破壊兵器発見への期待を失いつつあることを示す現象と見られる。
テネット長官はケイ氏の後任に、元国連査察官のリチャード・ダルファー氏を起用した。同氏も最近、イラクの大量破壊兵器について「見つからない理由はおそらく、そこにないからだ」と米メディアに語ったが、CIAが公表した就任の弁では、先入観を持たずに任務を果たす姿勢を示した。
◇開戦の正当性をめぐる疑問再燃か
【ワシントン河野俊史】イラク戦争終結後、米中央情報局(CIA)特別顧問として8カ月にわたって大量破壊兵器開発の証拠探しを率いてきたデビッド・ケイ氏が23日、職を辞した。ロイター通信のインタビューで大量破壊兵器の大規模な備蓄を否定したケイ氏の発言は、直接の当事者の「結論」だけに重い意味を持つ。ブッシュ政権はさらに捜索を続ける姿勢を見せているが、イラク戦争の根拠とされた「差し迫った脅威」の存在が揺らいだことで、開戦の正当性をめぐる疑問が再燃する可能性も出てきた。
CIAによると、ケイ氏は辞表の中で「多くの未解決の論点があるが、イラクの旧政権による大量破壊兵器開発をめぐる残された問題に回答が得られると信じている」と述べたという。しかし、ロイター通信のインタビューは、ケイ氏が個人としてはすでに大量破壊兵器の存在に否定的な結論に達していたことを裏付ける形になった。
大量破壊兵器をめぐっては、チェイニー副大統領が22日に放送された全米公共ラジオのインタビューで「発見をあきらめてはいない。イラク中の潜伏場所や弾薬集積場を調べ上げるには、まだ相当の時間が要る」と語ったほか、ライス大統領補佐官(国家安全保障問題担当)も今月9日、「真相究明の条件が今ようやく整った。フセイン(元大統領)がいた間は(捜索は)できなかった」と記者団に述べ、さらに捜索を続ける構えを強調している。
一方で、ブッシュ政権は昨秋以降、大量破壊兵器そのものではなく、「大量破壊兵器開発の『プログラム(計画)』が確認された」と微妙な軌道修正を図り、大規模な備蓄が発見されない場合の予防線を張っている。ブッシュ大統領も20日の一般教書演説で「大量破壊兵器に関する多くのプログラムを確認している」と述べ、脅威をあおった昨年の一般教書演説の内容を言い換えている。
イラク戦争の理由についても大量破壊兵器の問題だけでなく、「旧フセイン政権の圧政からの解放」を付け加え、論理のすり替えともいえる対応を見せている。
米国内では大量破壊兵器の有無にかかわらずイラク戦争を正当化する世論が大勢を占める。しかし、米国がイラク戦争の正当化の根拠にあげる02年11月の国連安全保障理事会決議はあくまで大量破壊兵器の脅威に関するものだ。インタビューでのケイ氏の証言は、対イラク武力行使の正当性をめぐる問題の原点を国際社会に問いかけることになるだろう。
◇「米国は間違い犯した」 米カーネギー国際平和研究所研究部長
ブッシュ政権がイラクの大量破壊兵器の脅威を誇張したとの報告をまとめた、米カーネギー国際平和研究所のジョゼフ・シリンシオーネ研究部長の話
(ロイター通信に)イラクに大量破壊兵器の大規模な備蓄は存在しなかったと明言したケイ氏の発言は、今週、ブッシュ大統領らが(一般教書演説などで)述べた、兵器関連プログラムは存在したとの主張と矛盾する内容だ。
ケイ氏が辞任を決めただけでなく、こうした発言までしたのは、うんざりしたからではないか。大統領はケイ報告を援用しイラク戦争を正当化してきた。そこで、間違いを正そうとしたのだ。
イラクでの調査報告書の作成を始めたケイ氏に、国家安全保障会議の担当者から、ブッシュ政権の主張を支えるような内容にするよう、非常に強い圧力がかかったことを私は知っている。これが辞任の一因ではないか。
私はケイ氏を何年もよく知っているし、開戦前にはイラクの大量破壊兵器について議論もした。当時彼は、存在を確信していた。だが、何も見つからず、彼と米政府の誤りが明らかになった。彼にはそれを認める誠実さと勇気があった。大統領も見習うべきだ。
米国は、間違いを犯したのだ。いまや、(イラク)戦争の最大の根拠が事実ではなかったことが疑いもなく明らかになった。これまでも、大量破壊兵器の存在を疑う指摘は多かった。ブッシュ政権は、ケイ氏の今回の発言で、兵器の脅威を排除するため戦争は正当化されるとの主張を継続できなくなった。
政権は今後、イラクの解放や(フセイン政権による国民の)虐殺、世界の安定化といったことに話題をそらすだろう。 【聞き手・ワシントン和田浩明】(毎日新聞)
[1月24日16時24分更新]
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20040124-00001027-mai-int