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(回答先: テスト 投稿者 クエスチョン 日時 2004 年 5 月 18 日 22:03:06)
手記「人質」となって 今井紀明 2.占領への抵抗 大衆支持 民兵と対話 高遠さんが仏教説く【東京新聞】
http://www.tokyo-np.co.jp/hitojichi/
カタールの衛星テレビ「アルジャジーラ」などを通じて世界に流れた私たちの映像の撮影が終わると、武装した男たちは再び温厚になり「ソーリー、ソーリー(すまなかった)」と繰り返した。ジェネラルと名乗る男との会話で、私たちのスパイ容疑は拘束後すぐに晴れていた。
私たちはまた目隠しをされ、車で別の場所に移動した。着いたのは二十畳以上ある集会場のような部屋で、民家の一部のようだった。壁に沿うように木製の長いすがあり、床にはじゅうたんが敷いてあった。
ジェネラルが部屋に入り、続いて撮影の時にいた民兵A、「リーダー」と呼ばれる男の二人が入ってきた。
ジェネラルは高遠さんに「日本人は何を信仰するのか」と興味深そうに尋ね、高遠さんは自分は仏教徒だと答えた。また日本には、自然界のすべてに霊的な存在が宿っている−という考え方があることを説明したが、「アッラーだけが神」と信じる彼らには理解し難かったようだ。
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それでも彼らは少しずつ高遠さんの話を理解するようになっていった。「神のとらえ方はいろいろあっていいのでは」という思いが伝わり、「ムスリムだけがよい」と述べていた彼らが変わり始めた瞬間を見た私は、対話による互いの理解の大切さを知った。
ジェネラルは「明日か明後日には帰す」と言って、リーダーとともに去っていった。
「生きたまま焼く」という脅迫とともに、私たちのことが、三日間を期限とする「自衛隊撤退」の取引に使われていたとは、拘束中は知るすべもなかった。それを知るのは帰国後のことだ。
民兵Aが私たちの監視役となって残った。銃剣と、大きな手投げ式の爆弾を持ち、胸のポケットには三、四個の手りゅう弾とコーランが入っている。だがその印象とは対照的に、Aは非常に温和な性格の持ち主だった。彼はアラビア語しか話せないが、トイレに行くときは優しく手を引き、他の民兵に買わせた飲み物を飲ませてくれた。
外からは断続的に空爆らしき音が聞こえる。地響きのような「ドン」という音。米軍の爆撃機の飛ぶ音も聞こえた。郡山さんは「迫撃砲の音だ」と言う。民兵Aは音の聞こえる方を指さし、「サディーク(友達)」とほほ笑みながら言った。彼の友人が撃っているということなのだろう。
夜、私たちはまた目隠しされ、車で移動した。別の家に到着し、目にまいた布を取るとカラシニコフを構えた民兵がいて驚いたが、指示に従って床に就いた。
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二日目の朝、奇妙な光景を見た。近所の人かどうか判断できないが、十人ぐらいの人々が入れ代わり立ち代わり、私たちに「アッサマール・アライクム(こんにちは)」とあいさつに来る。民兵Aも親しげに話をしているので、日本で言う「テロリスト」のイメージはまったくない。民兵たちは武装していても民衆の中で支持されていた。彼らのしていることは占領へのレジスタンス(抵抗)なのか、と思いながら昼ごろまでをすごした。
夕方、目隠しをされ移動する。車内ではずっと頭を下げていなければならず、少しでも上げるとたたかれる。
着いた部屋では晴れたはずの「スパイ容疑」をまたもかけられ、私たちは目隠しのまま同じことを説明しなければならなかった。私たちのいら立ちは次第に高まっていった。
(2004年5月18日)