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(回答先: 個人情報の使われ方 [プライバシー・クライシス] 投稿者 なるほど 日時 2004 年 4 月 05 日 10:02:21)
デジタル・ヘル―サイバー化「監視社会」の闇 古川 利明【著】
542p 19cm(B6)第三書館 (2004-04-01出版)
[A5 判] NDC分類:007.3 販売価:\2,100(税込) (本体価:\2,000)
http://bookweb2.kinokuniya.co.jp/guest/cgi-bin/wshosea.cgi?W-NIPS=9978135170
はじめに―「デジタル・ヘル」がやってくる
デジタル・ヘル。IT化が進んだ先にある“地獄”である。
社会のあらゆる方面でのコンピューター利用がひろがり、その度合いが急速に深化していった結果、これまでとうてい信じられなかったようなことが可能になった。
●カーナビを使えば、この先の十字路をどちらに曲がれば目的地に着くか教えてくれる。
●自宅でパソコンに向かうだけで、銀行振込みも、美術品オークションへの入札参加もできる。
●外出先で自宅のドアチャイムに反応して応答。デジカメ画像で確認して、空巣狙いを110番
できる。
●デジタルカメラでデータ化された犯人の顔写真と監視カメラに写った人物との照合で変装も見
破れる。
●ケータイからいくつかのデータを入力するだけで、今すぐどれだけお金を借りられるかファイ
ナンス会社が教えてくれて、借り入れる。それのお金でケータイで買物、ケータイで支払い決
済。
●勤め先の会社では入口にひとりひとり瞳のまわりの虹彩で社員を識別できる装置が導入された
ので部外者の無断立入りの心配がなくなった。
●北海道にいても、九州の住民票がオンラインで入手できるし、登記簿謄本も法務局まで行かな
くとも閲覧できる。
●ICチップ入りの迷子札を身につけさせたから、俳諧癖のある祖母がいなくなっても、すぐ発見
できる。
いずれも、すでに実現しているか、もうすぐ実現できる。
たしかに便利になった。安全で安心なくらしができるようになった。もっともっと便利で安心
できるくらしが未来のユビキタス(どこにでもコンピューターのある)社会が待っているだろ
う。
ところが、予測される現実の近未来図はきわめておぞましい社会だ。そうなってしまう理由は
三つ。
第一に、ひとつひとつはたいへん便利で安全・安心を目指すコンピュータ化システムであっても、それらが相互に結びつけられて流用されていくと、とんでもないガンジガラメの監視社会を作ってしまうこと。
第二に、コンピュータは次々といくらでもデータを蓄積していって永久に忘れてくれないから、その膨大な蓄積によって、私たちひとりひとりを窒息させてしまうこと。
第三に、サイバー技術の急速な進歩によって、監視社会化を後戻りできないかたちで強く推進するツールが続々と生み出され、実用化されていくこと。
具体的に見ていこう。カーナビは実に便利だが、逆方向から見れば、あなたがいつどこでどの方向にドライブしていたか、全部データ化されることになる。同様にネットオークションもあなたの外出記録もサラ金からの借金も虹彩データもデータ化されることになる。一方で中学生のときの出来心の万引きも、痴漢と間違われて警察沙汰になったのも、匿名のつもりで出したいたずらメールも、全部データ化されて、あたかもブラックホールが星を吸い込むように、あなたの背番号のもとに集められる。何の本をいつどこで買ったか、どのレストランで誰と何を食べたか、山の手線に何回乗降したか。本にも靴にもハンドバッグにもICタグが付いて、あなたの全行動をデータ化する。その個人情報が当局によって“まっとうに”利用されるのはもちろん、流出したり、流用されたり、流通したりする。
だれも自分自身はそんなふうになってほしいとは思わないが、社会全体がいつのまにかそうなってしまう。そんな「サイバー情報ファシズム」が行きわたったデジタル・ヘルがついそこまでやって来ている。
本書は、五章構成になっている。
第一章「監視カメラ」が大量増殖していく社会
第二章「電話盗聴・電子メール盗み見」の歯止めなき拡大
第三章「住基ネット=国民総背番号制」でプライバシー総剥奪
第四章「個人情報保護法」はいかにして歪められていったか
第五章「サイバー情報ファシズム化」への道
第一章では、新宿歌舞伎町だけで五十台ある街頭監視カメラが、その場のその時の映像を撮っているだけでなく、そこに映る通行人のデータの永久保存を視野にいれていること、全国に同様のカメラが続々増殖していることが明らかにされる。全国七百ヶ所以上の主要道路重要ポイントに設置されたNシステムが通過全車両のナンバーと乗員の顔データを収録していることと合せて、警察でどのようにデータ処理をしているかは秘密のベールに包まれている。菅直人のスキャンダル暴露にも利用されたというが、誰がいつ、どこにいたかのデータがとめどなく警察に累積されているのは間違いない。
第二章では、日本の通信傍受法だけでなく、全世界的規模で電話とメールの盗聴盗読が実行されている現状をつぶさに見る。あなたがこれまでもこれからも発信する全てのメールがあなたの背番号をキーコードにして一字一句残らず保存され、利用されることも覚悟しなければならない日が遠からず来そうである。
第三章では、すでに始まっている、日本国民全員に対する住基ネットと呼ばれる国民総背番号制のもとで、いかにプライバシーが収奪されていくかを知る。あなたの過去のどんなささいなことも、他人に知られたくないちょっとした過失や病気も、一たびあなたの個人情報としてとり込まれたら永久に保存されひとり歩きすると思わなくてはならない。
第四章では、そうした個人情報の野放図な取り扱いに歯止めをかけるはずの「個人情報保護法」なるものが、本来の趣旨とは離れて(というより、それが彼らのホンネの目的だったようだが)公明党の与党入りによる九九年体制のもとで、いつのまにやら「池田大作情報保護法」ともいうべき、言論出版弾圧法になじまげられていった過程を検証する。
第五章は、結論部分である。時間がない人はこの章だけでも読んでほしい。いたるところにコンピュータが埋め込まれ連動しているユビキタス社会では、迷子探しも外出先での業務環境呼び出しもOK。買いたい商品を持ってレジを通過するだけでポケットのICカードでの自動決済。ICチップ付き「日本国民カード」で、いつだれがどこにいるのかいたのか、イッパツ確認。そんな“便利”な社会だとされている。
ところがその社会は、個人の背番号のもとに、病歴も犯罪暦も銀行口座の詳細も家系も出自も財産も税金も支持政党も宗教傾向も買物歴もメールのやりとりも職歴学歴交友関係趣味嗜好その他もろもろのデータが集められ管理される、デジタル・ヘルの“地獄”社会化の入り口なのである。
デジタル・ヘルの奥の闇は深い。さらにすすめば、ひとの一生を全部まるごとデジタル・データ化しようとするトータル・ライフ・ログとも呼ぶべき構想もある。
人が生まれた時から死ぬまでのすべてを全部デジタル化する。DNA染色体はもちろん、体重体温脈搏脳波血糖値等あらゆる体の情報の刻一刻の変化を記録。一生の間に発したコトバと全会話、聞いたすべての音楽、見えるもの、見たものすべて、全TV番組、読んだ本全部、酒、タバコ、ドラッグ、食事、排泄、学習、労働、位置行動まで全部データ化してしまう。体の各部分の動きをデータ化することで、体位も運動もすべてデータ化される。その膨大なデータの集積のなかにひとりひとりの人間が「いる」と信じてそれをすべての人間について集め、コントロールする。
そういうデジタル・ヘル、「サイバー情報ファシズム」のとば口に私たちは立っているのである。