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有明海のノリ凶作の原因を調べるため諌早湾干拓の水門を開けるべきかどうか。その是非を論議してきた農水省の「中・長期開門調査検討会議」が、水門を開けても意味がない、との報告書をまとめた。
委員7人全員が農水省や旧建設省などの官僚OBだ。予想された結論とはいえ、自分たちに都合のいい組織をつくってまで干拓推進になりふり構わぬ農水省の態度にはあきれるばかりだ。
3年前のノリ凶作に際して、農水省が専門家を集めてつくった第三者委員会は、諌早湾を閉め切った潮受け堤防の水門を中・長期にわたって開けて調査することを提言していた。
にもかかわらず、農水省は開門が困難な理由を並べ立て、「行政判断のための論点整理の場」と称して、今年3月、官僚OBばかりの別組織を設けた。
その検討会議は地元の学者・研究者らによる専門委員会にゲタを預け、そこでの賛否両論のうち、農水省に有利な否定論だけを検討会議の結論として取り込んだ。
開門否定論は、要するに「水門を開けても、完全には元通りの状態に戻らないのだから、原因究明に必要なデータは得られない」というものだ。
こんな理屈が通用するなら、どんな乱暴な開発行為でも、やり得となってしまい、途中で引き返すことはできなくなる。
開門調査の目的は、干拓の潮受け堤防をつくる前の状態のデータを得ることではない。そんなことが不可能なことは初めからわかっている。そうではなく、水門を開けることによって有明海の潮流や水質、干潟の生態系にどういう変化が表れるかを調べ、その変化が有明海の回復につながるかどうかを見極めることにある。
第三者委員会が中・長期の開門調査を求めたのはそういう趣旨だ。専門家の出した提言を、官僚OBが筋違いの論法でひっくり返すのは独善というほかない。
農水省はまた検討会議の場で、開門調査をするには630億円かかるとの試算を示した。「だから水門を開けられない」と、つっかえ棒にしたかったのだろう。
だが、有明海のノリ漁はずっと不安定な状態が続いている。昨季は3年前と同じ色落ち被害が広がったし、今季は秋口に大規模な赤腐れ病が発生した。
自然条件のちょっとした変化で大きな異変が生じるのは、有明海に備わっていた自然の復元力が弱まっているからだ。その原因は一つだけではないとしても、広大な干潟を消滅させた諌早湾干拓が大きくかかわっていることは疑いようがない。
最初から「調べても原因はつかめない」といって何もしないことは行政の怠慢だ。それがいかに犯罪的かは、これまでの数々の公害や薬害の歴史が示している。
農水省は報告書にかかわらず、中・長期の開門調査を実施すべきだ。