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(回答先: 敦賀市原子力発電所懇談会 「もんじゅ」県専門委員会座長、安全性強調 /福井 [毎日新聞] 【ナトリウム漏れは起きるかもしれないが、あっと言う間に終息する?】 投稿者 なるほど 日時 2003 年 11 月 13 日 03:18:36)
もんじゅ事故と日本のプルトニウム政策 1997年刊 [要約]
・ はじめに
・ 要約と提言
結論のまとめ
第1部 技術面から見たもんじゅ事故の原因と問題点
(1) 事故の根本原因は,初歩的な設計ミスとそれを許した体制総体である
(2) 事故原因はなんら解明されていない
(3) 動燃にはナトリウム取り扱いの技術的備えがない
(4) マニュアルの欠陥が事故を拡大
第2部 法・制度面からみたもんじゅ事故とその教訓
(1) もんじゅ事故で実証炉開発は大幅に遅れるだろう
(2) 事故により核燃料サイクル路線の存続が極めて困難になるだろう
(3) なお不透明な原子力委員会・原子力安全委員会の議事公開
(4) 国民不在の政策決定
(5) 科技庁,動燃,メーカーの慣れあいと癒着
第3部 プルトニウム政策ともんじゅ事故
(1) 世界の高速増殖炉開発に学べなかった
(2) 国際的孤立の中で,「もんじゅ早期運転」の至上命令となった
(3) 「動燃改革」は組織いじりによって実現するものではない
(4) 民主主義の実現と長期計画の全面見直しを!
政府への提言
1. 独立な機関と国民参加による事故調査の徹底見直しと,
「もんじゅ」安全審査の全面やり直しを!
2. 原子力各分野における真の情報公開の確立を!
3. 原子力長期計画,とくにプルトニウム政策の全面的見直しと,
その作業が終わるまでのプルトニウム計画の凍結を!
4. 原子力行政に国民の直接的チェックがかかる法制度の確立を!
5. 原子力開発体制と安全監視体制の完全分離を!
6. とかげのしっぽ切りでなく,国民参加型の「動燃改革」議論を!
はじめに
小出昭一郎
評価という言葉には「価値を判じ定めること」と,特に「高く価値を定めること」の2つの意味があるが,今回のような事故の場合には,当然後者ではありえない。しかし,我々は,世にしばしば行なわれているように「初めに結論ありき」で,それに都合のよい材料だけを拾い集めることは極力避け,できる限り客観的に「評価」しようと努めた。
また,事故の原因を単に技術的な面に求めるだけでなく,法や制度の面からも検討し,総合的に評価しようと考えた。わが国の行政には《プロジェクト不滅の法則》というものがあって,減反政策をとりながら干拓を続けたり,ムダなダムを造ったりすることが止められず,それが今日の財政破綻を招いたという体質を持っている。先進諸国が次々と放棄したプルトニウム政策に飽くまで固執し,猛毒プルトニウムを燃料にナトリウムなどという危険で始末の悪い物質を冷却材に使うような無理を強行しているのは,そこに一因があると思われる。諌早の干拓事業に関連して,公共事業の見直しが国民的課題となっているが,原子力政策こそその代表的なものと言えよう。このような背景を度外視しては,まともな評価はできないであろう。
調べていて痛感したことは,あの15年戦争に代表され,原子力船「むつ」という身近な例に端的に示されている,無責任体制という行政の根本的な欠陥である。地方自治体の場合には,不当な支出に浪費した税金を返せ,という訴訟が可能だが,国が相手ではその手段も使えないのである。官僚は,どんな大失敗をしても誰も責任を厳しく問われない。せいぜい,形をつけるために「トカゲの尻尾切り」でお茶を濁す程度である。「もんじゅ」の事故で,はたして科学技術庁に動燃(動力炉・核燃料開発事業団)を責める資格があるのだろうか。
動燃は東海再処理工場でも爆発事故を起こしたが,これまた「起こるべくして起こった事故」と言われても仕方がない事故である。これらに関して,事実を隠したり,嘘でその場をとり繕おうとしたり,国民の信頼を失わせるような「事象」を枚挙に暇のないほど重ねているが,身に染みついたその秘密主義の根源は「プルトニウムをエネルギー問題の解決策に使うことができるはずだ」という幻想にあると言えるのではなかろうか。ウラン238がほとんど全部プルトニウムに変わり,その大部分が核分裂を起こしてくれない限り,エネルギーの採算はとれないし,事故があったら何もかも無に帰するどころか,たいへんな災いを残す。飛行機の墜落をなくすことができないように,無理を強いる巨大技術に偶発事故は不可避である。「殷鑑は遠からず」どころではない,目の前にいくらでもあることを忘れてはなるまい。
地球が有限であることを考えれば,廃棄物の後始末ができない技術,地球環境を荒廃させる技術は「不完全」な技術と呼ぶべきである。完成の見込みのない「トイレなきマンション」は不完全で実用には程遠く,しかも採算の全く合わない技術なのである。こういうものをどうしたらよいか。エネルギー政策に関する国民的合意とは,都合の悪いことは隠しておいて,原子力推進というあらかじめ用意された結論に何が何でも同意させる,という「大政翼賛」的なものであっては困るのである。
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要約と提言
結論のまとめ
もんじゅ事故は,技術面からみても,法制度面からみても,政策論的にも,起こるべくして起こった。このような事故や事故隠しを繰り返さないためには,事故調査の体制や技術開発の進め方にとどまらず,原子力行政や政策決定のあり方にさかのぼって全面的な見直しが必要である。しかし,これまでの政府の調査によっては,事故は何ら解明されておらず,動燃(動力炉・核燃料開発事業団)の二つの事故の教訓はまったく活かされていない。「動燃改革」はとかげのしっぽ切りにすぎない。
政府は,原子力政策,とりわけプルトニウム政策の,国民参加による全面的見直しを進めるべきであり,その作業が終わるまでは,「もんじゅ」を含む,関連する計画を凍結すべきである。その際に,完全な情報公開に基づいた,国民主体による政策決定がなされるような法制度が確立されるべきである。
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第1部 技術面から見たもんじゅ事故の原因と問題点
(1) 事故の根本原因は,初歩的な設計ミスとそれを許した体制総体である
事故の最も直接的な原因は,非常識な段付き構造の温度計さや管を設計した設計者の質の悪さであり,それをチェックできなかった審査体制と試験体制にある。
事故原因の調査は,事故を起こした当事者の動燃が中心となって行なったものであり,客観性・中立性を欠いている。科学技術庁原子力安全局に設置されたタスクフォースが主体的に原因調査に携わった形跡はみられない。
(2) 事故原因はなんら解明されていない
動燃および科技庁が描いた事故のストーリーには,き裂がさや管を貫通した時期や恣意的な応力解析シミュレーション,熱電対の曲がりによる変位応答データのばらつきなどいくつもの疑問が残る。
(3) 動燃にはナトリウム取り扱いの技術的備えがない
漏えいした高温ナトリウムの挙動は安全審査における事故想定を大きく超えるものであり,床ライナーの健全性に根本的な疑問が生じた。設計の根本にさかのぼって安全審査をやり直すべきである。
(4) マニュアルの欠陥が事故を拡大
漏えい事故に対するマニュアルの欠陥が事故への対応をことごとく誤らせ,その影響を拡大した。3種類あるマニュアルは,安易で矛盾に満ちた安全設計思想に基づいて作成され,現実の事故に全く対応できなかった。
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第2部 法・制度面からみたもんじゅ事故とその教訓
(1) もんじゅ事故で実証炉開発は大幅に遅れるだろう
日本の原子力開発は「電力・通産連合」と「科学技術庁・所轄特殊法人グループ」の二元構造のなかですすんできた。実証炉建設は日本原子力発電が担うことになっているが,コストダウンを求めた「もんじゅ」と型の異なるトップエントリー方式の採用で,開発スケジュールは大幅に遅れるだろう。
(2) 事故により核燃料サイクル路線の存続が極めて困難になるだろう
事故とそれに併発して起きた事故隠しにより,動燃に対する国民の不信が決定的なものとなり,原子力開発に政策的・社会的な面で大きな衝撃を与えた。その結果,高速増殖炉開発が事実上の無期凍結状態に追い込まれ,「核燃料サイクル路線」全体の将来にわたる存続を極めて困難なものとした。
(3) なお不透明な原子力委員会・原子力安全委員会の議事公開
事故を契機として,原子力委員会・原子力安全委員会の本会議や専門部会の議事が原則公開され,また部会報告に対する意見募集や情報公開請求への対応などが行なわれることとなった。しかし,メンバーの選任などに不透明性が残っている。
(4) 国民不在の政策決定
原子力政策の決定は,国会の審議権が不十分なまま,住民の参加もなく行なわれている。原子力の基本的事項が政令や府省令などに委任されており,住民参加のないまま進められている。公開ヒアリングの制度はあるが,法的な根拠がなく住民の権利として位置付けられていない。
(5) 科技庁,動燃,メーカーの慣れあいと癒着
3者の癒着は根深く,当然考えられるべき損害賠償請求などが行なわれていない。開発の見通しのない事業計画への資金投入をチェックするシステムを作る必要がある。
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第3部 プルトニウム政策ともんじゅ事故
(1) 世界の高速増殖炉開発に学べなかった
世界各国ともに高速増殖炉─再処理路線を追求したが,非現実的な計画と実態のギャップが極限になったところで軌道修正が行なわれた。日本には軌道修正機構が欠如しており,後戻りできない構造になっている。
(2) 国際的孤立の中で,「もんじゅ早期運転」の至上命令となった
国際的懸念や非難の中で,「もんじゅ」燃料の必要性を理由にプルトニウム輸送を強行したため,早期運転開始が至上命令となり,そのあせりが事故を生んだ。
(3) 「動燃改革」は組織いじりによって実現するものではない
根底にあるプルトニウム増殖─プルトニウム利用路線の無理であり,求められるのはプルトニウム政策からの撤退である。
(4) 民主主義の実現と長期計画の全面見直しを!
今や原子力長期計画の破綻は明らかだが,現在求められているのは,頭からの「国民的合意」のおしつけでなく,国民が主体となって原子力政策を決定する民主主義の実現である。
政府への提言
1. 独立な機関と国民参加による事故調査の徹底見直しと,「もんじゅ」安全審査の全面やり直しを!
事故は未だ解明されていないし,解明に必要な情報も公開されていない。「もんじゅ」の安全審査そのものも,致命的欠陥をもつことが明らかになった。完全な情報の公開のもとでの独立した第三者機関による事故調査のやり直しと公聴会やシンポジウムなどによる広範なチェックアンドレビューを保障する必要がある。その結果を踏まえつつ「もんじゅ」の安全審査も全面的にやり直すべきである。今の段階で,「安全性総点検」などと称する運転再開の準備をすべきでない。
2. 原子力各分野における真の情報公開の確立を!
情報公開はある程度進み始めたが,それによって,かえって現在の情報公開のレベルの決定的不十分さも明確になった。各種委員会・専門部会等の逐語的議事録の作成と公開,専門委員会の下にある分科会等の公開,現在非公開の商業機密に関わる情報の公開のための基本ルールの確立などを早急に進めるべきである。
3. 原子力長期計画,とくにプルトニウム政策の全面的見直しと,その作業が終わるまでのプルトニウム計画の凍結を!
現行の原子力長期計画は破綻している。高速増殖炉だけでなく,プルトニウム利用や再処理・核燃料サイクル政策全体について,もはやその正当化の理由が失われ,当評価会議でも合理的根拠をまったく見いだし得なかった。また,現在の「高速増殖炉懇談会」「動燃改革検討委員会」は科学技術庁主導のインサイダー的機関の域を出ない。
これに代わり,広く国民の意見を反映できるようなメンバー構成と中立的事務局をもつ委員会をつくり,さらに公聴会によってひろく意見を聞いて,「もんじゅ」閉鎖も含めた,プルトニウム政策・核燃料サイクルの全面的見直しを進めるべきである。その議論は,プルトニウム政策(高速増殖炉,再処理,プルサーマルを含む)とバックエンド政策の選択肢のそれぞれのメリット・デメリットを詳しく評価したものでなくてはならい。その議論が終わるまでは,これらの計画を凍結するのが当然と考えられる。
4. 原子力行政に国民の直接的チェックがかかる法制度の確立を!
上記1〜3を踏まえ,国民参加型の事故調査や政策決定がなされるべきである。さらに,そのための全面的な情報の公開が保障されるべきである。そして,委員会審議や政策決定過程への国民参加,情報公開を法制度的に保障すべきである。
5. 原子力開発体制と安全監視体制の完全分離を!
原子力の開発の利害とは独立した専門的能力を持った安全監視機関をつくるべきである。
6. とかげのしっぽ切りでなく,国民参加型の「動燃改革」議論を!
「動燃改革検討委員会」の改革案は,政策論議を棚上げして,組織だけをいじる(動燃は基本的に名前を変えただけで残る)「とかげのしっぽ切り」に過ぎない。しかも,またその議論はまったく国民不在型のものである。あくまで,上記3の線に沿った国民的な政策論議を優先し,その議論に従って,動燃は「改変」ないし「解体」されるべきである。▲
http://www.pen.co.jp/syoseki/datugen/9725.html