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(回答先: 英国人 投稿者 Westerfluss 日時 2004 年 1 月 29 日 07:06:57)
Westerflussさん
私も昔勉強したことがあるので、ドイツ語には多少の愛着があるのですが(中身は使うチャンスがないのでほとんど忘れたが、今でもドイツ民謡の歌詞は口をついて出てくるし、ベートーベン「第9」第4楽章のシラーの詩も丸暗記した、といってもこれはKubrick監督「時計じかけのオレンジ」の一場面に刺激されたためなのですがね)、正直にいって英語とドイツ語ではまず現実的な有用性で大きな差があること、次に一般的な表現力という点でも、かなりの差があるのではないか、という印象があります。ドイツ語・フランス語を勉強した英国人に言わせると語彙の数など比較にならない、といっています。確かに英語の語彙数は現在300万という人もあって、ダントツのNo.1なのですね。やはりラテン系統のフランス語、イタリア語などからも積極的(ほとんど無節操;この辺は日本語に酷似している: 大陸から僅かに離れた島国という共通要素のせいであろう)に外来語を取り入れたことのメリットでしょう。例えばミッテランの時代のフランスで「ハンバーガー」という単語が、「非フランス的」として禁止されたのと比べると大きな差があります。(ドイツ語における外来語の状況は寡聞にして詳しくないが、似たような状況だという人は多い)この姿勢の差が言語の活力の差につながっているのでは?
英語は文法こそ「低地ドイツ語」的要素を継承していますが、語彙を中心とした中身は世界語としか言いようがないと思います。例えば「大きい」を表す形容詞だけでも、big, large, great, huge, vast, immense, enormous, bulky, prodigious, stupendous, tremendous, colossal, titanic, gigantic, monstrous, ginormous など大変なバラエティがあって、それぞれ微妙にimplicationが異なっているため、英語を非常に豊かにしています。どんなニュアンスでも対応可能な表現力ということで、これが英文学の豊饒さにつながっていることについては疑う余地がありません。結果として出版されている情報量でもダントツでしょう。
もう一つ指摘すべきことは、英国人はドイツ人の勤勉さや能率は尊敬しているものの、あまり人間的には評価していない現実です。要するにユーモアのセンスが決定的に欠如しているため、共に笑うことが出来ない(これは人間として付き合う上では致命的なことだ)と感じているのです。(無論あまり一般化することは危険であることは承知していますけどね)確かに「ドイツ人のユーモア」とか「ドイツの喜劇」はほとんど形容矛盾のように響きますね。
個人的な経験ですがドイツ人と英国人が参加しているクリスマスパーティで、英国人が隣のドイツ人女性の頭に、お愛想のつもりで「アルミ箔製の吹き流し」をのっけたところ(英国人同士では何の抵抗もなくやっているおふざけ)、そのドイツ女性が真っ赤になって激怒した場面を目の当たりにして唖然としたことがあります。何かバカにされたと勘違いしたらしいのですが、これだと折り合うのは難しいでしょうね。どうもドイツ人は自分自身を茶化すことが苦手なようです。結果として英国には「ドイツ人・オランダ人はアンドロイドみたいな連中だ!」という人さえいます。逆にドイツ人の中にはインテリを中心としてイギリスのリベラリズムにかぶれる人々が結構いるのではないですか。哲学者のウィットゲンシュタイン(これはユダヤ人だけどね)など良い例でしょう。その逆よりずっと多い印象があります。
ただこれは前にもどこかで言ったことですがドイツ人の中には、ケンカのセリフで「お前なんかガス室送りだ!」なんてとんでもないことを言い出す連中が現実にいるのですね。いくら木村愛二さんが「ガス室の虚構」をキャンペーンしても、当のドイツ人がこんなバカなこと自分で言ってちゃどうしょうもないですよね。「俺たちを怒らせたら怖いんだかんな。ガス室くらい軽くやってのけるかんな!」というわけで、結局ホントにガス室があったかないかは別として、「ドイツ人だったらやりかねないんじゃないか」、という印象を与えてしまうのです。
私はかつてはバッハ、ベートーベンなどドイツ音楽を好んでいた時期がありましたが(今でも聞くけどね)、今はずっと軽くてエスプリに富んだサティ、ドビュッシー、ラベル(あとフォーレ)などのフランス音楽や、Langford, Binge, Butterworth(日本では知名度ゼロ)などBritish light classicと呼ばれる範疇の音楽を好むようになってきています。ドイツの文化は何か重すぎるんではないか、様式にこだわりすぎているんではないか、という気がします。でもベートーベンの「苦悩を通して歓喜に至る」という哲学は、カラオケなどの娯楽でも何でもすぐに「〜道」にして入門・修行、艱難辛苦(採点する装置まである)を経て完成・権威に至るパターンを好む、一寸前の世代の日本人には非常にフィットするのではないでしょうか。要は楽しむことを知らなさすぎるのではないか、と思うのですね。
それからドイツ国内では何でも時間厳守で、バスの到着時刻も10秒くらいの誤差しかないのには驚きましたが、逆にホテルでは朝食の終了時間に5分遅れただけで、食べさせてもらえませんでした。(英国やフランスだったらいい加減だから絶対OKとなる)もひとつ言うとドイツ人は人と人との距離を保つのが日本人同様ヘタ、という感じがしますね。駅で切符を買うために行列していたら、後ろからビール腹で押してくる奴がいるのに閉口しました。(同じような経験があるのは日本とドイツだけ)だからヨーロッパの田舎者といわれちゃうのでしょうね。でも女性は親切で可愛い(若い女性の多くは英語もうまい)けどね。