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(回答先: 高齢化・年金危機にどう対処するか フォーリン・アフェアーズ 投稿者 エンセン 日時 2003 年 9 月 23 日 16:47:38)
揺らぐ米確定給付年金、もろさ露呈、見直し急務、膨らむツケどこへ。
米国企業の確定給付年金が悲鳴を上げている。歴史的な低金利と株価低迷で運用成績が悪化、積み立て不足が膨らむ一方だ。既に破たんも相次ぎ、公的な支払い保証制度も大きく揺らいでいる。企業の年金債務を減らす目先の対応だけでは済まず、制度自体の見直しが急務になってきた。
「航空会社など新たに企業が破たんすれば、当公社の債務超過額は年金の支払い保証でさらに五十億ドル膨らむだろう」。九月十五日、米上院政府問題委員会の公聴会。米年金給付保証公社(PBGC)の幹部、スティーブン・カンダリアン氏が報告した数字のあまりの大きさに、出席議員たちはどよめいた。
PBGCは米企業が破たんした場合に年金債務を引き受け、支払いを保証する政府系機関。その財務悪化が深刻さを増し、債務超過額が六月時点で過去最悪の五十七億ドルに拡大した。報告では今後それが二倍に膨れ上がりかねない危機に直面している。
ほんの二年前は純資産が七十七億ドルあり財務は健全だった。ところがベスレヘム・スチールなど相次ぐ大型倒産で積み立て不足の年金を引き受けた結果、一気に悪化。四千四百万人の従業員と年金受給者を支える米国の確定給付年金が根底から揺らぎ、「社会保障上の問題」(ピーター・フィッツジェラルド上院議員)に発展している。
景気低迷は年金のもろさを浮かび上がらせた。株安と低金利で、年金資産の目減りと債務増加に直面。スタンダード・アンド・プアーズ(S&P)によれば主要五百社の確定給付年金は前年末で二千六十四億ドルの積み立て不足に陥った。
二千億ドルの積み立て超過だった二〇〇〇年からたった二年でこうも急変したのは「本来は債券中心に長期管理すべきなのに株式に偏り過ぎた」(プランスポンサー誌)からだ。株高局面では年金運用益が本業の利益を押し上げたが、今や完全に裏目。穴埋めのため追加拠出を迫られ、大きな重しになっている。
九月十八日に暫定合意に達したビッグスリーと全米自動車労組(UAW)との労使協約の更改。三十年ぶりともいわれる一つの「事件」が起きた。退職者に対する月間年金支給額の引き上げが見送られたのだ。
ゼネラル・モーターズ(GM)は「ゼネラス(気前のいい)・モーターズ」と称されるほど手厚い年金制度を持つ。しかし昨年末の積み立て不足は百九十億ドルにものぼり、経営陣も今回は違った。これ以上の負担増加は致命傷になりかねないとの危機感は明らかだ。
新たな懸念も浮上している。「キャッシュバランス型年金は『年齢差別』に当たる」。七月三十一日、イリノイ州の連邦地裁は、IBMが一九九九年に実施した制度変更に伴い給付を削られた年配従業員の訴えを支持した。IBMは控訴したが、追加拠出を迫られる可能性が出てきた。
キャッシュバランス型は年齢によって給付額が増えるカーブが緩やかで、総額では企業側の負担が軽いとされる。四百社が導入済みで、将来確定給付型からの移行を狙っていた企業も多く、目算が狂った。影響はIBM一社にとどまらない。
年金債務に押しつぶされるという企業の悲鳴にブッシュ大統領が提示した年金制度改革案では、年金債務を計算する割引率の変更。従来の長期国債ではなく、利率の高い社債利回りを使うことにして将来債務の軽減を狙ったものだ。
これには痛烈な批判が出ている。「年金資産の不足が問題の本質。債務計算を変えただけでは根本解決につながらない」(アラバマ大学のノーマン・ステイン教授)。従業員や退職者の強い反発は当然だ。
といって積み立て条件を強化すれば財務の弱い企業は立ち行かなくなる。問題企業は鉄鋼、航空、自動車と競争力の低い企業に集中。PBGCの保険料を上げれば、負担を嫌う優良企業から先に逃げ出すジレンマがある。「一九八〇年代の貯蓄貸付組合危機に似ている」(スノー米財務長官)
米労働省の試算では、今年にも確定給付年金全体で見て、給付を受ける退職者数が現役従業員数を上回る。一九九〇年ごろはこの比率はまだ三対七だった。ツケを誰が払うか。厳しい選択を突きつけられている。
(ニューヨーク=