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朝日8/21社説【バグダッド・テロ――恐れた通りではないか】
用語「テロ」と憶測に電話で注意せり。これでも読売や日経よりは、少しはまし。
もとも、今後は「テロ」という言葉を、米英イスラエルのよることだと位置付けるようになれば、話が変わってくるのかもしれない。
ともかく、こういう時期には、大手メディア報道を見る前に、眉にたっぷり唾を塗り込むことである。
http://www.asahi.com/paper/editorial.html
08月21日付社説
■バグダッド・テロ――恐れた通りではないか
とんでもない悲劇が起きた。
戦後イラクへの人道支援や復興の手助けにあたっているバグダッドの国連現地本部が爆弾テロの攻撃を受けた。デメロ国連事務総長特別代表を含む20人以上の国連職員が死亡し、100人余りが負傷した。
フセイン政権の崩壊から4カ月余り。民衆の対米感情が悪化するなか、占領軍への襲撃が頻発するイラクで起きた最大規模の攻撃だ。しかも、米英の占領政策から距離を置く国連機関が標的となった。
デメロ氏は東ティモールなどの和平に貢献した国連外交官で、将来の事務総長候補の一人でもあった。アナン国連事務総長をはじめ各国の首脳がその死を悼んだ。私たちも言いようのない怒りを覚える。
●このテロを決して許さぬ
フセイン政権の残党なのか。戦後の混乱に乗じて入り込んだアルカイダともつながる過激派集団なのか。犯人像はわからない。だが、国連を標的にした計画的な犯行であることははっきりしている。
今月はじめには、アラブの親米国家であるヨルダンのバグダッド大使館もテロ攻撃を受けた。米英軍を支援するために駐留するデンマークやポーランド軍も戦闘に巻き込まれた。
今回爆破された建物は、かつては国連が大量破壊兵器の査察の拠点として使った。国連も米英と一体なのだという構図を描き出すことで、いっそうの混乱を狙ったとみていいだろう。
破壊活動は石油のパイプラインや水道の破壊にも及んでいる。国連へのテロが復興の足をさらに引っ張ることを恐れる。
たとえ圧倒的な軍事力でフセイン政権を屈服させたとしても、その後、複雑な民族と宗教事情をかかえたイラクを安定させることがいかに難しいか。異教徒の一方的な占領がイスラム世界全体に屈辱感を与え、「聖戦」という名のテロを拡散させる可能性がいかに大きいか。
私たちは開戦前から繰り返しそうした恐れを指摘し、アラブを含む国際的な協調と大義が乏しいままに戦争を急ぐことの危険性を説いた。
●パンドラの箱が開いた
恐れていた通りになった。政権の転覆をイラクの民衆の多くが歓迎したところまでは、ブッシュ政権の読み通りだったろう。だが、戦争の大義だった大量破壊兵器は見つからず、続いて起きたことを見れば、きわめて残念ではあるが、私たちの指摘は間違っていなかった。
イラクを独裁者の手から解き放てば、豊かな石油資源を背景に国の再建が進み、それがアラブ世界のモデルとなって中東全体の民主化につながる。それが、ブッシュ米大統領のバラ色の基本戦略だった。
現実はどうだったろうか。
ブッシュ政権は当初、占領は数カ月で終わり、親米の暫定政権をつくることができると楽観していた。ところが、イラク人の代表による統治評議会と憲法制定までの道筋はできたものの、前提となる国内安定の見通しはまったく立たない。
米英による暫定占領当局のブレマー代表は、イラクの復興には3年の年月と1千億ドルもの資金が必要だと予測する。米国防総省によれば、米軍の戦費と駐留経費は、今年1月から9月までだけで580億ドルが見込まれる。この巨費を米英はどう賄い続けようというのだろうか。
米英の軍事占領と、その主導による復興への国際的な支持も心もとない。世論調査によれば、多国籍部隊の中心となるポーランドでさえ、開戦前に多数だった派兵支持の意見が少数派に転落した。
「イラク戦争は、9・11以来始めた世界規模のテロ撲滅の一環だ」というブッシュ政権の主張も説得力を欠いている。エルサレムでは新たな大規模テロが起き、米国が仲介したパレスチナとイスラエルの間の停戦がご破算になりかねない。イラク戦争が見せた米国のやり方へのアラブの不信が、その根の一つとなっている。
16万の米英軍がイラクの秩序を回復できるかどうか、まだ判断を下すには早すぎるだろう。だが、米英主導の占領が成功しているとは思われない。事態が改善に向かう確かな展望がいまだに見えないことも事実と言うしかない。
●米英は謙虚に協力を求めよ
混乱が長びけば、その最大の被害者は復興を待ち望むイラクの民衆である。米兵の死傷者が増え続ければ、米国内でも世論の分裂が避けられないだろう。
では、どうしたらいいのか。即効性のある妙案はおそらく誰にもない。
米英が起こした戦争のつけは米英が払えばいい。そんな感情論もあるだろう。しかし、イラクの安定は国際社会全体にとっての重大事だ。知らん顔はできない。
まずは米英両政府が、戦勝国として占領と復興を牛耳るのだという態度を改め、謙虚な姿勢で国連や欧州諸国に協力を求めることが出発点であるべきだ。
米英が治安をはじめとする占領統治の責任を果たしながら、国連を主体とする平和と安定の枠組みへと移行する方法を多国間で協議する。そして、主権回復の介添え役としての国連の役割がいかに重いかをイラク国民に納得させる作業が必要だ。
小泉首相にも言いたい。
イラク戦争への支持に続き、自衛隊の派遣までを決めたのは、あまりに安易ではなかったか。自衛隊派遣の先延ばしで当面を取り繕うだけではなく、イラクの現状を見据え、いま何をすることが日本の国際的役割なのか、何を米英に強く働きかけるべきなのか。そうしたことを真剣に考えなければならない時である。