現在地 HOME > 掲示板 > Ψ空耳の丘Ψ29 > 231.html ★阿修羅♪ |
|
(回答先: 石油基地爆破想定訓練 ロシア極東ナホトカで8月に実施 投稿者 倉田佳典 日時 2003 年 9 月 26 日 14:02:07)
今回の出光興産の原油タンクの火災について整理してみます。結論から言ってテロではないでしょう。しかし深刻な問題があります。今回の火災を含めて出光興産苫小牧製油所は三年間連続で火災を出しています。
1)油漏れの主原因
設備老朽化によるものでしょうね。原油タンクそのものからの油漏れではなくて配管からでよかった。原油タンクは日本では最低でも5万キロリットルの大きさのものです。北海道ではその倍の大きさの10万キロリットルのサイズが多い。サイズとしては直径80m以上、高さは20m近くなります。中でソフトボールが十分出来る大きさですね。その原油体積が漏れたら大変なことです。ただしタンクの周囲は「防油提」という堤防が築かれており、最大限の貯蔵量が漏れても堤防の内側から漏れないように計算した高さと面積です。けれどもそれだけの原油がタンクから漏出すれば、可燃性・毒性の高い成分が24時間以内に揮発して周囲に広がり、残ったタール分はしつこく地面に残って、最後は原油がこぼれたタンクヤードの土は表面から30cmほどは掘り下げて焼却処分するしかないでしょう。
2)発火の原因
私も9月半ばに苫小牧に行ったことがありますが、すでにストーブを焚く寒さですね。多分製油所では原油の流動性を保つ目的で、タンクの底部に蒸気を通して保温していると思われます。この蒸気の配管はヒートコイルといいます。ただし蒸気の供給はタンクから離れた場所ですし火気の原因にはなりえません。出光では静電気の可能性を述べています。しかし原油が燃えたのは上記1)の防油提の内側のようなので、発電機などの火気さえ持ち込み禁止です。しかし電気が皆無かといえばそうではない。タンクにも液面の高さを表示するメーターがあり、これは防護措置をされているとはいえ電気を使っています。当日の当該タンク内の原油残量は約3万キロリットル。タンク容量よりずっと少ないので原油移(入か出)送後だったでしょう。地震で原油が揺れると原油同士の摩擦で静電気が生じます。大きなタンクに広めのスペースですから地震でかなりの摩擦はあったとは思うが、当然タンクにはアースがあります。それから配管の中には原油が残っているはず。午前5時より早い時間なので、当時タンクのそばで何か作業を行っている可能性は低い。
因みに中の原油は流動点が低い中東原油に間違いないと思います。というのも日本国内には様々な原油が輸入されていますが、中国原油やインドネシアのミナス原油のように30℃でも豆腐のように硬いものから中東原油のような常温20℃で液状のものまで様々。日本は南北に長い地形で、亜熱帯から亜寒帯までの気候帯が広がっています。原油備蓄基地や石油会社においては寒い地域には流動点が低い原油、気温の高い地域には流動点の高い原油を貯蔵してバランスをとっています。
三年間連続で出火をしている出光興産苫小牧製油所は高い授業料を払うことになりそうですね。因みに原油の火事は、最初に揮発分が爆発炎上した後は派手な燃え方はしません。というのも残るのはワックス分やタール分ですのでろうそくが燃えるようにゆっくり燃えるわけですが、その燃え方はしつこく長く続き、有毒ガスも発生します。
テロで原油貯蔵タンクやタンカーを襲撃するならば、爆発をねらうよりも大量の原油漏出による環境破壊を狙うことでしょう。その場合は時折小説にあるように狭い海域に入ったタンカーをハイジャックして原油を流すほうが脅迫の効果はあります。ただしこのようなテロであれば、犯人グループは環境への長期間にわたる被害を与えるテロということで、自然保護を唱えることはできなくなり、どのような集団であれ、たとえ死亡者がなくとも、思慮を欠いた行為として、文明国からは恐れられるよりも軽蔑されるでしょう。