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(回答先: イラクの現局面は大枠で米英政権のシナリオ通り [シジミさんへ] 投稿者 あっしら 日時 2003 年 11 月 25 日 18:23:03)
関連すると思われる論説を、たった今目にしましたので転載いたします。長文になりますが、重要と思われますのでよろしくお願いします。(以下転載)
TUP速報223号 星川 淳のピースウォッチ#6 03年11月25日
http://www.egroups.co.jp/message/TUP-Bulletin/231
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■■□■ ★彡 星川 淳のピースウォッチ #6(03.11.25) ■
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> 侵略の動機
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★彡 今回は文字どおり「気になる」論考をご紹介します。他のTUPメンバーが掘り出してくれたものですが、妙な説得力があって頭を離れません。ブッシュ政権の支離滅裂と非道ぶりを実際に見せつけられてきた目で読むと、まったくの杞憂と思えないところがあります。また、元国連査察官スコット・リッターが、もしイラクで追い詰められた場合、いまの米国は核兵器を使いかねないと警告していたことも思い出します。それでも、こうでないこと、こうさせないことを望みたい。『君主論』引用は、邦訳が手元ににないので超簡訳しました。(星川)
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by マイケル・ドライナー
マキャベリの『君主論』はいう。
「新しく征服した民には占領軍その他の重圧を与え、占領で傷つけた人びとの敵意を買う。征服の後押しをした友人たちは、結果に満足せず離反するが、味方だから叩くわけにいかない。武力では無敵でも、異国へ入ったらそこの住民の善意が欠かせない。……しかし、兵士を植民地にとどめ置く代償はもっとある。軍費は国庫を枯らし、征服で分捕った以上の損失が出るし、国全体が傷ついて怒りを抱く者が増える。占領地を軍が行き来するごとに、住民は苦しみを味わって反感をつのらせる。自国で敗地にまみえた者たちとはいえ、反撃する力は残っている。つまりどう考えても、植民地は有益な反面、それを守るのは無益なのだ。」
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統治に関心がある人間にとって『君主論』は必読書に入るから、イラクに戦争をしかけた人びとは、当然この一節を知っていただろう。イラク侵攻計画はもともと無茶なもので、それを進めた連中はまったくの能なしか、さもなければ現状がそれほど狙いと外れていないかのどちらかと考えざるをえない。もちろん、抵抗がこれほどしぶといのも、戦争の名目がここまであからさまにウソだとばれるのも予想しなかったはずだが、イラクがまともな国に立ち直ることなど見込んでいなかったのではないか。国を安定させるつもりなら、官僚機構を崩壊に追い込んだり、軍を解体してしまったりするのは禁じ手だが、国を壊すつもりなら理にかなう。まったくの無能でないかぎり、彼らは戦後の混乱を見越していた。
イラク再建は、経済的に見てもバカげている。アメリカ占領のもとでのイラク復興などけっして起こらないだろう。イラクの債務状況は見積もりによって600億ドルから数千億ドルまで差があるが、米戦略国際問題研究所(CSIS)の試算だと1270億ドルで、そのうち470億ドルが未払利息。さらに湾岸戦争の賠償金が1990億ドル、フセイン政府が各国の政府や企業と結んだ未決契約が570億ドルで、イラクの負債は合計3830億ドルになる。この数字にもとづけば、イラクの債務はGDP270億ドルの14倍、つまり国民一人あたり1万6000ドルの巨額にのぼる。債務とGDPの比率でいえば、イラクの負債はブラジルやアルゼンチンの25倍で、途上国中最大の債務国だ。
GDP270億ドルというのは侵攻前の石油収入だが、現在はよくてその3分の1とされ、戦前の日産2400万バレルまで戻すには、インフラ整備に最低100〜150億ドルの資本投下が必要と考えられる。いまのような政治的泥沼で投資する石油会社はなく、投資がなければイラクのGDPは借入金の利子にも遠くおよぶまい。戦後すぐに債務帳消しを主張する声が多く出たものの、耳を貸す債権者はいなかった。5月の国連でブッシュ政権が12以上の債権国にイラク債務帳消しを求めたのに対し、米主導の侵略に反対した仏独ロはほとんど反応せず。
ゴールドマン・サックスグループの取締役で、レーガン政権の国務次官補代理をつとめたロバート・ホーマッツは、ロシア、ポーランド、エジプト、ドイツなどに対する負債と、90年のクウェート侵略に対する賠償金の扱いが、復興の足枷になる可能性を指摘する。フォード政権とカーター政権でも経済顧問をつとめたホーマッツによれば、これは史上最大の債務交渉で、確執も最悪になるだろうという。支配的立場の国々はほとんど債権がないため、債権国に帳消しのプレッシャーをかけるし、かたや債権国は見返りの利権を求めるからだ。
米国のスノウ財務長官が先進7か国蔵相会議でこの問題を取り上げたところ、パリクラブのような国際会議で議論することに前向きな国もあったが、公の場でそれ以上の提案は出なかった。ホーマッツによると、戦前の日産2400万バレルの石油売上げが回復するまで、最大1000億ドルかかる復興資金がとうていまかなえないため、イラクの債務削減は復興の成否を分ける。
5月以来、状況は改善どころか、イラクの破壊と人びとの困窮が進んだだけで、いまや国民のほぼ100%が国際食料援助に頼る。しかし、ゲリラ攻撃で国連は援助事業を維持できず、復興の推定費用は毎日上昇するばかり。とにかく、イラクは債務免除により白紙からやり直せないかぎり、この破滅的状態を抜け出せまい。だが、アメリカの支配下にあるかぎり、そのような道はとれない。なぜなら、アメリカが対イラク債権放棄を承認すれば、それはロシアが旧ソ連から引き継いだ債務や、ラテンアメリカ諸国がかつての独裁者たちから引き継いだ債務の放棄も認めることになりかねないからだ。
結局、アメリカがイラクに居座るかぎり、イラクの混乱は続き、おそらく混乱は周辺諸国にも広がっていく。このような結果を予想することは難しくなかったはずだが、ブッシュ政権はこういう結果を狙ったのだろうか? 同じく、イラクの債務や再建費用の見積もりも、侵攻にともなう政治的混乱の予想も難しくなかったはずで、ブッシュ政権に足し算や政治的思考のできる人間がいないのか、最初から再建など頭になかったのかである。はたして無能か計算づくか――。
マキャベリが『君主論』を著した16世紀はじめには、その国の富を吸い上げるには国民が必要だった。しかし石油というイラクの富は、国民がいないほうがもっと値打ちが上がる。国民など石油会社が原油を汲み上げる邪魔になるだけだろう。石油を搾り取り、OPECを弱体化し、イスラエルが周辺アラブ諸国と戦うのを助けるのが動機なら、イラクを壊滅状態にして二度と立ち上がれないような計画を立てたはずだ。そしてもしそうだとしたら、ブッシュ政権はまだまだ破壊を進めるだろう。抵抗がもう数か月続けば、アメリカ国民はとどめを刺す心の準備ができるかもしれない。
一国の政治構造を壊滅させ、国民から搾取に抵抗する力を奪うことは、おぞましいけれども、マキャベリ流には理にかなった政治目標といえる。ブッシュ政権は、大量破壊兵器やアルカイダ・コネクションその他の名目から、これほど化けの皮がはがれるとは予想しなかったろう。何かしら言い訳の立つ材料が出てくると思っていたにちがいない。そうなれば支持は高まっただろうが、現実にはそれなしでもまだ支持率は高い。最悪の場合、計画の仕上げは再選後にのばせばいい(小型戦術核兵器はただいま準備中)。最初からイラクの破壊が目的だったなどという発想は恐ろしいものだと認めるが、ブッシュ政権がまったくの無能集団でないかぎり、本気でイラク復興を信じていたとはとうてい思えない。しかし、可能性はこの二つにひとつしか浮かばない。
アメリカがイラクにとどまり続けて遂げられるのは、完全破壊という目的だけだろう。イラクはアメリカのもとでは立ち直れない。マキャベリの慧眼。イラク国民はここまで痛めつけられてしまった以上、アメリカも、その傀儡(かいらい)もけっして受け入れまい。復興には巨額の費用と債務帳消しが必要だから、アメリカ(ないしその傀儡)政府のもとでは立往生するしかない。イラクを破綻国家にして、そこから石油を搾り取るほか、アメリカが達成できる目標は考えられない。そんな政策を追求すれば、アメリカと世界の関係がどうなるかは容易に想像がつく。しかし、最初からこういう計画だったとしても驚くにはあたらない。帝国主義的な野望を公言してはばからないブッシュ政権なら、いかにもやりそうなことだ。 【11月22日 アンチウォー・ドット・コム】
[マイケル・ドライナーは、1964年から70年にかけてシカゴ大学でハンナ
・アーレントと机を並べ、ヴァルパライソ大学とイサカ大学で教鞭をとったのち、
現在はイサカで事業を営む。]
(抄訳:星川 淳/TUP)