現在地 HOME > 掲示板 > 戦争43 > 1219.html ★阿修羅♪ |
|
日本には「スペイン軍はイラクから撤退しない。撤退はテロリストの跳梁を許すことになる」といったようなアスナールの言葉しか報道されていないようです。もっともこれは立場を変えればこちらでも一緒で、日本や韓国に関しては単純な「事実関係」と政府の発表くらいしか新聞に載りませんが。ここでエル・パイス紙(12月2日)に載ってあったスペインの野党勢力の発言を抄訳してご紹介します。
野党第1党の社会主義労働者党書記長サパテーロはアスナールに対して
「あなたは(イラクの現在の状況を)戦後などと呼ぶが、しかしデータはこれが戦争状態であることを示している。」「あなたはテロリストと呼ぶが、しかしテレビ画面はそれが抵抗勢力(resistencia)であることを教えてくれる。」
と厳しく非難したうえで、「我々はイラクがバルカン半島のように内戦化することを憂慮する。事態はもっと悪くなりうる。」
と分析し、アメリカの戦略に代わる国連の強力な役割を望みました。
これは私の推測ですが、彼は、アメリカとイギリスだけが「悪者」になっているのならともかくもコソボのように「正当な」名目をつけられてNATO軍のような形で中東全体の戦争に巻き込まれてしまうともう抜け出る余地が無くなることを最も恐れているのでしょう。
また統一左翼(旧スペイン共産党系)とバスク民族主義党は、トリーリョ国防相の退陣とイラクからの軍隊の即時引き上げを要求しました。
来年の春にはスペインの総選挙が行われます。野党第1党の社会主義労働者党(以下、社会党と略す:1982年から1996年までは政権党でしたが)は、国民の反戦の意識の高まりに乗って一気にアスナール与党である国民党(実はフランコ独裁時代の与党であるファランヘ党のなれの果て)を下野に追い込みたいところでしょうが、世論調査や先日のカタルーニャ州の議会選挙などを見ても、そううまくいくかどうか、微妙なところです。スペイン国民は、フランコの独裁が終わった後、絶大な期待をかけてフェリペ・ゴンサレス率いる社会党を支持したのですが、経済政策の失敗の上に腐敗・汚職を重ね1996年にとうとう国民党に政権を譲ってしまいました。期待を裏切られた国民の傷は深く、信頼を取り戻すには時間がかかるでしょう。現在の国民党政権下では曲がりなりにも経済が安定していますので、よほどの失策が無い限り逆転は難しいかもしれません。先日、知り合いのスペイン人が各政党を指して「どうせこいつらみんな嘘つきなんだ」とはき捨てるように言っていました。『社会党も国民党も嘘つきだ。同じ嘘つきなら少しでも金をくれる嘘つきの方がマシだ。』というのが、悲しいことですが、多くのスペイン国民の偽らざる心情かもしれません。
しかし『少しづつ金をもらいながら地獄に引きずり込まれていく』のは最悪の選択になるでしょう。スペイン国民の目を開かせるサパテーロ社会党書記長の活躍に期待したいところです。
エル・パイス紙(スペイン語版)
http://www.elpais.es
同英語版(Adobe Reader必要)
http://www.elpais/archivo/pdf/elphtb_1@8.pdf