＞とくに支配階級にとっては、ナショナリズムという概念はなじめないどころか、野蛮なものにさえ映ったことだろう。少なくとも七世紀以降、支配階級は文化的にはみずからを朝鮮人というより、中国を中心とする大きな世界文明の一員と考えていた。朝鮮の王位は、かたちのうえでは中国の皇帝によって与えられる地位であったし、宮廷人や貴族のあいだでは中国語が書き言葉として用いられた。また中国の哲学や文学の古典が、あらゆる教育の基礎となっていた。朝鮮の支配階級にとって、中国文化に触れないことは野蛮人となるに等しかったのである。

もし、西洋さえなかったら、中国人も朝鮮人もここまで悔しい思いをせずに済んだのに。中国は世界の中心だと思っていたし、少なくとも東アジアではそうだった。ところが、あいつら＝西洋が突然理不尽に攻めこんできた。アヘン戦争だ。これ以来中国は一貫して百年以上もロクな事がなかった。今にし思えば、「わが国は一窮二白（文化的にたちおくれ、経済的に貧しいこと）ですので、日本の協力をお願いしたい」と中国の首脳が言った時、心の底でどれほど涙を流したか、今更ながらに思う。本当は中国や朝鮮にとっては、日露戦争より、日清戦争・義和団事変の方が衝撃は大きかったのではないか。北京が列強に占領された写真というのは、中国や朝鮮にとって、終戦直後のマッカーサーと天皇が並んだ写真に匹敵するのではないか。中国では東洋というのは日本だけしか指さない。西洋に対する東洋というのは、あちらでは倭寇のような意味があるのかも知れない。西の海賊、東の海賊のような。元々平和というのは、敵勢力を平定する事であった。北方騎馬民族以外で中国をここまでひどい目に合わせたのは海から来た賊以外はない。
しかし、今や高句麗問題で最も忠誠心の強かった朝鮮民族まで敵になってきたとしても、中国は必ず中心に戻らねばならない、と心の中で固く誓っていることだろう。すでにインドシナは清朝の頃と違って、反発し始めている。台湾を恫喝するのは、現在の中国政府が正当な中国大陸の政権であり、中国の歴史の後継者であるという事を示すためであって、実利はどうでも良いのかも知れない。ポーズである。つまり、中国にとって、領土的一体性を保つというのは、利権以上の事なのかも知れない。
自分の国が日本より遅れている事を認めた屈辱・雪辱を晴らし、中国中心の晴れて再び秩序を回復する事。その時、アジア中からこの政府を正当なりと認めてもらう事。経済だけでない、中国はじめ東アジアには、こういう名分が必要なのだ。もう、完全にアヘン戦争前には戻れないのは中国自身にも薄々分かっているのだろうが、中華が中華して復権する事は中国人にとって、食うこと、命以上にひょっとしたら大切な事なのかも知れない。しかるに、中華を中台どちらの政府が継承するかも大事ではあるが。

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• アヘン戦争前との違い スパルタコス 2004/2/20 15:03:09 (0)

　

　

　

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