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日本道路公団の藤井治芳(はるほ)総裁に対する解任手続きである「聴聞」が17日行われ、昼食を挟んで9時間ものロングラン審理の末、石原伸晃国土交通相が当初から示していた早期解任の方針に従い1日で打ち切られた。国交相の解任方針に、法的手段をちらつかせながら真正面から反撃する藤井氏。聴聞は終わったが、同公団の総裁問題が解決したとは言い難い状況で、政府・与党内には、逆に石原国交相の対応に疑問を投げかける声もある。泥沼化の様相を帯びてきた同公団総裁問題は、衆院選を控えた小泉内閣にも打撃となりそうだ。
◆藤井総裁「権力の怖さ分かって」
「道路局にすべて情報を報告している。資料も渡してあるし、答弁も道路局と公団がすべて共有している」「僕が道路局長なら、資料見せますよ」――。
聴聞の会場では、時折笑い顔を見せながらの「藤井節」が響いた。対照的に、終了後、どっと疲れた表情で会場を出たのは、国交省側の担当者側だった。藤井氏に対する聴聞審理は、昼食や途中の休憩を除くと実質7時間半。道路行政を知り尽くしている元大物事務次官が、弁護士4人を伴っての「徹底抗戦」の舞台になった。
国交省は解任理由として「藤井総裁は、高速道路に関する諸制度を抜本的に改革する重要な時期を迎えて、役職員が一丸となって改革に取り組むべき日本道路公団の総裁として適格性を欠いており」と長々と触れ、来年の次期通常国会に民営化関連法案の提出を控える公団にとって、総裁交代の潮時だと強調した。
日本道路公団法で定められた総裁解任の理由は「心身の故障のため職務の執行に堪えない」「職務上の義務違反」「その他役員たるに適しないと認めるとき」の三つしかない。明確な規定がなく、同道路公団トップが解任された前例もない。
藤井氏側は、午前中には解任手続きそのものを批判。午後には具体的な解任理由をこと細かく批判し、聴聞の再実施を繰り返し求めた。国交省側が独裁的な公団運営を批判すれば「調査の指示や示唆は国交省からなかった。なぜ行政指導をなさらなかったのか。行政は威張る立場ではない」とかみついた。
聴聞の最後に一言と言われた藤井氏は「大臣に逆らったり、昔の仲間と気まずい思いをするのは本当はしたくないことです。あなたがたは今現役で権力を持っている。どのくらい怖いことかよく分かってください。私も権力を持ってきたが、常に慎んできた」。ブラックジョークのような発言に、聴聞会場の空気はさらにいっそう張り詰めた。【荒木功、中村篤志】
◆今後の展開は
石原国交相は既定方針通り20日にも藤井総裁の解任処分を決定する見通しだが、総裁側はただちに法的な対抗措置を講じる構えを見せている。関係者によれば、検討されているのは(1)処分の無効確認を求める行政訴訟(2)地位保全の仮処分申請(3)石原国交相への名誉棄損の損害賠償訴訟――など。総裁の進退問題は法廷に舞台を移しそうだ。
国交相側が総裁解任に踏み切れば、ただちに後任総裁を任命する必要がある。しかし、石原氏が民間の企業経営経験者からの登用方針を示しているのに対し、経済界では「こんな泥仕合になっては、ますます後任の成り手はいない」と敬遠する声が強まっている。このため、石原国交相は、本格的な後任人選が進むまで、村瀬興一副総裁を総裁代行に据える可能性もある。
一方、藤井総裁側の提訴を受けて、仮に裁判所が仮処分などの地位保全を一時的にでも認めれば、当面、形式的には藤井氏が総裁の身分を保持することになる。裁判の長期化は避けられず、公団トップに総裁と総裁代行が並び立つという異例の事態に陥り、混乱が長期化する可能性も否定できない。
藤井総裁の任期は来年4月15日。任期満了となれば、特段の理由を挙げることなく総裁を交代させることができる。このため、「小泉首相と石原さんは、功を焦って選挙向けの政治的パフォーマンスに走ってしまった。藤井総裁は既に『死に体』。国交省や国会への影響力を失ってしまっているから、任期まで放っておいても何の差し支えもなかった」(関係者)との見方もある。【若島正浩】
◆小泉首相「大臣に対応任せた」
官僚OB1人に振り回される政権という印象を与えかねない――。国交省が藤井氏解任を急ぐのは、「衆院選へのダメージを避けるには公示(28日)前の決着が必須」(首相周辺)という首相官邸の強い意志が働いているからだ。
首相が当初描いたシナリオは「衆院解散(10日)までの更迭」。イメージアップを狙う選挙戦略とみられるが、藤井氏側は17日の聴聞で「政治の道具に使った」と反発。解任強行の場合は訴訟を辞さない姿勢を示しており、「解任=決着」とはなりそうにもない。「ボタンのかけ違いがあった。ここまでになるとは……」。小泉純一郎首相に近い自民党森派幹部は首相の「誤算」を代弁した。
藤井氏が5日の石原国交相との会談で、政治家のイニシャルを挙げ、道路行政を巡る国会議員との深い関係に言及したとされる問題も「火種」として残る。民主党は「藤井総裁のクビだけ切れば済む問題ではなくなっている」(菅直人代表)と攻勢を強め、参院での閉会中審査を要求。イニシャル問題が衆院選の争点に浮上する可能性も出てきた。
首相は17日夜、記者団に「石原大臣に対応、任せています」と従来通りの言葉を繰り返した。解任問題を「石原VS藤井」の構図に「わい小化」することで、衆院選への影響を最小限に抑えたいという思惑が見え隠れし始めた。【末次省三】
[10月18日3時21分更新]