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テロが無差別化するなど治安悪化が深刻になる一方だったイラクで、懸念されていた日本人の犠牲者が出てしまった。

　銃撃を受けて亡くなった外務省職員二人は、北イラク復興支援の会議に向かう途中だったという。国づくりを手助けする最前線で尽力していた人材が凶弾に倒れた。言葉を失う。痛恨事というほかない。

　犯人像はまだ不明だが、とうてい許せない蛮行である。急ぎ、事件の真相究明や邦人の安全確保に努めてもらいたい。

　現場はフセイン元大統領の出身地で、反米感情が強い「スンニ・トライアングル」の一角である。今回の襲撃が、日本人と知った上のテロだった可能性は否めない。

　先日、バグダッドの日本大使館を武装グループが銃撃した。国際テロ組織アルカイダを名乗るグループが日本を名指しして、テロを示唆する警告も出していた。

　米軍の占領に加担する国として、日本を標的にした攻撃が現実になりつつあるのだろうか。もしそうなら、イラク復興支援の在り方を検討し直すことは欠かせまい。

　だが、小泉首相には自衛隊の派遣を含めて、イラク政策を変更する考えはないようだ。事件を受けて「テロには屈しない」などと従来の見解をくり返している。

　たしかに、テロに屈するわけにはいかない。わが国もイラクの復興人道支援の一翼を担うべきである。石油の大半を中東に依存している国として、国益にもかなう。

　問題は、国際機関や外国公館へのテロ攻撃が相次ぐいま、日本が想定する支援活動を行える環境といえるのかどうかだ。

　イラク支援特措法に基づく自衛隊派遣について、政府は南部サマワを念頭に計画を固めつつある。比較的安全という調査団の報告が、後押ししたのだろう。

　しかし、非戦闘地域と判断した地域が、自衛隊の現地入りで戦闘地域に変わる恐れはないのか。「可能性をいえば、きりがない」とする首相の答弁は、国民の不安や心配をあまりにも軽視している。

　対米関係への配慮は分かる。だが、情勢が日増しに悪化し、日本人の犠牲がでるなか、あくまで既定路線を堅持する方が国益につながるという根拠は何なのか。

　イラクの治安回復に欠かせない国連の役割拡大ひとつとっても、日本の出番は他にもっとあるのではないか。

　事態がここに至ってなお、さまざまな疑問に同じコメントをくり返すようでは、真のリーダーといえまい。首相はいまこそ、自ら信じたとする判断について、言葉を尽くして国民に語るべきである。

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