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1月20日(ブルームバーグ):日本銀行の福井俊彦総裁は20日午後の定例記者会見で、為替相場の円高が景気に与える影響について「直ちに下振れリスクを増しているとは判断してないが、市場の動きが人々の心理状態をどのように巻き込んでいくかを考えると、下振れリスクになりかねない」と指摘。そのうえで「私たちとしても、政策運営上十分注意していきたい」と述べた。
日銀はこの日の金融政策決定会合で「今後の景気回復の動きをさらに確かなものにする」(公表文)として、主たる操作目標である当座預金残高をこれまでの「27−32兆円程度」から「30−35兆円程度」に引き上げる追加緩和に踏み切った。総裁はこの決定について、2人の委員が反対したことを明らかにした。
総裁は具体的な調節方針について「一応、ほぼ中間の33兆円くらいを中心点として、引き続き上限との間にも下限との間にも余裕幅を持って、機動的な金融調節をやっていきたい」と述べた。
長短金利の抑制にも期待
追加緩和でどのような効果を期待しているのか、との質問には「金融市場のなかから不安感が増幅されて心配が先行するという状態をなくす」ことのほか、「長短(金利)ともなるべく低いところに安定的に抑制される」ことを挙げた。
また、経済・物価の情勢が概ね標準シナリオ通りに沿って動いているなかで追加緩和に踏み切ったことについては「標準シナリオ通りに動いていても、あるいは標準シナリオから上振れる条件がいくらかあるにしても、必要に応じて追加緩和はあり得る」と言明した。
主な一問一答は以下の通りです。
――この日公表した金融経済月報は、経済・物価動向は昨年10月の経済・物価の将来展望とリスク評価(展望リポート)」で示した標準シナリオに「概ね沿った動きを続ける」と評価した。それにもかかわらず追加緩和に踏み切ったのはなぜか。
「景気の現状は緩やかに回復しており、先行きも回復を続けるが、引き続き企業の過剰債務など構造要因が根強いことを考えると、景気の回復テンポは緩やかにとどまる可能性が高い」
「現在、米国、中国を中心とした海外経済が事前予想よりやや強めに推移していること背景に、日本からの輸出も増えている。生産の増加、企業所得の増加、設備投資の増加という前向きの循環メカニズムが既に働き始めている。むしろこうした循環メカニズムはやや強みを帯びながら作動し始めている」
「ただ、今後これが持続的な回復に真につながり、物価の面でデフレ脱却のメドをつけるところまで行くかどうか、という点については、なお不透明要因が多い。特に大企業・製造業を中心に始まった良い動きが、非製造業、さらに中堅・中小企業にも、さらなるリストラ努力の成功を伴いながら景気回復の裾野が広がっていくか、そして、経済全体としてなお残る需給ギャップの縮小が順調に進み、デフレ脱却のメドがほの見えてくるか、なお不透明だ」
「昨年10月に示した標準シナリオに概ね沿った形で経済は動いているが、先行きさらに良い姿にこれをつなげていく必要がある。現在、比較的良い方向に経済が動き始めていることは極めて歓迎すべきことだが、だれもこれで満足してはならない。恐らく民間企業、民間金融機関といった民間部門では、一層この好循環を、より構造的な改善を伴いながら、より確かな経済に持っていこうという決意と努力を、いま固められつつある段階ではないか、と思う」
「金融政策の面でも、こうした民間の決意と努力をさらにしっかりサポートしていきたい。今回の措置の真の狙いはここにある」
――今回の決定に為替相場の円高が何らかの影響を与えたのか。
「金融・為替市場の動きが直ちに下振れリスクを増しているというところまで判断はしてないが、為替市場を中心とする市場の動きが人々の心理状態をどのように巻き込んでいくかというというところまで考えると、下振れリスクになりかねないという、そういう意味の気持ちが私たちにも伝わってくるので、私たちとしても政策運営上、十分注意していきたい」
――当座預金残高目標を「35−30兆円」に引き上げたが、「27−32兆円」のときと同様、その中間あたりを狙って金融調節を行うのか。
「金融調節の実際の運営方針としては一応、ほぼ中間の33兆円くらいを中心点として、引き続き機動的な金融調節をやっていきたい。つまり、上限との間にも下限との間にも余裕幅を持って運営していきたいという点に変わりはない」
――今回の追加緩和で、銀行の構造調整をサポートするうえで、具体的にどのような効果に期待しているのか。
「抽象的に言うと、金融緩和環境を万全なうえにも万全な状況で用意して、企業や金融機関がリストラ努力をする場合の金融環境を最も恵まれた状態にし、それを維持していくことにある。より具体的には、短期金利が非常に低いところに安定し、できる限り期間の長い金利についても低位で安定するように、つまり長短(金利)ともなるべく低いところに安定的に抑制される(ことにある)」
「2番目に、金融市場のなかでさまざまなショックが持ち込まれてきた場合にも、金融市場のなかから不安感が増幅されて人々のリストラ努力、あるいは前向きの努力に対して、素直な気持ちでこれを取り組めない、心配が先行するという状態をなくす、ということだ」
――日銀は景気・物価情勢が標準シナリオ通りに動いているという判断した。総裁が「万全を期したい」とした長短金利も安定している。今回は景気回復局面の金融緩和となるが、デフレ脱却シナリオがあってそれを基に判断するということになれば、市場からは読みにくく透明性に欠ける金融政策と受け止められないか。
「そのリスクはまったくない。前提条件が違う。デフレ脱却後の正常な好況不況の波のなかで動いている場合に、景気回復が進んでいるのに金融緩和はあり得ない。構造改革の推進を伴いながらデフレ脱却のプロセスを歩んでいる状況とでは、前提条件がまったく違う」
「したがって、われわれは標準シナリオ通りに動いていても、あるいは標準シナリオから上振れる条件がいくらかあるにしても、必要に応じて追加緩和はあり得るということは前から言ってきた。その通りのことを今回、1つ判断したということだ」
「金利が生きているときの経済とは違って、量的緩和の場合には、金融市場の金利の動きをある程度、緩和効果で封じ込めているところもある。したがって、追加緩和があるかどうかを読めないのは当然のことであって、これを読めるように機械的にやっていくことはほとんど不可能だと思う。われわれも政策決定会合に臨んであらゆる材料を点検して、議論して初めて結論が出る話だ」
――量的緩和の拡大が市場機能を一段と低下させる恐れはないのか。
「当面、市場機能が十分でないという前提で政策を続けている。いずれ市場機能を復活させなければならない。今のような量的緩和を長く続ければ続けるほど、市場機能の復活という段階でさらに苦労を伴うことは明らかだと思うが、それを覚悟のうえでやっていかざるを得ない。そのことが心配だから、いま手を止めろという意見は恐らくないのではないかと思う」
http://www.bloomberg.co.jp/news/mof.html?s=AQAzs9SPCk.qL4pGN