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第1次石油危機から30年 原発依存、新たな弱点
トイレットペーパーの買いだめ騒ぎなど社会的事件にまで発展した第1次石油危機から、今秋で30年がたった。ショックを機に、官民あげての石油備蓄と脱石油政策で原子力が推進され、日本のエネルギー事情も大きく変わった。ただ、原子力に依存するシステムは、発電トラブルなどで原発がひとたび停止すれば、エネルギー危機が現実化するもろさも抱える。
■戦略で官民に温度差
30年で、世界の石油地図は激変した。ロシアが中東のサウジアラビアに迫る石油輸出大国になり、先進国の「ロシア詣で」が盛んだ。9月には「米ロエネルギーサミット」が開かれ、両国は親密ぶりをアピール。欧州も豊富な天然ガスを目当てに資源外交を展開、政治的に不安定な中東への石油依存度を低下させるのも大きな目的だ。
一方、アジアでは産油国の中国が石油の純輸入国に転じ、日本の石油権益の獲得にも大きな影響を与えている。イラクの大油田群やイランのアザデガン油田、ロシア・東シベリアからの石油パイプラインを巡って、日中は競合している。特にシベリアについては、太平洋側に抜けて日本へタンカーで運ぶルートと、中国・大慶向けルートが激しく綱引きを続ける。
ただ、日本側は経済産業省が必死にプロジェクトの旗を振っているのと対照的に、民間石油会社は冷静だ。経産省の焦りの背景には、00年、日本最大級の自主開発原油だったアラビア石油のカフジ油田(サウジアラビア側)の権益失効がある。しかも、日本の石油の中東依存度は石油危機当時の78%から01年度には88%に上昇する一極集中ぶりを示す。
一方、石油会社幹部は「高いコストをかけてまで自主開発にこだわる時代ではない」と指摘する。石油取引市場の発達に加え、特殊法人の石油公団などが進めた開発案件の大半は挫折し、民間は長期の権益確保より、足元の採算性重視に大きく方向転換している。経済の効率性とエネルギーの安全保障をどう両立させるのかという課題は残ったままだ。
■新たな危機の構図
現在の日本では、石油危機当時と比べ、エネルギー消費に占める石油依存度が大幅に低下した。危機当時の73年度には77.4%だったエネルギー消費に占める石油依存度は、01年度に50%を切った。代わって天然ガス(01年度13.1%)や原子力(同12.6%)が大幅に伸びてきた。
ただ、これが新しい弱点も生んだ。特に原子力発電所は現在、全国に52基、全発電電力量の3割を占める。今夏、東京電力の原発不祥事をきっかけに同社の原発が相次いで停止、首都圏の電力危機を招いた。「危機の様相が変わった」と経産省幹部は言うが、原発依存はこの先も続く。
経産省が10月にまとめたエネルギー政策の基本となる「エネルギー基本計画」でも、「原発を基幹電源と位置づけ推進する」と明記した。しかし、原発への不信・不安もあり、新規立地は思うように進まない。
国は10年度までに9〜12基の新設を見込んでエネルギー需給の長期見通しを立てているが、運転開始できるのは8基以下になりそうだ。また、原発の使用済み燃料を再処理してプルトニウムを取り出し、高速増殖炉で繰り返し発電に使う「核燃料サイクル計画」の推進を打ち出しているが、先が見えない。
高速増殖原型炉「もんじゅ」は事故で止まったままだ。プルトニウムを普通の原発で燃やす「プルサーマル計画」は、東京電力の計画が原発のトラブル隠しで地元の福島県や新潟県が事前了解を撤回。関西電力は07年に福井県の高浜原発で実施する方針だが、それ以外の事業者の計画は具体化していない。
使用済み核燃料や廃止炉などの後処理で必要な30兆円ともいわれる費用の官民分担の議論もこれからだ。風力など脱原子力の道を進む欧州などと大きく異なり、原子力に将来を大きく委ねた日本のエネルギー政策。そこには、余りに多くの課題が解かれないで横たわり続けている。
http://www.asahi.com/money/topics/TKY200311040078.html