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http://www.mainichi.co.jp/area/hokkaido/ishizawa/2004/040212.html
食病めば、人病む
BSE(牛海綿状脳症)、鳥インフルエンザ騒動を伝える報道の多くは、食とは何かという「食の本質」を外れているように思える。例えば、安定供給と並び、重要なこととして論じられている「価格の安さ」は食物の本質とは何ら関係がない。食物とは健康で天寿を全うさせるもの、安全・安心なものでなければならない。いかに安くとも疾病と犯罪の原因となるならば、本来の食物とは言えない。
肉食者に多い心臓病死
心臓病(冠状動脈血栓)による死亡率について、肉食者と菜食者を比べたデータが、ピーター・コックス著「ぼくが肉を食ないわけ」(浦和かおる訳・築地書館)に紹介されている。
ローランド・フィリップス博士とそのチームは、米国カリフォルニア州でセブンス・デイ・アドベンティスト(キリスト教の一派)の菜食者と一般肉食者の心臓病死亡率を比較調査した。アドベンティストの心臓病死亡率は男性で約4分の1、女性で約3分の1だった。
「食は命なり」と言ったのは江戸時代の観相家、水野南北である。南北の言は「食病めば、人病む」と言いかえてもよい。つまり、食物の質、種類、食べる量、旬、地域、調理法、食べ方などが私たちの健康と生命を左右する。
犯罪も「食が病む」ので「人が病む」現象である。刑務所の服役者、矯正施設の非行少年・少女にジャンクフード(健康に害を及ぼす品質の悪い食物)に代えて本物を食べさせると、彼らの情緒と行動が変わることが米国の犯罪学者A・G・シャウス著「栄養と犯罪行動」(大沢博訳・ブレーン出版)に紹介されている。
安さに隠されたコスト
疾病や犯罪を生じさせる食物が果たして安いことになるのか。犯罪と疾病の増加は個人と社会に負担を強いる。病にかかれば医療費がかさみ、苦痛にさいなまれる。死もありうる。国の医療費も増大する。企業では従業員の病欠の増加、体調不良による事故、作業能率の低下もある。犯罪の増加に至ってはあらゆる意味でマイナスである。食物は単にエネルギーを補給するだけでなく、個人の全人格と社会の安定にもかかわる。
個人的・社会的コストまで計算すると、ジャンクフードは安くない。安く見えるだけである。安い価格に隠されたコストを個人と社会に押しつけ、自らはその負担を免れているからである。 (次回は26日掲載)
石沢文規(いしざわ・ふみのり) 北大文学部中国文学科卒。貿易会社専務などを経て91〜96年、道女子短大教授。札幌市北区北7西4、宮澤鋼業ビル地下1階で玄米食中心の食べ処「身土不二」経営。64歳。
(毎日新聞2004年2月12日朝刊)