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(回答先: [日本人殺害]「イラク支援の戦列から退くな」(読売新聞・社説) 投稿者 シジミ 日時 2003 年 12 月 01 日 05:31:14)
http://www.okinawatimes.co.jp/edi/20031201.html#no_1
初めての日本人犠牲者
恐れていたことが現実となった。
多くの国民が、衝撃とともに感じたいつわらざる思いだろう。
イラク北部のティクリットで、外務省の奥克彦在英国大使館参事官と在イラク大使館の井ノ上正盛書記官が、武装集団の襲撃を受け殺害された。
政府はテロ攻撃との見方をしているが、イラク戦争以降、初めての日本人の犠牲者となった。
二人はティクリットでの北部地域の復興会議に参加するため、四輪駆動車で向かっていて襲撃された。重体だったイラク国籍の運転手も死亡した。
岡本行夫首相特別補佐官が「優秀なチーム(仲間)を失った」と語ったように、二人は日本の復興支援策の具体化を図るため精力的に活動してきた。奥参事官は十八日からの自衛隊の専門調査団にも同行、イラク情勢を熟知する外交官だったという。
小泉純一郎首相は「痛恨の極み」と語った。一方で首相と川口順子外相は「テロには屈しない」と自衛隊派遣など従来の政府方針に変わりがないことも強調している。
テロを許すわけにはいかないことは当然だ。しかし私たちは、二人への哀悼とともに、冷静にイラク情勢の変化を見極める必要がある。
具体的な事実関係や、襲撃した集団の正体、目的は調査を待たねばならないが、事件の起こる可能性はあったといわざるをえない。
ティクリットがフセイン元大統領の出身地で、首都バグダッドを結んだスンニ派三角地帯と呼ばれ、住民は旧政権への忠誠心が強く、反米意識が強い地域といわれる。
米軍への攻撃も頻繁に起こっていた危険地帯に、奥参事官たちの車は防弾ガラスがあったとはいえ護衛もなく単独行動をしていたという。
十六日に国際テロ組織・アルカイダを名乗るグループが日本を名指しでテロを示唆し、十八日には大使館も銃撃されている。政府は十分な安全策を現地へ指示していたのかが問われよう。
事件は、日本に親近感を持つといわれてきたイラク人の変化も教える。米軍占領への強い反発が、米国に同調する日本への意識を変え、攻撃の対象としたことを見逃してはならない。
「有志国」へ攻撃は拡大
十一月の米兵の死者はすでに八十一人。月別ではバグダッド制圧作戦を行った四月の七十三人を上回っている。
米軍の治安維持から掃討作戦への転換と戦死者の増加は、「戦後」ではなく「戦争」状態の継続を示している。
並行して米国を支持し、兵士らを派遣する国への攻撃が激化した。
同じ二十九日にスペインの情報部員七人がロケット弾の攻撃で死亡した。これまでに、ポーランド将校、スペイン外交官に続いてイタリア警察軍司令部の爆発では二十七人が死亡した。
テロ集団がどのような組織なのかははっきりしない。旧フセイン政権のメンバーやアルカイダ、近隣のイスラム諸国からの介在もいわれている。
「有志国」の犠牲は、「駐留軍より民間人への攻撃が増加している」とする現地の米軍司令官の発言とは異なり、組織的な反米勢力の存在とその標的の拡大を示し、イラク情勢が新たな段階に入ったと見なければならない。
崩れた自衛隊派遣の前提
国会論議で、社民党の照屋寛徳氏は「自衛隊が行くことで戦闘地域になる」と主張した。首相は「安全面に配慮すれば戦闘地域にはならない場合がある」と答弁したが、戦闘が「地域」ではなく「日本」という標的によって起こることを、今回の不幸な事件を含め現在のイラク情勢は証明している。
イラク復興支援特別措置法は、戦闘地域に派遣しないと定めている。政府には「非戦闘地域への派遣」が可能との判断があった。だが情勢の悪化は政府の予測を超え、非戦闘地域はありえず、自衛隊派遣は法的根拠を失ったと考えた方が事実に即している。
二人の外交官がイラク復興へかけた志を継ぐには、人道支援を基本とした貢献策を再構築することだ。
万が一にも「弔い合戦」的な発想や、特措法の趣旨を越え戦闘を前提とした自衛隊派遣は許されない。
小泉首相は、二人の犠牲とイラク特措法を根拠とした派遣が無理となった事実に立って、米国重視の政府方針を転換すべきだ。
テロへの憤りを越え、早期の主権移譲策など日本外交の役割を再考すべき事態を迎えている。首相に国民への説明と国会での論議を求めたい。