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(回答先: ヒト胚研究:法規制せず穏やかな国の指針で 総合科技会議(毎日) 投稿者 ネオファイト 日時 2004 年 7 月 13 日 20:51:56)
http://www.mainichi-msn.co.jp/kagaku/science/news/20040714k0000m040151000c.html
病気で苦しむ人のためなら、人の生命の萌芽(ほうが)である受精卵(ヒト胚(はい))や、クローン人間にもつながるヒトクローン胚を研究目的で作ることは妥当なのか−−。総合科学技術会議生命倫理専門調査会(薬師寺泰蔵会長)は13日、この重い課題をいずれも容認する最終報告書をまとめ、再生医療研究に新たな道を開いた。しかし、約3年の審議を経ても、研究の推進に慎重な委員と積極的な委員の溝は埋まっていない。最終盤は丁寧な審議を放棄し、議論不足の印象が強く残った。【江口一、永山悦子】
◇重い課題 議論は不足
最終回の審議は予定を大幅に超え3時間以上に及んだが、最後まですれ違ったままだった。
この日は、研究の規制を法律で縛るか指針(ガイドライン)にすべきかで対立が続いた。最後に位田隆一京都大教授が、6月23日の会合でヒトクローン胚容認を「強行採決」したことについて、「採決を事前に知っていた委員と知らなかった委員がいた。非民主的な手続きで決められたのは極めて残念だ」と発言。薬師寺会長は会議後、「結果的に不公平と見られた点があった」と運営の誤りを認め、後味の悪さが残る幕切れとなった。
了承された最終報告に対し、島薗進東京大教授や位田教授ら慎重派委員5人は共同意見書を提出することを発表した。「ヒト胚作成は、研究の必要性や法的制度の審議を尽くした上で是非を決定すべきだ。ヒトクローン胚の作成は、研究が必要な科学的な根拠を示し、社会の理解が得られるまで認めるべきではない」との対案を示した。
また、生命倫理の観点から「結論は性急で、人間の手段化、人の生命と体の道具化につながる恐れがあり、妥当性は疑わしい」と指摘した。また、生命倫理の問題を専門的に検討する恒久的な独立した機関を新設するよう求めた。
島薗教授は調査会終了後会見し、「人の生命に科学や医療がどうかかわるべきかという、極めて重いテーマにもかかわらず、議論が打ち切られたことは問題。この方法以外に難病患者を救う道はないのか、女性の負担が大きい未受精卵採取をどうするのか、など審議が足りない課題ばかりで、説得力を欠く最終報告書だ」と批判した。
◇両派かみ合わず 審議3年31回
「難病で苦しんでいる人の治療法開発のために有用だ」「人の生命の萌芽を、幸福追求の手段として使うべきではない」−−丸3年、計31回に及ぶ審議は、研究推進派と慎重派の意見がかみあわないまま、最後は「時間切れ」で終わった。
調査会がヒト胚やヒトクローン胚の議論を開始したのは01年8月。同年6月施行のクローン人間作りを禁じたクローン規制法が「3年以内に受精卵の扱いを検討し、必要な措置をとる」と定めたためで、03年秋までに結論を出す予定だった。
審議の焦点は、ヒト胚やヒトクローン胚の研究は許されるか▽許されるならどんな条件か▽ヒト胚の法的保護は必要か−−など。21人の委員の意見は割れた。調査会は宗教、科学、医学などの専門家や市民団体の延べ約60人から意見を聴いたが、議論は空回りした。
期限とされた03年秋を過ぎると、調査会の議事運営に「荒っぽさ」が目立つようになる。同年12月の中間報告は、委員を対象としたアンケートで多数が容認したとして、会合で合意もなされていないヒト胚の作成容認を盛り込んだ。着床前診断も中間報告で容認したが、その後、委員から「審議もされていない」との批判が相次いだ。
さらに今年6月23日にはヒトクローン胚の作成容認を薬師寺会長の判断で「強行採決」する。最終報告も同様だ。研究の規制は、ほとんど議論せずに「法律では規制しない」とした。「ボランティアからの卵子提供を禁止する」など、議論を経て合意されたことはわずかしかなく、ヒト胚に必要な精子や、クローン胚に必要な体細胞の提供に関する問題は全く審議されなかった。
具体性のない「ゴーサイン」に、研究推進派の委員からも「これではいつまでたっても実際の研究は始められない」と、不満の声が漏れている。
◇組織、臓器再生に期待
ヒト胚やヒトクローン胚の作成は、生命倫理的な問題をはらむ一方、失われた組織や臓器を再生させる研究に有望と期待されている。
再生医療の実現に向けて、体のいろいろな細胞に分化できる能力を備えたヒト胚性幹細胞(ES細胞)を用いた研究が進められている。ES細胞は、分裂が始まったヒト胚を壊して取り出すが、現在は不妊治療で使われなかった余剰胚で作られている。このES細胞から臓器を再生しても、他人の遺伝子が組み込まれているため、移植すれば拒絶反応が避けられない。
一方、ヒトクローン胚は核を抜いた他人由来の卵子に、患者の体細胞の核を移植して作る。このためクローン胚から作ったES細胞を再生医療に使えば拒絶反応は起こらない。
理化学研究所の豊島久真男・遺伝子多型研究センター長は「再生医療の実現を目指すなら、どこかでクローン胚の研究は認めなければならなかった」と話す。
余剰胚から作成されたES細胞からは、既に神経細胞、血管などを再生させる研究が進んでいる。患者の遺伝子を組み込んだクローン胚によるES細胞ができれば、再生医療が一挙に進むという期待もある。しかし、豊島さんは「本当の難病治療が実現するのは、まだまだ先の話だ」と過度な楽観論にくぎを刺す。
理研発生再生科学総合研究センターの西川伸一・グループディレクターも「クローン技術は極めて専門性が高く、誰でもできるものではない。研究者の人数も限られており、ヒトクローン胚を使った再生医療研究がすぐに進むという環境ではない」と指摘している。
毎日新聞 2004年7月14日 1時34分