現在地 HOME > 掲示板 > Ψ空耳の丘Ψ31 > 972.html ★阿修羅♪ |
|
(回答先: 首相「農業鎖国続けない」、自由化拡大に意欲【お前はどこの国の首相だ?】 投稿者 小耳 日時 2003 年 10 月 22 日 09:49:46)
アジアの繁栄はここにあり
―日・ASEAN包括的経済連携構想の実現に向けて―
アジア大洋州局地域政策課 松川るい課長補佐に聞く
収録:平成14年8月29日
慶応義塾大学院法学科修士課程1年
大沼瑞穂さん
2002年1月に小泉首相がASEAN諸国を訪問し、「日・ASEAN包括的経済連携構想」を打ち出しました。この構想は日本経済再生のためにも注目に値します。しかし、これが具体的にいかなるものなのかということは国民側にあまり伝わってこなかったように思います。そこで今回、今後の日本とASEAN諸国との関係がいかにあるべきか、日本はこの地域をどのような地域にしたいと考えているのかという観点からこの構想の実現に取り組んでいる当たっている外交官の方にお話を聞いてみました。(大沼)
大沼:2002年1月14日・シンガポールで小泉総理はASEAN諸国訪問における政策演説を行いました。その中で日・ASEAN包括的経済連携構想が提案されましたが、その背景や目的は何であったのでしょうか。
松川:「日・ASEAN包括的経済連携構想」は、総理がASEAN諸国を訪問された際に提唱した「東アジア・コミュニティ」を実現するための「5つの構想」の一つです。東アジア諸国間の経済的相互依存関係は急速に深化してきおり、国境を越えた人、モノ、カネ、情報の動きは益々活発化しています。このような事情を背景に、我が国としては、東アジア諸国との間で経済連携をさらに深めていくことが重要です。
グローバル化が進む世界において、経済連携は世界的な広がりを見せています。NAFTA(北米自由貿易協定)やEUに見られるようにそれぞれの地域で密接な枠組みが出来上がっている中で自由貿易協定に未参加なのは、日本・中国・香港・台湾・韓国の他は一部の小国のみとなっていました。「周りが動いている中で止まっていることは後退しているに等しい」とも言います。しかし、もっとも大きな目的は、東アジア地域で1つのコミュニティーを作り、経済活動を規律するルールを浸透・普及させ地域全体の底上げをし、世界の政治外交の舞台で一つの能動的地域として存在感を持つことが大きな目的です。これは、日・ASEAN包括的経済連携構想に加えて、教育、人材育成分野での協力、2003年の「日・ASEAN交流年」、東アジア開発イニシアティブ、「国境を越える問題」を含めた安全保障面での日・ASEAN協力の強化が「5つの構想」として提唱されていることからもおわかり頂けると思います。
大沼:1月に小泉総理がASEAN諸国を訪問した時、シンガポールとの経済連携協定の署名がなされましたが、上記の構想のお手本になっていくと思われます。この協定は日本及びシンガポールにどのような意義を持っていますか。
松川:日・シンガポール経済連携協定は、日本にとって初めてのFTA(自由貿易協定)として、今後日本が締結していく自由貿易協定のモデルとなるということが本協定の最大の意義だと思います。日・シンガポール協定は、モノ、サービスの自由化、投資、原産地規則といった基本的な内容に加え、知的所有権、政府調達、相互承認、税関手続、人の移動競争などの自由化分野の他、経済連携強化分野として金融、情報通信技術、科学技術、人材養成、観光などの経済連携協力分野をもカバーする幅広い内容のレベルの高い協定です。このような協定が、現在、日・ASEAN包括経済連携構想の中で取り進められている各国との協定のモデルとなれば、ASEAN諸国との間で高いレベルの協定を作ることができますし、この日・シンガポール協定モデルがあれば最初から案文を作っていく作業が省かれるので協定が早くできるという効果が期待できます。
経済的な効果に関していえば、物品貿易について両国の貿易量の98%を超える産品の関税が無税になり、また、サービス、投資がさらに自由化され、日本の企業のシンガポールにおける活動は格段に自由になりました。シンガポールと日本の市場が一つになったと言っても過言ではありません。
大沼:シンガポール以外でも日・ASEAN経済連携構想の一環としてのタイやフィリピンとの2国間協定が結ばれていくようですがこれらはどのように進められていっているのでしょうか。またこれらの交渉が進む一方、こういった経済連携協定が結ばれず各国に取り残されていく国がでてくると思われます。こういった時差はどのように解決していくつもりですか。
松川:「日・ASEAN包括的経済連携構想」については、日本とASEAN全体との間で連携可能な具体的分野や連携の枠組みなどについて検討を行う一方で、日本は、同構想の基本的考え方に従ってASEAN内の用意のあるいずれの国とも、日・シンガポール経済連携協定の枠組みを基礎とした二国間での経済連携強化に取組むこととしており、この方針は、ASEANとの間でも一致しています。この方針にしたがって、日本との二国間の経済連携に名乗り出たのがタイとフィリピンでした。日・タイ、日・フィリピン間の経済連携については予備協議を経て作業部会が開催されるところです。ASEANとの経済連携構想の一貫として、日本は希望するどの国とも二カ国間経済連携を行うことを明らかにしており、日本が相手を選別しているわけではないのです。「時差」が生まれることは好ましくないと考える人もいるかもしれませんが、ASEANというのはヨーロッパなどと異なり、例えば、シンガポールとミャンマーの一人あたりGDPは約170倍の格差があるというように各国の経済格差が相当異なる国の集まりだということに留意する必要があります。意味のある内容をスピード感を持って作ることを考えれば、特に、ぎりぎりの自由化の交渉が必要な分野については、日本一人が経済レベルも関心事項も異なる10の国を相手に交渉するというのは余り現実的ではありません。但し、究極的な目標は、ASEANと日本との全体をカバーする地域的な経済連携を達成することであり、これらの二国間の取組というのは、その第一段階に位置付けられるものです。二国間経済連携がいくつか達成されると相手国の体質は格段に改善され、ASEAN全体の連携を実施する際にも高い水準での経済連携が可能となるのです。最初からASEAN全体を相手にするとどうしても最小公倍数となる低いレベルでの連携しか達成できないように思います。
アジア大洋州局地域政策課 松川るい課長補佐
大沼:時差の問題に加えて、ASEAN諸国はシンガポールのように経済の基盤のしっかりした国がある一方、カンボジアやラオスはまだまだそのような経済の基盤が整っていないという問題があります。この構想を実現する中で、ASEAN諸国内の格差がますます大きくなるとの懸念の声もありますが、このことについてはどのようにお考えですか。
松川:欧州、米州はともに地域的な経済枠組みを作り地域としての競争力を高めてきました。その中で、アジアは取り残されている状態にあります。アジア全体で底上げしていくには世界に通用する競争力をこの地域に備える必要があり、このためにこの構想を一時も早く実現することが重要だと考えています。この構想を実施せず現状のまま放置すれば格差は広がらないとは言い切れません。この構想の根本的な理念は、パイ自体を大きくすることにより、みんなで利益を得ようというものです。最終的な目標は東アジアに1つのコミュニティーを作ることであり、カンボジアやラオスといった国々を参画なくしてコミュニティーの達成はできません。すぐに経済連携の具体的な取組を始められない国に対しては技術支援を行うことにより経済連携を開始できる体力を付けるサポートをしていくつもりです。
大沼:では例えば、日本政府が途上国である農業国(カンボジアなど)に対して優遇措置をとった場合、多くの農作物が日本に流入し、日本の農家からの反発は避けられません。そういった場合、政府としてはどのような調整を行っていくつもりですか。
松川:小泉首相もおっしゃられているように日本の経済が10年以上も停滞しているのは、日本が経済大国という立場に安住し、構造改革を怠ってきたからです。構造改革をして日本も国際的な競争力を高めるよう努力する必要があります。経済連携構想は日本全体にとっては経済的には利益をもたらすものです。その過程で、分野によってはいろいろな苦労があり得るとは思います。しかし、ここで考えなければならないのは、我々は、経済連携によって何を目指すかということです。単なる短期的な経済的利益だけではなく、アジア地域をルールによって経済が規律され、透明で競争力のある魅力的な地域にレベルアップすることが大きな目標の一つであることを忘れてはなりません。
大沼:日・ASEAN包括的経済連携構想において日本の民間企業に求められていることは何ですか。
松川:第一に政府側としては、日本の民間企業がこの地域において活動しやすい環境を整えるよう最大限の努力を行うので、企業としては、日本経済再生のためにもこの機会を最大限活かし頑張って頂きたいということです。第二に、そのための政府側の取組が企業のニーズにフィットしたものとなるよう、政府に対しどんどん要望を聞かせて欲しいし、緊密なコミュニケーションをさせて頂きたいということです。もっとも、日本政府は国民全体のためにこのプロジェクトを進めているので、企業だけでなく、いろいろな分野の方の声をよく聞いて政府の作業に反映させて行きたいと考えています。
大沼:この構想を具体的に実現するためにどんな努力がなされていますか。
松川:先程も述べたとおり、既に、日本との経済連携を希望するタイ、フィリピンとの二国間経済連携の取組が開始されており、9月19日、20日には第1回日タイ作業部会が開催され、どのような分野で経済連携が可能かを含め互いの国の実情についての率直な意見交換がなされます。また、フィリピンとの間でも同様に、10月に第1回日フィリピン作業部会が開催される予定です。このような二国間の取組の他に、日・ASEANの種々のプロセスの中で、日本とASEAN全体で、どのような経済連携が可能かについての議論を行い、経済連携のもたらす地域への経済的効果などについての研究を行ったりしています。
大沼:本年11月にカンボジアで開かれる日・ASEAN首脳会談ではどんなことが期待されていますか。
松川:日・ASEAN首脳会談では、日本・ASEAN間の種々の政治的、経済的な問題、世界の政治的、経済的な問題など幅広い事項について首脳間で議論が行われますが、その中でも、「日・ASEAN包括的経済連携構想」は中核的な議題となると思います。本構想は、そもそも小泉総理という首脳が提唱したということもあり、その取り進め方について首脳会談において具体的な指針が出されることになると思います。小泉総理が「世界一大きな教会を建てよう」と提唱したとすれば、次の日・ASEAN首脳会談では、この地域をどんな地域にデザインし、実現していくのか、いわばガウディがサグラダ・ファミリアの設計図を書くような仕事がなされなければなりません。サグラダ・ファミリアの例は時間がかかりすぎて良くないかもしれませんが。
大沼:中国もASEAN諸国とのFTAを締結しようとしているようですが、このような中国の動きは日本・ASEAN関係にとってどのような意味があるのでしょうか。
松川:日本は、最終的には、中国や韓国なども含めた東アジアという一つの大きな地域コミュニティーを作ることを目標としています。日本は、東アジア全体の経済連携強化のための第一歩として、既にシンガポールと経済連携協定に署名したほか、韓国との間でFTA共同研究会を進めており、ASEAN諸国との間では「日・ASEAN包括的経済連携構想」に基づき、日・ASEAN間で幅広い分野における経済連携の強化に取り組んでいるのです。
そういった観点から、中国とASEAN諸国、日本とASEAN諸国との経済連携が同時に進めば、東アジア・コミュニティの実現という目標にぐっと近づくことができ、好ましいことだと言えます。もっとも、同時並行的に進まず、中国とASEAN諸国のFTAだけが先に進んでしまうと日本は相対的には不利な立場に立つことになるので好ましいとは言えません。自由貿易協定というのはアメーバーみたいなもので、日本とASEAN各国が自由貿易協定を結ぶことができれば、日本によってより高いレベルの約束ができるようになったASEAN各国は、中国に対しても約束がしやすくなります。それだけ体質が強化されるのです。逆もしかりです。そうすると、結局は、日本とASEANと中国がより緊密な関係に立つことになるのです。そこで、こうした動きはシンクロして起こっているという現在の状況は、大きな目でみれば、東アジア経済連携の達成という究極的な目的には適っている状況と言えるのです。
大沼:最後に、ASEAN諸国から日本に求められていることは何だと思いますか。
松川:日本経済が不況だといっても日本が世界第二の経済大国であることに変わりはありません。日本がASEAN諸国との経済連携を強化することで、東アジアの経済基盤を世界レベルに押し上げていく必要があると思いますし、ASEAN諸国もこの地域の経済的発展のために日本がイニシアティブをとることを期待していると思います。
【インタビューを終えて】
日・ASEAN包括的経済連携構想は日本の失われた10年を取り戻すためにも、アジア全体の繁栄のためにも、絶対不可欠な国家的プロジェクトとなっていくでしょう。国情、文化、経済力の違いから、国家間対立が生じたり、日本国内の抵抗勢力からさまざまな対立意見が出てくる可能性は大いにあります。しかし、アジア全体の底上げをすることが日本の経済再生への道でもあるという信念を持ち、構想を実現していこうとする前向きな姿勢を持ち続けることが大切であると感じました。(大沼)
http://www.mofa.go.jp/mofaj/annai/listen/interview/intv_04.html
外務省の解体と日本の夜明け 【さらば外務省!より】
http://www.asyura2.com/0311/dispute15/msg/119.html