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レス1:「利潤なき経済社会」と「開かれた地域共同体」
http://www.asyura2.com/0311/dispute15/msg/757.html
投稿者 あっしら 日時 2003 年 12 月 15 日 05:00:00:Mo7ApAlflbQ6s

(回答先: ”近代”の超克と”利潤なき経済社会”に関する疑問・質問(あっしらさん宛) 投稿者 三四郎 日時 2003 年 12 月 13 日 15:09:27)


三四郎さん、こんばんわ。


断片的だったりごちゃまぜに書いてわかりにくかったと思っていますので、まず、用語の整理をさせていただきます。

● 「利潤なき経済社会」

 「近代経済システム」の枠内にある経済社会で、産業資本主義的近代の末期を想定した用語です。
 「利潤なき経済社会」は資本主義が行き詰った状況だと考えていただければいいと思います。

 「利潤なき経済社会」をうまくしのいでいく国策は国民経済主義だと考えており、それは、あくまでも資本主義=近代の

● 「開かれた地域共同体」

 「利潤なき経済社会」のなかから意識的につくり出させるもので、近代と異質の経済社会です。
 利潤獲得を経済活動の目的としない経済社会です。
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三四郎さん:「”近代”は、簡単に言えば軍事的にはイスラムへの敗北から、経済的にはシステムの欠陥から崩壊を迎えると解釈しました。
また、あっしらさん経済理論に従えば、たとえ近代連合軍が勝利しても、経済問題はそのまま残り、更に強化されるが為に結局崩壊に向かっていくことになると解釈しました。」-----------------------------------------------------------------------------------------------
「近代」の表層の崩壊は、「対イスラム戦争」(近代(金融)経済制度のグローバルな確立)の帰趨如何に関わらず不可避だと予測しています。

「近代」の表層とは、産業の発展を通じての国民経済の成長や生活の向上を指します。

貨幣的富の超過流入が近代国家の産業発展を促進してきました。
すなわち生産性を上昇させればより大きな利潤が得られるということを動因としながら近代産業は発展してきました。

より大きな利潤を得るために、産業生産設備の質的向上や量的拡大がはかられたのであり、産業生産設備の質的向上や量的拡大が自己目的的に追求されてきたわけではありません。
産業生産設備の質的向上や量的拡大は利潤を稼ぐための手段です。

この意味で、グローバリズムは、取り立てて新しいムーブメントというわけではなく、「近代」そのものが内包している運動論理です。

自国内で貨幣的富が行き来しても、貨幣的富の絶対量が増加するわけではありません。
国外からの貨幣的富の流入のみがその国の貨幣的富の絶対量を増加させます。
ある地域から貨幣的富の流入が途絶えれば、別の新しい地域にそれを求めるというかたちで「近代」は発展誘因を確保してきました。(貨幣的富の吸い上げを続ければその地域の貨幣的富は枯渇することになります)

グローバリズムは、「近代」そのものがその準備期間から持ち続けている思想であり論理です。

現在の世界経済をきちんと見ればわかるように、貿易を決済するための貨幣的富が不足している米国に貿易収支が黒字の日本や中国が貨幣的富を貸し出し、それで米国が財を輸入することでなんとか循環いているのが実情です。

米国連邦政府は、その気があるとしても、日本や中国から借り入れた貨幣的富を完済することはできません。

(これは、IMFを支配しているのが米国支配層で、そのIMFが国際債務過剰国に債務を履行できるようどのような政策を強いているかを顧みればわかることです。紙切れでしかないドルを増刷することで完済することはできますが、それが実質的な債務不履行(1万円を貸して10年後に千円返してもらうようなもの)ですし、米国支配層がドル建て金融資本を保有しFRBが彼らの所有であることから、そのような政策さえ採らない(採れない)と思っています(ドル建て金融資産の実質価値下落は彼らの大損))

対米貿易で大きな貿易収支黒字を稼いでいる日本や中国は、詰まるところ、自国の貨幣的富をもって自国の貿易収支黒字を維持しているに他なりません。
わかりやすく言えば、日本国内で生産した財をタダで米国に献上する貿易にいそしんでいることになります。
(それがそのように見えないのは、あくまでも貸し付けの形式をとっていることもありますが、国際決済がドル為替本位制であることを基礎に、米国への資金供与主体が政府や日銀という公的機関であり、米国から貿易黒字を稼ぐのは個々の民間企業だからです)

このような詐欺的構造が日本や中国そして欧州諸国の今日の産業発展を支えているメカニズムです。
そして、そのような詐欺的メカニズムが長期に続くことはあり得ないことから、産業資本主義近代の終焉を予測しています。

(米国への資金供与はあくまで貸し出しですから、利払いと元本返済が求められます。現在7兆ドルの米国債務残高は、5年もすれば10兆ドルほどになるでしょう。そうなれば、利払いだけで3千億ドル(約33兆円)を超えます。米国連邦政府の歳入は7、8千億ドルほどですから、利払いだけで歳入の40%近くが費やされることになります。その上に、貿易収支赤字が4千億ドルから5千億ドルです。このような状況が持続できるはずもありません)


 米国が唱導しているグローバリズムは、直接投資を含む金融取引及び金融制度の障壁解消であり普遍化であることが特質です。
 建前として自由貿易を掲げていますが、莫大な貿易収支赤字を計上し、保護政策や膨大な農業補助金で農産物の輸出を行っている米国は、財の交易自由化にそれほどのこだわりはありません。


「近代」の表層が産業であるとするなら、「近代」の基底は金融です。
金融利得を増大させるために産業の発展が促進されてきたということができます。

このまま産業資本主義近代が行き詰まると、これまでは重要な糧であった産業の発展が見捨てられ、金融資本主義近代にシフトしていくと予測しています。

米国支配層は、産業資本主義近代の終焉を予測しているからこそ、「対イスラム戦争」という先手を打って、金融主義近代への移行を推進していると考えています。

しかし、産業資本主義から金融資本主義への移行は、財の生産性が停滞したなかでの貨幣的富の吸い上げを意味するので、先進諸国の国民生活も困窮化させ結局はうまくいかないと予測しています。

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三四郎さん:「また、非常に気になる「対イスラム戦争は人類史上における最後の戦争である。」という驚くべき意見を私へのレスで書かれていましたが、となると、近代システム崩壊後に訪れるであろう”利潤なき経済社会”は一切戦争が無い社会ということになるのでしょうか?」
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「利潤なき経済社会」は、近代経済システムの末期ですから、戦争がないとは言えない段階です。

 それでも、国家と国家が戦火を交える戦争は、「対イスラム戦争」が最後だと思っています。(軍備そして内乱的戦闘はなくならないと思っています)
 ひょっとすると、茶番劇だと思っている今回の対イラク戦争が国家間の戦争の最後になるかもしれないとも思っています。

 近代史の戦争を振り返ればわかるように、戦争は、近代的経済権益の拡大を志向する近代国家の衝突もしくは近代的経済権益の政治的確保(植民地化)目的で行われてきました。
 いずれもが、外での経済権益(財の販売市場や資源の確保そして殖民先)をめぐる戦争です。

 植民地支配は、被支配に置かれた地域の独立闘争が終結をもたらしたという面もありますが、それ以上に、植民地支配が割が合わないものという判断が植民地支配の終焉につながったと思っています。
 直接の政治的支配に要するコストとそれで得られる国庫収入が見合わないことがわかり、影響力を行使できる人物が統治する独立国家として経済取引関係のみを持ったほうが得だという判断です。

(植民地支配は苛烈な貨幣的富や資源の収奪ですから、支配がしばらく続くと貨幣的富の吸い上げもできなくなります。また、政治支配は国家の負担で、収益は民間がいただくという構造は、国民国家として持続できないものです。政治的支配に要する軍事・警察の負担、インフラや民生安定に要する負担を考えれば、経済構造には組み込み終わっていることから、独立国家になってもらったほうが得です)


 そして、第二次世界大戦は、先進近代国家間の関係性を大きく変えました。
 先進諸国の対外関係の基礎は、帝国主義的利害対立から貿易を通じた水平分業がもたらす共通利益へと移行しました。

 このことから、植民地収奪競争や第一次世界大戦・第二次世界大戦といったような先進国間の戦争はお互い理(利)に適うものではなくなりました。

 米中(日本では米露も)の緊張関係も取り沙汰されていますが、中国やロシアが異なる価値観を掲げて世界革命にでも乗り出そうとしない限り、米国が両国を攻撃するメリットはありません。
 中国もロシアも、現在の世界経済構造のなかで、財の輸出を拡大したり資源の輸出を拡大することで自国の経済的発展をめざしています。
 そして、それは米国の利益にも適っています。
 産業が成長している中国や資源大国ロシアは、自国通貨がハードカレンシーではないことから国際金融家にとって世界で残された主要な金融利得対象地域であり、両国への直接投資も産業資本やそれに貸し出しを行う国際金融家にとって大きな利益源であり、両国が供給する安い財や資源は米国を安上がりで維持することに貢献します。

 そうである限り、米国が、核弾頭ミサイルが飛び交うことになるという問題もありますが、それを考慮外としても、得るものと失いものとの比較で益がない戦争を仕掛けることはありません。
(ロシアの資源を奪うために、泥沼化が必至の対露地上侵攻作戦に踏み切ることもありません。いったん奪っても長期的には維持することができないことがわかっているので経済取引を選択します)

 自国経済の発展にとって先進諸国との良好な関係性が不可欠となっている中国やロシアが米国に攻撃を仕掛けることもありません。

 望まないことですが、グローバリズムの完成は、各国が世界経済構造に完全に組み込まれることを意味するので、国家間の戦争を消滅させるはずです。

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