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★このたび成立した「イラク特別措置法案」は、世界のどこに出しても恥ずかしい法案と言えるでしょう。いや国連加盟各国から反発をかうかも知れません。要するにイラク攻撃を、国連決議に基づき、国連加盟国により行なわれた武力行使と、冒頭で断定的に表現しているのです。その後も国連の名を連発しています。
「国際連合加盟国」や「国際連合等」という表現で米国を中心とした占領軍を国連と一緒くたに表現しています。国連安保理決議第1483号という人道支援決議が通ったことで、開戦責任に遡ってすべてを国連の名のもとに正当化し、責任を国連に押し付けようという意図が見て取れます。
ここでは最初の数行だけに注目してみますと、
≪イラク特別措置法案≫ 全文 [首相官邸HP]
http://www.asyura.com/0306/war37/msg/574.html
「概要」の1「目的」
「国連安保理決議第678号、第687号及び第1441号並びにこれらに関連する安保理決議に基づき国連加盟国によりイラクに対して行われた武力行使並びにこれに引き続く事態を受けて、」
「本文」では以下の部分に当たります
第一条 この法律は、イラク特別事態(国際連合安全保障理事会決議第六百七十八号、第六百八十七号及び第千四百四十一号並びにこれらに関連する同理事会決議に基づき国際連合加盟国によりイラクに対して行われた武力行使並びにこれに引き続く事態をいう。以下同じ。)
とありますが、これだけ見ても欺瞞に充ちていることが分かります。
●「国連安保理決議第678号、第687号及び第1441号」は武力行使を容認したものではありません、ポイントは第1441号の以下の部分、
2、第一項で示した点を認めながらも、この決議によって、イラクに関連安保理決議の下での軍備解体義務を実行させる最後の機会とすることを決定する。従って、決議六八七(一九九一年)とこれに続く安保理決議によって規定された軍備解体プロセスを完全かつ検証された形で完了させることを目的とする強化された査察体制を創設することを決定する。
13、これに関連し、安全保障理事会がイラクに対し、義務違反が続けば同国は重大な結果に直面するであろうと、再三警告してきたことを想起する。
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik/2002-11-10/DB_0701.html
でしょうが、正常な神経では武力行使への拡大解釈は不可能です。しかも第1441号は査察の継続を主張しています。その後も国連として査察期限の設定は行なわれていません。
また、未だに大量破壊兵器が見つからない状況では、この第1441号自体についても、その恫喝的姿勢と、米英による草案への極度の圧力が鼻につきます。
●「並びにこれらに関連する安保理決議」とありますが、そんなもの存在するのでしょうか?湾岸戦争以後イラク査察に関する決議は他にもいくつかありますが、武力行使に言及したものは一つもありません。最後の決議も米国の裏工作が失敗し、採決すら避けて開戦に突入したのは周知の事実です。
曖昧な表現を用いて、無いものをあたかも有るように仄めかすと同時に条文の文字数を稼いで煙にまくという、さもしい誤魔化しです。
●「国連加盟国により」とはとんでもないレトリックであり、事実は国連の総意に反して強行されたものです。「国連の一部の身勝手な国家による暴走」です。だからこそ復興支援活動も国連主導で行なわれていないのですから。
逆にイラクも国連加盟国です。そういう意味では、
「国連加盟国によりイラクに対して行われた武力行使」
ではなく
「米英その他少数国により、国連加盟国(イラク)に対して行なわれた武力行使」
とも言えるわけです。
●「武力行使並びにこれに引き続く事態」とありますが、「これに引き続く事態」に関して具体的言及を避けています。ここには米国らが武力行使によってもたらした様々なマイナス要因と、危険で不穏な情勢が継続していることについて、責任追及に繋がるようなことをどうしても文章化できない、という米国らへの配慮と、世論への後ろめたさの表われです。
★無理な拡大解釈、開き直り、厚顔無恥…これが今の日本における「法の精神」でしょうか?このような「法の精神」に従って、このイラク特別措置法の「武力行使」の項目を見ると寒気を覚えます。第一七条1、2
第一七条 対応措置の実施を命ぜられた自衛隊の部隊等の自衛官は、自己または自己とともに現場に所在する他の自衛隊員(自衛隊法第二条第五項に規定する隊員をいう)、イラク復興支援職員もしくはその職務を行うに伴い自己の管理の下に入った者の生命または身体を防衛するためやむを得ない必要があると認める相当の理由がある場合には、その事態に応じ合理的に必要と判断される限度で、第四条第二項第二号ニの規定により基本計画に定める装備である武器を使用することができる。
2 前項の規定による武器の使用は、当該現場に上官が在るときは、その命令によらなければならない。ただし、生命または身体に対する侵害または危難が切迫し、その命令を受けるいとまがないときは、この限りでない。
以下略
7月9日、小泉首相は
「襲われたら戦うのは人間本来の活動だ。自分の命を守る場合に、殺されるかもしれないし、殺すかもしれない。絶対ないとは言えない。」
と、国会答弁の中で公然と宣言しました。野蛮人ならそれも分かりますが、そこには「法の精神」というものはどこにもありません。あまりにお粗末な答弁と言わねばなりません。
だいいち場所はどこなのか?場所はイラクであり攻撃者がイラク人である限り、よその国の「軍隊」よりも攻撃者のほうが正統性を持ちます。暫定政府が出来た後もそれは同じ事であり、武装グループの攻撃を受けて反撃すれば、イラクの地でイラク人を殺すことには変りありません。ましてPKFではなく米国主導の占領軍への支援として参加しようとしているのですから。
そして法案の本文中で国連安保理決議第1483号を盛んに強調していますが、国連を中心とした人道・復興支援に参加するだけならば現行法だけで可能なはずです。国連の活動から外れた部分を可能にするためにこそ、今回の「イラク特別措置法案」の成立が必要だったわけで、あまりに正当化の理由を国連に求めていることで、この法案は自己矛盾に陥っていると思います。