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多数決原理の横暴と、アイヌの「ウコチャランケ」
http://www.asyura2.com/0401/war46/msg/101.html
投稿者 縄文人 日時 2004 年 1 月 04 日 14:53:37:bfek92EqWeCqg
 

元旦を迎えて放映された「新春対談」で耳にした、
犬養道子さんの次の言葉が、深く心に刻まれました。

「『理解』は、英語で、アンダースタンド。つまり、下に立つ。
 だから、本当に理解するためには、自らを下方に置かなければならない」

犬養道子さのこの解釈を聞き、突如、胸に蘇ったものがあります。
アイヌ語の「ウコチャランケ」という言葉です。

「ウコチャランケ」とは、
 ウ=互い、
 コ=それ、
 チャ=言葉、
 ランケ=降ろす
つまり、お互いが胸の内に持っている言葉を、そこにおろし、
十分に納得し合い、公正に判断しようということです。

これに対して「民主主義」では「多数決原理」が作用します。
つまり、あることを決めるのに、採決して選択決定する。
これは民主的に見えながらも、少数意見は切り捨てられてしまいます。

アイヌの社会では、多数決によってではなく、
ウコチャランケによって物事が決められていたと言います。
ウコチャランケで重要なことは、「決定」そのものよりも
「みんなが参加して、心の底から話し合う」こと、
そしてその場とプロセスを非常に大事にしていたということです。
そこには「問答無用」の強行も、強者、多数派の横暴もありません。

これに対して議会民主主義では、「数の論理&力学」が支配します。
多数派が容赦なくどんどん都合の良い法律を定めていき、
そして「法の正義」の旗のもと、やがて暴走が始まっていきます。
ヒトラーのドイツもその暴走で悲劇を生み出しましたし、
ブッシュのアメリカでも「違憲」の「愛国法」が社会を支配しています。
そして日本も「違憲」でありながら「イラク特措法」が自衛隊を送り出し、
さらには「憲法」をさえ「数の論理」で変えてしまうかもしれません。
要するに、数さえ多ければ何でもできてしまう。
そういった危険性が、民主主義の多数決原理には内包されているのです。
しかも「多数化工作」は、マスメディアさえ活用すれば思いのまま。
こうなると、民主主義はいとも簡単に「衆愚政治」に変貌してしまいます。

犬養道子さんの祖父は犬養首相で、あの515事件で
「問答無用」の凶刃に倒れました。
だからこそ「アンダースタンド(下に立つ)」を願うのでしょうか。
下に我が身を置けば、いろんな人の胸から漏れ落ちる
いろんな声(思い・言葉=チャ)が聞こえてきます。
それらを汲み取って考えてこそ、本当の政治も可能になるのだと思います。

かつて「ウコチャランケ」をテーマに書いたエッセイがありますので、
その中から一部を以下に引用します。
多数決とは別の、ウコチャランケ
http://www.creative.co.jp/space/social/essay/e200005.html
  ………………………………………………………………………
さて、ウコチャランケ…。ぼくはそこに「共生の知恵」を見るような気がする。
みんなが互いに(ウ)、そこに(コ)それぞれの言葉(チャ)を降ろす(ランケ)ということは、つまりは、「そこに」いろいろな言葉(意見・思い・考え・アイデア)がずらり出そろうということだ。
その中には「ええっ?」と驚くような意見があるかもしれないし、思わずむかついてしまいそうなイヤな意見もあるかもしれない。
が、人それぞれ、立場も年齢もそれぞれなのだから、そうであって当然のこと。
この場合に大切なことは、「人は決してみな同じではない」という事実を客観的に再確認し合うことであろう。
とは言っても、あえて意見の違いを際だたせて、激しく議論したり、対論しようというわけではない。
大切なのはあくまでも「自分の言葉」を「素直に降ろす(表現する)場」の確保であって、これなくして新しい知恵も方法も見つからない。
要するに、まずいろんな言葉をフラットに並べてみることなのだ。
そこから初めて問題の本質も出口も見えだしていく。人によっていろんな言葉(チャ)があるということを知ること自体に、大きな意味があるのではなかろうか。
次に大事なことは、ランケ(降ろす)ということだ。
ご注目いただきたいのは、言葉を「上げる」ではなく「降ろす」としていることだ。
これはこれまでの社会常識とは全く逆の営みである。
というのも、これまで私たちは言葉を「上に掲げる」営みに終始してきたからだ。
そもそも議会で原稿の棒読みが行われているのも、その結果である。
言葉というものは大勢の人から見上げられるものだから、どこから見てもスキがないように上手に論理的に飾り立てられなければならない。
が、これでは言葉が死んでしまう。国会答弁が「言語明瞭意味不明」と言われるゆえんも、まさにここにある。
これは別に議会に限ったことではない。
言葉は常に上に掲げられてきた。
書物を出版することを「上梓する」ということなど、まさにその最たるものであり、出版自体が社会の上層に言葉を掲げる営みであった。
だからこそ言葉は飾り立てられ、それとともに本来のチャ(思い)のいのちは萎えていった。
これであっては本当のチャランケはできない。言葉(チャ)はランケ(降ろされ)て始めていのちを保ちうるからである。
  ………………………………………………………………………

大声で叫ぶ者、大勢で叫ぶもの、力をバックにおどすもの、
そのなかでは、小さな市民の嘆きやため息はかき消されてしまいます。
しかし、下に身を置いて(立って)耳を澄ませば、
いろんな人たちの思いや気持ち、意見などが届いてくる。
それが本当の「理解=アンダースタンド」というものでしょう。

今年の元旦の「初耳」で、
「理解」の意味が「アンダースタンド」と「理解」できたことに、
なんとなく嬉しく思うと同時に、
いまの日本の社会にウコチャランケの精神が少しでも蘇るよう、
心から願わざるをえません。
http://www.creative.co.jp/top/main.cgi?m=388

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