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石油依存の見直しを
H16/01/08
私がコンピュータソフト販売会社を起業した翌年の一九七三年秋、第四次中東戦争の勃発から第一次オイルショックが起こった。今から三十年前のことだが、記憶に残っている人も多いのではないかと思う。物不足の噂によって人々は買いだめに走り、さまざまな生活必需品が不足状態となった。高度成長期に普及した車社会はガソリン不足に直撃され、ガソリンスタンドは給油制限を行い、政府は緊急対策として企業への一律10%の石油、電力供給削減や家庭へのマイカー自粛、広告塔の使用禁止等々を要請したのである。
消えた“危機説”
一九七八年にはイランでの石油労働者ストライキ、七九年のイラン革命後の原油の大幅値上げによって第二次オイルショックがもたらされた。日本はそのたびにエネルギー依存の高い社会であることを気づかされたはずであった。しかし九一年の湾岸戦争、そしてこのたびのイラク戦争にもかかわらず、最近はエネルギー危機を喚起する呼びかけが政府からも民間からも聞かれない。
財団法人石油情報センターは二〇〇一年末の推計で「石油があとどのくらいあるか」という目安の一つである可採年数を四十四年としている。さらに同センターは“この数値は「あと四十四年で石油がなくなる」というものではない、なぜなら石油開発技術は格段に進歩しており今後も新規油田の発見や回収率の向上が予想され、可採年数の維持・増加が期待される”とさえ記している。どうやらいつまでたっても石油はあと四十年くらいあるという、不確かな説得をされているようだ。
しかしどんなに技術が進歩しても、それを上回る消費を続ければ石油はいずれ枯渇するか、少なくとも価格の高騰が始まる。にもかかわらずそれを人々に正確に告知し、社会がどのような状態にあるかを知らせることは現代におけるタブーの一つになってしまっているようである。そして石油が数十年でなくなることが確実であるにもかかわらず、私たちはその事実を拒絶し、石油が無限の資源であるかのごとく振る舞っている。
国民より企業の利益
二十世紀になって先進国に取り入れられたライフスタイルを改めなければ、人類を含むこの地球上の生き物は絶滅に追いやられるだろう。特に膨大な量のエネルギーを消費し、汚染の原因を作り出しているのが飛行機や自動車といった輸送産業である。これを少しでも解決するためには、小麦や肉などを輸入品に依存するのではなく国産へシフトするよう日本政府が奨励する必要がある。輸入を減らすことで食料自給率の向上だけでなく輸送によるエネルギー消費も減らすことができるからだ。
しかし政府がそれをしない理由は、過剰なエネルギーを使い、環境を汚染してまで海外の食料を日本へ輸入し、日本の国民がそれを消費することによって一部の人々が短期的な利益を手にすることができる現在のシステムを変えたくないためである。
昨年末、アメリカで牛海綿状脳症(BSE)に感染した牛が見つかった。加工食品も含めて政府は新たな米国産牛肉の輸入を禁止したが、しかし外食産業は消費者の安全よりも、「食材の確保」を理由に政府に米国産の早期輸入再開を求めている。この営利本位のシステムの中では、国民の心身の健康、安全、安寧ではなく、企業がもっと利益を得られるようにするのを助けることが第一になっている。
食料もエネルギーも海外に依存している日本は、石油価格の上昇でほとんどの産業が収縮を余儀なくされるだろう。石油の燃焼による地球温暖化の側面から考えるとこれは良いことのように思えるが、石油にあまりにも依存する現代社会では、それがもたらす失業の増加や食料の高騰など、その影響はあまりにも大きい。
脱石油の産業体系を
石油時代の終焉(えん)と地球温暖化の恐怖に対して、私たちはどのような対応をすべきなのか。生活様式や農業を含むさまざまな産業のあり方を見直すことしかないと私は思っているが、それは政治的リーダーシップなしには不可能である。国民にもっと消費をさせ、または国家のGDPを上げることばかりに熱心な政府にそれを期待することは絶望的であり、またそう考えると、イラクを占領するアメリカとアメリカ支援を国益とする日本政府の目的がその石油にあることは明白である。
つまり自分たちが生きている間だけこのライフスタイルが維持できればいい、というものかもしれない。アメリカが興味を示している国をみれば、それはより明確だ。アフガニスタン、ベネズエラ、さらにブッシュ大統領が昨年ナイジェリアなどのアフリカを訪問したのも石油が目的だった。それでも、石油を使い続けて地球の温度を上げるか、または石油が枯渇するか、どちらが先でも人類の破滅は避けられない。
アメリカ先住民は何かを決める時に「それが七代先の子孫にどういう影響を及ぼすか」を熟慮してから決断すると聞いたことがある。アメリカ先住民は白人入植者にその地を奪われた。白人の文明はアメリカだけでなく、地球をも奪うことになるのかもしれない。(アシスト代表取締役)
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