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(回答先: ゴビンダ絡みの集会2つ 投稿者 やました 日時 2003 年 11 月 09 日 22:27:17)
関連する情報を投稿します。
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無罪判決後再拘置 チリ人被告のケース
『東電社員事件』と同様 強制退去処分が根拠に
「無罪」が宣告されたら自由の身になる。そんな法治国家の“常識”が揺らぎ、無罪判決後の再拘置が相次いでいる。東電女性会社員殺害事件で、ネパール人被告の再拘置を認めた最高裁の“お墨付き”が影響しているようだ。特に目立つのは外国人被告の拘束だ。再拘置される側の訴えを聞いた。 (中山洋子)
■「物的証拠はなし供述信用できず」諏訪簡裁判決
横浜市鶴見区在住の元電気工モラガ・レイエス・アレハンドロ被告(23)=チリ国籍=が、無罪判決を受けたのは今年五月だった。
起訴事実は、二〇〇一年八月二十三日に、日系ブラジル人男性とともに東京都足立区のリサイクルショップに侵入してネックレスなどを盗んだこと、その五日後、別のブラジル人男性らとともに長野県諏訪市のビル駐車場で乗用車一台を盗んだことの二件だ。
逮捕当初から容疑を否認し、公判でも一貫して無罪を主張。弁護団の原山邦章主任弁護士は「共犯として逮捕されたブラジル人被告らが、アレハンドロ被告に罪をかぶせようと口裏合わせをした可能性がある。両事件とも主犯とされたが、アレハンドロ被告がそれぞれの現場にいた、とする証人らの供述が全くかみ合わなかった」として冤罪(えんざい)を訴える。
「足立区のリサイクルショップには行ったことがないし、諏訪市で車を盗んだとされた二十八日の前日には、幼い弟妹の面倒を見るために横浜に帰っている。自宅にいるアレハンドロ被告を、知人も目撃している」と強調する。
諏訪簡裁の森野正幸裁判官は「共犯者らの供述のみが証拠で、犯行を裏付ける物的証拠がない。共犯者らの犯行前後の供述には矛盾点が多く信用できない」として無罪を言い渡しアレハンドロ被告は釈放された。
しかし、控訴審の期日すら決まっていない今年八月末、在留資格更新のために訪れた横浜市の入国管理事務所で、アレハンドロ被告は検察関係者らによって、東京高裁に連行された。そのまま再拘置が決定され、東京拘置所に収監された。
弁護団は、異議申し立てを行ったが東京高裁は「逃亡や罪証隠滅の恐れがある」として棄却、最高裁も特別抗告を棄却した。
原山弁護士は「アレハンドロ被告は釈放後、群馬県のブラジル人牧師の元に身を寄せ、新たな仕事にも就いていた。家族も私も所在をちゃんと確認している。どこに『逃亡』の恐れがあるのか」と憤る。
もう一つ、同被告を不利にしたのは、別の覚せい剤取締法違反事件で有罪が確定(執行猶予)していることを理由に、在留資格が更新されなかったことだ。
東電女性会社員殺害事件と全く同様で、在留資格が切れて強制退去の対象となったことが「逃亡」と認定されたと指摘する。
原山弁護士は「強制退去は『逃亡』ではない」と強調しながら「無罪判決は、被告を拘置できる『罪を犯したことを疑うに足る相当な理由』というハードルを検察側が越えられなかったことを意味する。つまり、拘置できなくなったということだ。審理を尽くして無罪とした一審の判断を、高裁が自ら審理する前に、勝手に『推定有罪』を下すことは、何を根拠に許されるのか」と非難した。
相次ぐ「無罪判決」後の「拘置」に対し、法曹界では批判的な意見が強い。
中央大総合政策学部の渥美東洋教授(刑事訴訟法)は「日本人なら拘置されない事例で、外国人に対する不当な差別だ」と断じながら「現行法の解釈としておかしいし、そもそも憲法が定める告発主義に反する。被告は同じ罪で二回、危険にさらされてはならないという原則がなし崩しにされている」と批判する。
「告発主義は、検察側が立証する責任があり、被告側は一切何もしなくていいという“推定無罪”の立場だ。裁判は無罪を前提に進められ、検察側が合理的な疑いを立証できなかったら終わりだ。欧米と同じ告発主義をうたいながら、日本では憲法の解釈をゆがめて、全く違う運用をしている」と指摘する。
東電女性会社員殺害事件のネパール人被告の拘置をめぐり、最高裁で反対意見を表明した元最高裁判事の遠藤光男弁護士は「在留資格がない被告に対して、強制退去処分の執行停止を認める法律の規定が設けられていない。再拘置は、法の不備を、被告に転嫁するものだ」と断じる。
その上で「(東電女性会社員殺害事件の)ネパール人被告に対する最高裁の決定は外国人に限定されていない。当然、日本人に影響を及ぼす事態も出てくる。決して事件を期待するわけではないが、あらためて議論を尽くすべきだ。同種の事案で最高裁が新たな判断を下すことを願う」と話した。
「息子はなぜ連れて行かれたの…」。横浜市鶴見区に住むアレハンドロ被告の母マリアさん(39)は、おえつをこらえながら訴えた。
「覚せい剤は、悪いことでした。仲間に誘われて一度だけ試した。好奇心からだったが、警察に正直に話し、全て認めて『二度とやらない』と、裁判所にも私にも誓った。でも、盗みはしていません」
マリアさんは十六年前、当時八歳のアレハンドロ被告を連れて来日し、日本人男性と再婚した。五年前に離婚した男性との間に四人の子供をもうけた。
「息子は悪い人間ではありません。信じてください。妹や弟の面倒をよく見て『漢字をちゃんと練習しなさい』とつきっきりで教えていた。諏訪で車を盗んだという日に、彼は不在だった私に代わり弟妹の面倒を見るために、鶴見区の家に戻っているんです。様子を見に来た私の友人が、彼の姿を見ている」
「日本語が百パーセント分かるわけじゃないけれど、一審の裁判で、証人が『彼です』と指さすたびにつらかった。でも、裁判官はきちんと調べて無罪にしてくれた。それなのに、なぜまた連れて行かれるのですか」
アレハンドロ被告は、マリアさんと九歳の妹の目の前で、入国管理事務所
から連行された。
「入管の職員が『あなたは逃げている人ではないか。警察が捜している』と言っていた。息子は『逃げてはいない』と言いました。職員から『あなたみたいな不用なものは、この国にはいらない』とまで言われました。ごみとか廃棄物とかを意味する日本語で、息子が切り捨てられました」
熱心なクリスチャンのマリアさんは毎日、息子のために祈る日々を送っている。「息子が悪いことをしたら、私が自分で警察に連れて行きます。罪を隠すと悪い人になるからです。でも、私には分かります。彼は無実です」と訴えた。
(メモ)無罪判決後の再拘置
東電女性会社員殺害事件で、一審無罪判決後、不法残留だったネパール人被告に対する国外への強制退去処分を阻止しようと検察側が、裁判所の職権による再拘置を要請。最高裁は2000年6月に「控訴審の適正な審理のために拘置できる」として、再拘置を認める初判断を示した。
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